目潰し
街に戻る前に、収納空間から獲物の頭だけをだすと
黄色いウサギの様な動物や銀色のシカの様な動物も入っていた。
暗いせいでよく見えないのもあるが、手当たり次第に捕まえたので
どんな獲物がいるのかもわからなかった。
そして、その動物達の首をそのまま切落す。
ワンワン吠えられると面倒だからね。
たった数日だというのに、慣れてきたものだ。
慣れでなく、心が壊れていないことを祈り
落ちた首を拾って街へ向かった。
コソコソと酒場の裏に回り、狼だけを並べていく。
狼は十二頭もいたが、最初に倒した狼よりも大きい個体はいなかった。
酒場の入り口から入り、おっさんに声をかけてから再び裏口にまわると
おっさんが口をパクパクしていた。
「とりあえずですが、これだけ狩ってきました。 査定の方をお願いします」
ズラリと並べられた狼の方を見ているおっさんが、ようやくこちらを向いてくれた。
「あ、ああ。 この短時間でどうやって…いや、どうやって運んできた?」
「言わなきゃダメですか?」
面倒くさいなあ。
「言え、でなければ査定はしない」
「わかりました、いいでしょう。 ならば査定は結構です、さようなら」
強制で喋らせようとするのなら、こちらだって喋りたくはない。
狼に触る振りをしながら、地面の砂を握り締めておっさんに投げつけた。
砂でおっさんの目を眩ましている間に、さっさと狼を収納して自転車に乗って街を出た。
しかし、いくら頭にきたからとはいえ少々やりすぎたかもしれない。
仕方が無い、このまま中央に向かうとしよう。
ウワナーを離れるには、まだ周っていない街や村が沢山あるのだが
二度と来ないわけではない、次のときの楽しみとしてとっておこう。
ウワナーから中央へ向かう際は、あまり迷うことは無い。
というのも
昼は太陽を、夜は月を追いかけることで辿り着くことができるからだ。
勿論、ひらけた道を進むときに限るのだが…。
ようやく川に着いたので、休憩を兼ねて水を汲むことにした。
魚が泳いでいる。
金色に光る魚が泳いでいる。
なにあれ、でかすぎるんだけど!!
小船のような大きさの魚は、一匹だけではなく三匹ほど泳いでいた。
しかし、この川はあまり深くないので
身体の半分以上が水上に飛び出ている。
この世界の人間が、夜に街の外へ出かけることが滅多に無いことを考えれば
それだけ夜は危険な生き物が徘徊するのだと考えられる。
つまり、この光る魚は危険な生物かもしれないということだ。
先手必勝といわんばかりに、早速収納空間へと仕舞うことにした。