不衛生
宿はペットも宿泊可能だった。
「ポチ、良かったな!」
「はい!馬と一緒は嫌でござる!」
少し値は張るが、個室に浴槽が付いている珍しい宿だった。
ポチと一緒に風呂に入り、さっぱりした後に今後の屋台を考える事にした。
「やっぱり食べ物の方がいいかな?」
「そうでござるね。 他の屋台にはあまり客が着いていないようでござるし…」
そう、他の屋台は不衛生と言っても良いだろう。
小汚いおじさんが腐ったような肉を焼いているのだから。
勿論、これがそういう食べ物だと言う可能性もあるが
客の付きをみればその可能性はかなり低そうだ。
不衛生なのは何も屋台だけではない。
この街の道端に異臭がする生ごみが捨てられていたりするのだ。
「ポチ、これは店を出す場所を考えないとまずいよな」
「そうでござるな、臭いでござる」
これでは持ち込んだ香辛料も屋内でないと無駄になってしまいそうだ。
それだけではない、この通りは風も強く吹くので
塵や埃なども大量に舞っているのだ。
いい場所がないか探してみるも、どこも同じ様な条件だった。
東西南北から中央に向かって風が吹くとは、どうなっているのだろうか。
おかげで街の中央にある領主の館の周囲は凄いことになっている。
主に埃と塵によって。
伯爵領はいくつかの街で構成されているので、この街には来ることが無いのかもしれないな。
「ポチ、どうしよう。 違う街に行きたくなってきた」
「殿と同意権でござる」
やっぱりかー。
「よし!移動するか!」
「はい!でござる!」
恐らく二度と来ることがないので、ゆっくりと見物しながら街を出ようとすると声をかけられた。
「おや? もう出て行かれるのですか?」
声をかけてきたのは街へ入るときに顔を合わせた門兵さんだった。
「ええ、言い辛いのですがこの街は肌に合わなかったので…」
「やはりそうですか、昔はこんなに汚れてはいなかったのですが…」
「何かあったのですか?」
つい聞いてしまった。
「ええ、ここ数年でどういうわけか四方から風が吹くようになりまして。 その風に乗ってきた砂や埃をいくら片付けてもキリがなく、住民は諦めてしまったのですよ」
勿論、今でも掃除を頑張ってる住人は少数だがいるようだ。
「なるほど、私もこの舞っている埃や塵が商品に掛かるのが嫌で他の街へ行くことを決めましたからね」
俺の言葉に門兵さんは頷き
「行商で来られる方は皆さん同じ事を言いますね。 無理もないです」
話が一旦終わったので、街を出るついでに候補地のオススメを聞いてみることにした。
「ここから行商で近くの街へ行くにはどちらへ向かうのが良いでしょうか?」
門兵さんは少し考えた素振りをすると、右手を西へと伸ばした。
「こちらですね。 この先を二日ほど進んだところに西の街があります。 こことは違い綺麗な街なのでお勧めですよ」
とのことだった。
そして、俺たちは門兵さんに会釈をして別れを告げた。




