失態
もちろん、焚き火には使える。
非常に役に立つアイテムではあるが、ガスが無くなれば同じこと。
売れるものは先に売って、絶対に必要となる通貨にかえておく。
「あら、みない顔だね。 旅人さんかい?」
肩幅広めのおばさんが出てきた。
「はい、ちょっと珍しいものを手に入れまして。 どうでしょう? こうやって使うのですが…」
キィン、とライターの上部を弾き火をつける。
「使用に制限はありますが、買い取っていただけませんか?」
これが無理なら自転車くらいしか売れるものはない。
だが自転車は、これからも一緒に戦う相棒だ。
「よし、銀貨5枚でどうだい? 珍しいのはいいが、使用制限があるとこれ以上は無理だけどね」
ふむ、ライターで銀貨5枚ならいいのかな?
正直なところ、銀貨5枚というのがどれくらいの価値なのかがわからない。
「んー、そうですね。 あ、あの紙を1枚サービスでつけてくれるなら銀貨4枚でお譲りします!」
言ってから気付く、立場としては売り手側
このような条件をつけて良い立場ではない。
だが、言ってしまった以上は返答を待つしかない。
「少し難しいね、あの紙をサービスでつけるのなら銀貨3枚だ。 どうだい?」
仕方がない、ここで泣いておこう。
「ええ、それでお願いします!」
「はいよ、また持っておいで」
あーあ、あれ絶対怒ってるよね。
目が据わっていて、とてもお客さんに向ける表情じゃない。
まあ、仕方がないか。
さあ、次は神殿だ!
神殿はわかりやすい。
何故なら、都市の中心に建っているからだ。
とりあえず銀貨を入れておひねりを作り、リュックにしまっておく。
神殿は都市の中心に建っているのだが、都市の中心であって街の中心ではない。
なので、この街から離れなければいけないということだ。
離れるにしても、準備をするのに時間はかかる。
出発は明日になりそうだ。
残った銀貨2枚で干し肉を買い、その足でラウトさんの農場に向かう。
「ラウトさん、明日神殿に向けて出発しようと思います」
農作業をしているラウトさんに声をかけると、今日は泊めてくれることになった。
「透よー、携帯食はちゃんと買い揃えたのか? 無一文だったろう」
銀貨を入手した経緯と購入した物品を、一通り説明するが
未だにラウトさんの表情は明るくならない。
「うん、よしわかった! 残りの必要なものは俺とカイルで用意しておいてやる!!」
何が必要なんだろう、水と食料があれば何とかなりそうだけど。
「今日はたくさん食って早めに寝ろよ! 旅は楽じゃないからな!」