おっさん
「では、俺達はこの辺りで失礼します」
窓の外が真っ暗になっていたので、長居をしても迷惑なので帰ることを切り出した。
あちらさんは、この後いろいろな問題があるのだから…。
「おお、そうかそうか。 何か困ったことがあれば遠慮なく訪ねてくるといい。 歓迎するぞ」
焼鳥を気に入ったのか、焼かれたモモを食べながら手を振っている。
こちらも軽く手を振り、屋敷を後にした。
「よかったな。 良い取引だったと思わないか?」
「そうでござるな! あの娘が居た時は肝が冷えたでござる」
本当にその通りだ。
娘に対して過保護ではあるが、比較的良識のある人物だったのは好ましい。
「キャアアアアアア!!」
一人と一匹で夜道を歩いていると、路地の奥から悲鳴が聞こえた。
「殿!」
「ああ!」
ポチと一緒に路地へと駆け込み、居場所を探す。
だが路地は複雑に入り組んでいて、分岐が多い。
その為、なかなか探し当てることが出来ないのだ。
そんな時
「ギャアアアアアアアア!!」
「あ…あるじ…?」
「ああ…」
どう聞いても、おっさんの悲鳴にしか聞こえないような野太い悲鳴が響いた。
「どうしようか…」
「い…一応確認はした方がいいでござるよ」
「そう思うか?」
「う…」
ポチは黙ってしまった。
しかし話し合いの結果、今の悲鳴で方向は分かったので向かうことにした。
そして、俺とポチの目に映ったものは
破かれた女性服と裸のおっさん
それと、裸のおっさんだった。
「「へ?」」
理解不能な状況に、思考が停止してしまった。
だが、近寄られるのも嫌なので
気を取り直したところで二人を隔離しておく。
「それで? どういう状況なんですか?」
暫くの間沈黙が続いたが、破かれた服の上に転がっていたおっさんが小さく喋りだした。
「女装をして楽しんでいたらこの男が…。 この男が突然服も着ないで現れて!! 私の服を破って押し倒してきたんです!!」
へー、知りたくなかった。
「それで、貴方の方は?」
加害者と思われるおっさんの方に視線を向けると
「こいつ…。 女だと思って剥いてみたら男だったんだ…。 ひでえよ、こんなのってないよ…」
うん、加害者が自白しているから加害者側は決まりみたいだな。
「よし、ポチ! 帰るぞ!」
「はい! でござる!」
しかしこの事件、本当に加害者側が被害者になってしまったケースだよな。
こういう時ってどちらが処罰されるのだろうか…。
そんな疑問を浮かべながら宿に戻り、結局朝まで眠れなかったのは仕方の無いことなのかもしれない。




