夜の露店
「主殿、どうしたのでござるか?」
宿に帰るなり、ポチが心配そうに聞いてきた。
「ん? ああ、焼鳥に人気が出てきたのは良いんだがな…。 このままだと何か違うんだよなってさ」
楽しく売って美味しそうに食べてくれるのは嬉しいことだが
俺がしたかった商売ってこんな感じだったっけ? と、疑問が出てきてしまったのだ。
「難しいでござる…。 でも、主殿。 男爵殿との約束もあるので、売るものを変えるとしたら一応報告をした方がいいかもしれないでござるな」
確かにそれはあるかもしれない。
現在、仕入れに使える資金は潤沢なのだが
あまり高価な物を購入しても、利益を出すのは難しい。
考えに煮詰まってしまっているかもしれないと、窓を開けて外へと視線を移す。
窓から入る風に肌寒さを感じるのは、この帝都独特のものなのだろうか。
「そうか…」
他の店主陣と同じように、昼のみの販売にしなければ良いことに辿り着いた。
治安は悪くなるかもしれないが、夜に食べてこそ輝く食べ物だってあるはずだ。
たとえば以前販売したおでんが良い例だ。
今回はもっと縁日に近い形の露店を出すのもいいかもしれない。
「ポチ、ちょっと思いついたんだけど…」
これからの計画をポチに話し、軽く睡眠をとってからギルドへ向かった。
「こんばんわ、まだやっていますか?」
説明のときに、二十四時間開いていることは聞いているが
聞いてしまうのは前の世界の癖である。
「はい、大丈夫ですよ。 どの様な御用件でしょうか」
「深夜の露店についてです。 規制がなければよいのですが、確認しておこうと思いまして」
いざ販売したところで、違反をしていて罰を受けるのが嫌だったので聞きに来たのだ。
「規制などは特にありませんが…その…。 夜になると、柄の悪い者達が多くなりますので…あまりお勧めは出来ませんが。 それでも大丈夫であれば何も問題はありません」
「そうですか、ありがとうございます。 あ、あとこれは今回取り扱う食べ物です。 夜食にちょうど良い時間なので、よかったら食べてください。 麺がのびてしまうので、早めに食べてくださいね。 それでは露店を開いてきますので、この辺で失礼します。 ありがとうございました!」
受付さんに渡したのは、塩ラーメンだ。
煮卵・メンマ・ナルト・チャーシューに海苔、それにバターで炒めたコーンが乗っている
俺が一番好きな塩バターコーンラーメンだ。
そう、今回俺が出展する露店は
ラーメンの屋台だ!
メニューは、塩・醤油・豚骨・味噌
そこから、ラーメン・ワンタン麺の二択から選択できるようにする。
種類は多いが、主にインスタントの麺と業務用のスープを使用するので手間は掛からない。
あまり人は歩いていないが
すれ違う人は、やはり男の人が多い。
いつもの販売場所につくと、湯を沸かして麺をゆで始める。
「さあポチ、やるぞ!」
「はいでござる!」
こうして、帝都には珍しい夜の露店が始まった。




