野生生物
「確かに、魔獣が見当たりませんね…。 広範囲に網を広げて調べてみるでござる!」
やはり近場には魔獣がいないようだ。
だが、それは決して悪いことではない。
いつか来る危機ということで、十分に注意をしていればいいだけなのだから。
畑の作物も日に日に大きく育ち、葉の色艶も悪くない。
収穫もすぐに出来るだろう。
だが、俺はこの土地に永住する気はない。
あくまで拠点として使うだけの予定なのだ。
ではなぜ作物を育て始めたかといえば、単純なことである。
村の復興だ。
だからといって、生存しているかどうかも不明な以前の村人を呼び込むわけではない。
村として建物を建て、作物を育てる。
だが、人はまだ入れない。
この村は俺が気に入った人たちの避難地として作るのが目的なのだ。
以前にこの場であったような魔獣による災害が他でもないとは限らない。
だからこその避難先なのだが、正直なところあまり使う予定も無かったりする。
俺だって疲れたときは誰に気兼ねなくごろごろしたい。
美味しい料理を食べながら食っちゃ寝の毎日を過したい。
既に資金は十分に稼いでいるため、これ以上働かなくても生きてはいける。
ただ、暇に殺されることだけは嫌なのだ。
そのため、いろいろな場所へと旅をしたり
近場で作物を育てたりしているのだから。
テレビを見ながらごろごろしていると、ポチが散策から帰ってきた。
「殿、魔獣はいたのでござるが…。 その、あまり心配するようなことはないと言うか…」
どういうことだろうか。
「何かあったのか?」
「魔獣が隣村の人々に飼いならされていたのでござる…」
おっと…。
「それは元のこの村を襲ったのが隣村ということか?」
「いえ、それはないと思うでござる。 飼いならされていると言っても、隷属しているわけではないようでした」
「ふむ…。 ちょっと確認しに行くか。 ポチ、案内してくれ」
「わかったでござる!」
隣村までの道中はそこそこ長かったが、魔獣はやはり見当たらなかった。
村の入り口に近付くと、数人の村人が魔獣に餌をあげているのが見えた。
少し気を引き締め、声をかける。
「こんばんは、こちらの村に宿はありますか?」
すでに外は暗く、歩いて帰るには距離もあるため宿をとる。
というのは勿論真実ではない。
ただ、当たり障りなく喋りかける口実が欲しかっただけだ。
「ええ、宿ですね。 あそこにある看板を追っていけば着きますよ」
「ありがとうございます。 あの、それでですね…。 魔獣…ですよね?」
「ああ、この子達ですか。 少し前までこの村でも魔獣に襲われる被害が多発しておりましてね、なんとか被害を減らそうと餌をあげてお腹を満たせば帰ってくれるんじゃないかという事になりまして。 餌をあげていたら予想通り帰っていったんです。 ですが、今度はこのように懐かれてしまいましてね…。 今となっては可愛いものですよ」
それでいいのか野生生物…。




