行方
馬鹿の相手をするのも疲れるだけなので、ここはポチに任せよう。
「ポチ、できるな?」
「初任務ですね! 主! 任せてくだされ!」
そう言うと、ポチは分裂して散っていった。
「クソッ! 小さ過ぎてあたらねえ!」
金属の長細い剣を振り回すも、ポチには当たらず
極稀に当たったところで、カンと言う音を鳴らして弾かれている。
ポチはふわもこの様で硬いのか…。
男を倒し、内部情報を集めようとしたのだが
ポチが殺してしまったので尋問は断念した。
その後も、堂々と川辺を歩いているのだが
不思議なことに、全く人に会わなかった。
あの男は間違いなくテリトリーと言ったのだ。
つまりは縄張り、人がいないことなどありえない。
「ポチ、誰かいるか?」
「森の中に数人いるでござる。 それ以外の気配は無さそうですぞ」
少人数の盗賊団なのか。
しかし、その話が本当だとすると
さらわれた人達は、既に売られてしまったのだろう。
少し期待していたのだが、残念だ。
さて、近くには誰もいないと言うことなので
上流に組まれた丸太の壁を壊すとしよう。
丸太の壁をごっそりと回収し、水量を調節しながらゆっくりと流していく。
一気に流すと、川が氾濫して村が水没しかねないからな。
あと少しで手を加えなくても大丈夫、というところで邪魔者は現れた。
「お前、何をしている」
はぁー、とため息を吐き
「ポチ」
「はいでござる!」
ポチの名前は、既に魔法の言葉になりつつある。
「また邪魔が入っても面倒だ、森の中の奴らもしとめて来い」
分裂したポチの数は異常な程に多く、白い絨毯が森の中へと消えていった。
俺は川の調整が終わったので、そのまま村に帰るとしよう。
「村長さん、川の方は戻しておきました。 肥料は今から手持ちの物を撒いていきますね」
「おお…。 おお! ありがとうございますじゃ…」
皺くちゃの顔を歪ませて、大粒の涙を流す村長に一言かけ
流れるように畑に向かう。
肥料は何がよいだろうか。
畑の面積はかなり広いので、手で撒くのは大変だ。
だからこそ、ここで魔法を使うのである。
今育てている作物は枯れてしまっているため、その上から堆肥を被せて行く。
畑の全面を堆肥で覆うと、既に辺りは真っ暗になっていた。
「あるじー! 置いていくなんて酷いでござる!」
ポチが帰ってきた。
「おー、遅かったな。 何かあったのか?」
「主殿が気にしていたことでござる。 さらわれた人達の行方を聞いていたのでござるよ!」
「ほう、何かわかったか?」
「さらわれた人達は皆、近くの村にいるそうですぞ! 場所は聞いてきたでござる! 案内致しますか?」
「おう、頼む。 ああ、ちょっと待っててくれ」
それから村長の家に寄り、少し出かける旨を伝えて村を出た。




