伯爵領
一先ず拠点付近の安全は確保できたと思っていいだろう。
しかし、畑の防衛はしっかりとしておかねばならない。
拠点を囲うように金属の柵を設置し、ドーム上に組み上げていく。
畑全体がかなり広いので、市販のネットを何度も縫い合わせて巨大な網を上からかけた。
しっかりと骨組みに縛りつけて、最後は通電させる。
電気ネットはやりすぎかとも思ったが、上空から攻められると苦戦しそうな気がしたのだ。
入り口は一つしかないが、中はわざわざ能力を使わなくても済むので気が楽だ。
「こんなもんか、ポチも気をつけるんだぞ?」
「そうでござるな! この網にかかったと思うとぞっとするでござる」
ポチはぷるぷるしながらそう言った。
「さて拠点はここでいいとして、次は何処にいこうか?」
「伯爵領へいくのでは?」
あ、そうだった。
「そうだったな、拠点作りに夢中になってすっかり忘れてた…」
「殿…」
なんでだろう、ポチの視線がつらい。
「ポチ、伯爵領はどっちだ?」
「えーっと、あっちでござる!」
「よし、行こうか」
それから二日後、ひたすら森の中を歩き通してようやく着いた。
「ようこそ、ここから先が伯爵領になります。 危険物の持込があるといけないので、念のために持ち物を確認させてください」
門兵の言葉に従い、リュックの中身を見せた。
「これは…なんでしょう? 真っ赤な粉?」
「ああ、スパイスですよ。 私は商人の真似事をしてましてね、これは唐辛子って言う植物を粉末にしたものです。 舐めてみますか?」
「よいのですか?」
「ええ、重要なお仕事をなさっている方に余計な時間を取らせるのは心苦しいので…。 あ、辛いので舐める時は少しだけですよ」
門兵さんは指先で少し摘むと、手の甲に乗せて一舐めした。
「恐ろしく辛いですね…。 しかし害はないようですね。 大丈夫です、どうぞお通りください」
「ありがとうございます」
大して時間をとられなかったな。
さて、この街では何を売ろうか。
「ポチ、宿はどうする? どうせ拠点に帰るし借りなくてもいいけど」
「急に出たり現れたりすると不審に思われるかもしれないでござるよ?」
ふむ、それもそうか。
「よし、それじゃ適当に宿をとろうか」
宿を探すついでに、暫く街中をぶらぶらしてみた。
様々な屋台が出ているが、やはり食べ物の屋台は多くない。
それどころか、衛生的にやばそうな店ばかりだ。
「ポチ、ここでも忙しくなりそうだな」
「そうでござるな、虫が集っているような露店では相手にならないと思うでござる」
男爵様からはここまで酷いとは聞いていなかったので、恐らく何事かがあったのだろう。
「お、宿発見! ペットも大丈夫なら今日はあそこにしようか」




