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彼の夢は未だ覚めず  作者: すらいむれべるいち
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二日目

「おい、起きろー」


ペシペシと頬を叩く感触で眼を覚ます。


「ん…あれ? ここは」


瞼を開くと、眼前には革鎧を着た男が覗き込んでいた。


「なんだ、生きてるじゃん」


そんな言葉で思い出した。


ああ、異世界二日目か。


眼を覚ませば元の世界に、なんて事も期待していたため


少しだけガックリと肩を落とした。


とはいえ、ここで人に会えたのは悪くない。


「ほれ、水飲んどけ」


男は水を渡すと、背を向けて歩いて行く。


「あ、ちょっと待ってください!」


俺の声に反応し、ゆっくりと振り返り


「おいおい、勘弁してくれよ。 こっちも用事があるんだからさ」


少しだけ苛立ちの感じられる声だったが、突き放すつもりはない様にも感じられる。


「あ、すみません。 この街って自由に出入りしてもいいのかわからなくて…」


「あー、もしかしてお前さんは中央から来たのか? にしては方向は真逆だぞ」


中央とやらは知らないが、とりあえず苦笑いでごまかした。


「やっぱりか、中央は自警団がしっかりしてるからな。 だが生憎、中央以外では自警団は居ない。 好きに出入りできるよ」


「そうだったんですか、それなら昨日のうちに都市に入っておくべきでしたね」


「ああ、この辺は強力な獣がいない変わりに盗賊が住み着いてるからな」


盗賊、そういうのもいるのか。


平和な日本で過ごしてきたからか、完全に失念していた。


「まあ、入れよ」


「ええ、それでは遠慮なく」


男の後を着いていくと、畑が見え始めた。


「あれは何を育てているんですか?」


畑を指差し、男に尋ねる。


「ああ、あれはスティッキーだ」


「スティッキー?」


初めて聞く植物に、考えることも無く呟いた。


「ああ、知らないか? 表面は少しかたいが茹でてやると美味いんだ。 ちょっと待ってな」


男は荒れた道から逸れて畑に向かう。


「おーい、ラウトさん」


ラウト、恐らく畑で作業している人のことだろう。


「おー、カイルさんか。 どうしたー」


初めて男の名前を聞いた気がする。


そういえば俺も名乗ってないな。


「こいつがさー、スティッキーを見たことねーって言うからよー」


「なんだってー! どこのド田舎から出てきたんだ!」


ひどい言われ様である。


「ちょっと待ってろ、食わせてやるから!」


ラウトさんは、そう言い残して小屋に入って行った。


待ち時間でカイルさんと、改めて自己紹介をした。


「遅くなってすみません。 俺は黒澤透っていいます」


「ほう、変わった名前だな。 おれはカイルだ」


この街では家名は一般的じゃないのか。


それから暫く経ち、この辺りに生息する動物の事を聞いていると


小屋の方からラウトさんが走ってきた。

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