馬鹿娘
仕込んでいた鶏皮を全て吐き出し、ナンコツ・ネギマ・モモの三種が余ってしまった。
しかし、彼女達が求めるものは皮である。
そのため、どうしても三種類は余ってしまうのだ。
どうしたものか…。
開店前の店主陣には売れるので、メニューから外すわけには行かないのが辛いところだ。
「兄ちゃん、焦げてるぞ!」
「おっと!」
「どうかしたのか?」
朝の店主陣に焼いている時のことだった。
俺が在庫の処分を考えている時に、少し焦がしてしまったのだ。
それを心配した一人の店主が声をかけてくれたのである。
「実は…」
今までの流れを説明したところ、一つの案が出てきた。
「これだけ美味い肉なら買い取ってもらえるんじゃないか?」
そう、買い取ってもらうのだ。
「しかし…、買い取ってくれるところなんてあるのですか?」
「ああ、実はな…。 最近になって男爵位になった人がいてな、その人が退役して食道楽に勤しんでいるようなのだ。 だが、ここは帝都だろ? 食い物は不味くはないが美味くもない物だらけだ。 そんな中に、キラリと光る物が出てきたら飛びついてくると思わないか?」
なるほど。
しかし、男爵か…。
「あの…。 その男爵って剣を家宝にしていたりしますか?」
「おお、知っているのか。 退役前は鬼将軍として、威圧だけで元帥すらも怯えさせたというぞ。 まあ、その元帥も最近街中で死体で発見されたがな」
繋がった。
繋がってしまった。
「その男爵以外で買い取ってくれるところって…」
「難しいだろうな。 元の姿が分からない肉はギルドでは買い取ってくれないだろうし…」
「そうですか…。 いえ、ありがとうございます」
まさか買い取ってくれる希望の人が、あのポンコツ娘と血縁だ何て…。
平和な旅というものは、いつまでも続かないのだと実感できる出来事だった。
用意していた皮も売り切れたので、早々に切り上げて男爵家へと足を動かした。
わかりやすい家なので、見れば分かるそうだ。
敷地内の建物が、柄の無い剣のような形をしているのだという。
そうして、怒鳴り声と泣き声が聞こえてきたのは
とにかく広い道をまっすぐに歩き続け、日が暮れ始めた頃だった。
「勝手に剣を持ち出して壊されただと!? あれが聖剣であると知っていて持ち出したのか!! この馬鹿娘が!!」
「ヒック…。 だ…だって、帝都に巣くう悪を断罪するには…ヒック…聖なる剣じゃなければダメだってアレックスが…」
「この馬鹿娘が! アレックスは火竜だ! 喋れるわけが無いだろう! 今日一日はそこで反省していろ!」
どうしよう、すごく入りづらい…。




