食い逃げ
試食のおかげか、周囲で露店を開いている店主陣との仲は良い感じに築けている。
そんな店主陣だが、思っていたよりも気ままに商売しているらしい。
既に開店の準備をして、お客さんが来るまで腹ごしらえをするそうだ。
「兄ちゃん! 皮を三つとモモを五つだ!」
「はいよ!」
「こっちはナンコツと皮を四つずつ!」
「少々お待ちを!」
何度目かのオーダーが、同じお客さんから入ってくる。
そうこうしている内に、チラホラと露店を覗き歩く人が現れ始めた。
「おーい、そろそろ食い納めにしとけよ! お客が来るぞー!」
「おー!!」
一人の男性が声をかけると、あっという間に散っていってしまった。
「ははっ…慌しいな」
「主、お客さんがゼロでござる!」
しってるよ!
もう少し引き付けてから、お客さんに興味を持たせようと思っていたのだが
どうやらこの作戦は失敗に終わりそうだ。
しかし、再度繰り返すこともしなくても大丈夫だ。
何故なら…。
「おや? この街で食べ物の露店なんてめずらしいっすね! ほうほう、鳥を焼いているっすか!」
何かの革で作られた胸当てをした女性だった。
「いらっしゃい! 何か食べていくかい?」
「そうっすね…。 さっきから見ていて気になっていた皮をお願いしようかな!」
いつから見ていたのだろうか…。
「あいよ! 皮は一つで?」
「うん! とりあえずは一つで!」
ジワジワと焼かれていく鶏皮は、徐々に油を落として焼かれていく。
「おまたせ! 鶏皮ひとつね!」
「わー! ありがとうっす!」
女性は、恐る恐る串から外して喰いついた。
パリッとした音の後にくるモチモチの食感。
十分に落ちたはずなのに、未だに残る濃厚な脂。
「うん! 美味しいよ! ちょっと宣伝してくるね!」
女性は満足そうな顔で走り去っていってしまった。
「ん…? あれ?」
「主殿…」
「ああ…」
「「食い逃げだ!」」
今回は開店したばかりで、店を畳むのも勿体無いので我慢するが
次に会うことがあれば絞れるだけ絞ってやろうと心に決めた。
ところが、食い逃げされたと思っていたのだが
その少し後に、それが間違いであることを知った。
先程の女性が、沢山の女性を引き連れてやってきたのだ。
「あ! よかったー! これさっきの料金ね! 後ろの娘達は新規さんだよ! サービスしてやってね!」
値段は比較的安めに見積もっているので、それでサービスは良しにしてもらおう。
「いらっしゃい! 何かたべていきますか?」
「「「皮!」」」
こうして、慌しく焼き続けている内に一日が終わってしまった。




