唐揚げ
蜂蜜の販売でわかったことがある。
砂糖のことだ。
砂糖自体が知られていないということは、砂糖を使ったお菓子の部類も知られていないはずだ。
ならば次に売るのは、綿飴にしようと思う。
そして綿飴を売るためにも、今日の販売を頑張ろう。
「本日はこれで完売になります! 次の販売は未定ですので、見かけたら覗いてみてください!」
ここ数日でクロジクは珍しい物を毎日取り扱っていると、広く知られることとなった。
そのせいか、貴族ではない人も多く見られるようになったのだ。
それも、その多くが商人である。
貴族が後ろに並んでいようとも、隙あらば値切り交渉をしてくるのだからたまったものじゃない。
やはり、日持ちのする商品は避けた方がいいのだろうか…。
「マーシャさん、どう思います? って、あれ?」
マーシャさんがいない!!
そういえば、今日は挨拶していなかった気がする。
片付けて宿に戻ろう…。
「やあ少年、繁盛したかい?」
なんで宿にいるの!?
「見かけないと思ったらこちらにいたんですね…」
「ああ、孤児達を探していたんだよ。 まあ、この宿に泊まってるのは知っていたみたいだけどね」
なるほど、そういえばそんなことも頼んだ気がする。
「それは、ありがとうございます。 晩御飯食べますよね?」
「お願いするよ。 今日はどんなものが出てくるんだい?」
「今日は唐揚げ弁当ですね。 あまり珍しいものではないですけど…」
美味しいよね、唐揚げ。
「唐揚げ…、また初めて聞く名前が出てきたね…」
そうだろうね…。
異世界に飛ばされてから十日と少し経つが、揚げ料理を見たことがないのだ。
使う油も、獣の脂身を使っているくらいなのだから
揚げるほどの油を確保するのは難しいのではないだろうか。
「ま、食べてみてください。 俺の地元では、これが嫌いという人はあまりいませんでしたから」
「ほう、それは楽しみだ。 ところで、その棒も少年の地元の物なのかい?」
「棒…ああ、箸のことですね。 これは一部の国で使われている食器ですよ。 慣れてしまうとこちらの方が楽なので…」
そういえば、この大陸は国が一つしかないんだっけ…。
何か聞かれたらすっとぼけておこう。
うん、それがいい。
俺の心配をよそに、マーシャさんは夢中になって唐揚げを食べていた。
「どうです? 唐揚げはお口に合いますか?」
「これ凄く美味しいよ! どうなってるの!?」
ふむ、これなら唐揚げも商品に出来そうだな。
いずれ売ることを考えておこう。
露店にかかりっきりだったので、森で狩った動物も売り忘れていたりする。
明日の露店はそれからかな。




