二つめの街
野宿の怖さと、人の優しさに触れていたら日が昇り始めた。
十分な休息もとり、周囲も明るくなったので出発する。
途中、何度か川の水を汲んだが
その際に、偶然魚が泳いでるのを見た。
道具があれば魚釣りも楽しめそうなんだけどなあ。
残念だとは思うが、チャンスは今回だけではないはずだ。
道具さえ揃えられれば、いつだって楽しめる。
色々と先送りしていることもあるのだが
手持ち無沙汰な現状で、あれもこれもなんてできるはずもない。
はあ、はやく余裕がほしい。
そうこうしているうちに、ようやく街が見えてきた。
前の町に比べると、少し小さい気がする。
街自体はとても広いのだが、その半分以上が牧草地になっているのだ。
それも家屋が円形に広がり、牧草地を囲う形で建てられているのだ。
それだけならば、まだ害獣から保護するという理由でわからなくもない。
だが、不思議なことはそれだけじゃない。
前の街は、川を中心に作られた街だった。
それなのに、今度の街は川から外れた場所にある。
牧草地で家畜を放し飼いにするのであれば、川を通した方がいいのは解りきっているのに
なぜこのような形で街が作られているのだろうか。
そんなことを思っていると、馬車のようなものがこちらに向かってきた。
「やあ、どうも」
立場で言うのなら御者とでもいうのだろう。
少しだけ細めの男性が声をかけてきた。
「どうも、おでかけですか?」
当たり障りのない感じで話を広げる。
「ええ、ちょっと隣町へね。 こちらの街では酪農が盛んだが、野菜はあまり育てていないだろう?」
なるほど、確かに前の村でも家畜を飼っている家は少なかった。
「なるほど、ああ! すみません。 すっかり忘れていました、俺は透っていいます!」
「ははっ! ウェルダーだ、こちらこそすまないね」
急いでもなさそうだし、少し聞いてみようかな。
「初対面で申し訳ないのですが、少しお時間大丈夫でしょうか?」
まずは、神殿までの距離から聞いたのだが
ここからはさほど遠くはないそうだ。
この街を突きぬけ、半日ほどの距離だとか。
と、なるとあと少しか。
「すみません、いろいろ聞いてしまって」
「いえいえ、これも旅の醍醐味というものですよ。 のんびりとした時間を一緒にすごす事ができる奇跡に感謝を」
なんかちょっと面倒な人だったようだ。
ウェルダーさんと別れ、街の外周を走りながら川沿いに進む。
途中の休憩も手馴れたものだ。
たまに変な生き物を見かけるが、この辺りには魔獣がいないことは調べてある。