転落
さて、どうしたものか。
異世界なんてものは信じていないし、死んで転生なんてのもごめんだ。
だが、この状況はどうみても…。
二年間かけて必死に取った単位で、既に卒業に必要な分は確保できている。
後の二年間は、部活にも入らず
週に一度のゼミとバイトの繰り返しになる予定だった。
そして、そんな週に一度の登校日
講義も終わり、帰り道の下り坂を自転車で走っていた俺は
後輪のパンクによって、横道に転げ落ちた。
気を失っていたということも無く、そこには青い空が映っていたのだ。
修理に行かねばならないことを嘆くか、擦り傷で済んだことを喜ぶべきか
ため息を吐いて立ち上がり、自転車を起こす。
背後の坂道へと振り返るとそこには、整地されたアスファルトなど無く
剥き出しになった岩場、高山地帯とでもいうのだろうか。
少し遠くには川まで見えている。
大学では教授のアシストを勤める約束をしていた。
バイト先でさえも、卒業後は是非にと誘われていた。
順調に職に就く流れは出来ていた。
順調に怠惰な生活への一歩を踏み出せるはずだった。
ああ、やはりか
やはり、神とは残酷で試練しか与えないのか。
川に被さるように広がる都市をみて呟いた。
「クソったれ」
今後、どの様に身をふるにしても動かなければ始まらない。
ひとまず、この状況は飲み込むことにしよう。
未だ理解は出来ないが、一先ずは都市を目指そう。
自転車は、とタイヤを見ると
あれ、直ってる?
うん、心なしか転倒前よりも空気が入ってる気がする。
よし、これなら多少は楽になる。
暫く自転車で走り、だいぶ坂を下った辺りで休息をとった。
休憩地点にした川辺で、リュックから取り出したお茶を飲む。
理解できない状況に合わせ、ここまでの疲労もあり
あまり残っていなかったお茶は、すぐに空になってしまった。
最悪の場合も想定し、空になったペットボトルに川の水を汲んでおいた。
その後は、何事も無く都市の入り口に辿り着く事が出来た。
しかし、都市の入り口には人がいない。
何故だろう。
通常、このような大きな町には門に見張りが居るはずなのだ。
勝手に入って後々問題になるのは嫌なので、持っていたライターと煙草を使い
枯葉から木の枝に火をつけ暖をとる。
空きっ腹を抱えたまま、この日は眠ることとなった。




