ご機嫌
やってきました男爵家!
そう、俺が思いついた候補はここだ。
異世界でラーメンならば珍しい物の部類に入るはずだし、何より美味しいのだ。
美食を漁る男爵様ならば、すんなりと許可をおろしてくれる可能性が高い。
「こんばんは、以前男爵様をお訪ねした者ですが男爵様はおられますか?」
「男爵様は建国祭に向かわれた。 今は不在ですので、また改めてお越しください」
なんと…そうか、建国祭ならば珍しい食べ物があるかもしれないもんな…。
「ありがとうございます。 祭りのほうに向かってみます」
とは言ったものの、この人混みの中で人を探すのは大変だ。
既に陽も落ちてから大分経つが、それでも止まない喧騒の中をもがき歩く。
妙な熱気の中を歩いているせいか、少しだけ気持ち悪くなってしまった。
一旦諦めて、人の海から飛び出した。
「ポチ、いるか?」
「主殿の背中にくっついていたでござる!」
コイツ…。
「俺気付いたんだけどさ、言っていい?」
「お聞きするでござる!」
「あのさ、今日は露店やめて祭り周らない?」
「男爵殿も見つからぬでござるからな…。 それが良いかもしれぬでござる」
そうと決まれば、露店巡りだ!
今日は珍しく、王都から飲食店が出張してきているらしい。
年に一度の建国祭なので、気合を入れて駆けつけたのだとか。
出している食べ物を少し見ていたが、牛丼の様な物だった。
様な物、というのは
白米ではなく、小麦を練った物の上にかけていたからだ。
そういえばこちらの大陸に着てからは白米を見ていない気がする。
いずれご飯物の屋台を出してみようか、等と考えていたときである。
「おお、君は焼鳥売りの少年ではないか!」
背後から突然声をかけられて驚いてしまったが、探すのをやめたとたんに遭遇するのはよくあることだ。
「男爵様、こんばんは。 楽しんでおられますか?」
「おお! 楽しんでおるとも! やはり王都の飯は良い! 美味いのう!」
ご機嫌のようだ。
「実は先程男爵様のお宅をお訪ねしたのですよ」
「ほう…。 それはまた何故?」
「新しい食べ物を売ろうかと思いましてね。 昨夜に露店を開いてみたのですが、高評価でしたので差し入れをしようかと」
本当の目的ではないが、おまけ程度では考えていたことだ。
「なるほど、新しい食べ物か」
「ええ、食に精通しておられる男爵様なら食したことがあるやもしれませんがね」
「煽てなくともよい、気が向いたら持ってきなさい」
「ありがとうございます。 これから暫くは夜間に露店を開きますので、治安維持のほうもよろしくお願いします」
「ぬかせ。 夜間に露店を開く者がチンピラ程度に恐れるわけがなかろうて」
あはは、ばれてたか。




