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虹彩都市アイリス  作者: とんさき
第四章 地底の篝火
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地下世界50-2

「『全ては死骸で、できていた。私は一人、無数のモノに囲まれ一人で嗤う』」


唐突に始まる詠唱。

全身で脳力特有の力の奔流が湧き上がるのを感じた。


「「馬鹿なっ!!」」


精神での会話も忘れて、思わず驚きが口から飛び出した。

奇しくもハバードと同じ言葉だ。


その脳力(ちから )は、目の前の少女が、頭部に捻じれた角を携えるモノが、背中に禍々しい翼を生やした存在が、使って良いものではないはずだ。


「ありえない!! お前は……お前は、デーモンの類じゃ無いのかッ!! お前はいったい何なんだッ!!」

「『そこに言葉はなく、誰かの意志もない。数多を斬り捨て、幾多を縊る』」


ハバードは否定の声を上げるが、少女の詠唱は止まらず、肌で感じる力は紛れもなく本物。


「完成させては不味い!!」


ハバードに緊急性を告げ、反撃されることも厭わず俺とハバードは同時に跳び出した。

俺の腕に纏わりつく炎が、ハバードが秘術を使い作り出した雷撃が、少女を狙い繰り出される。


しかし、少女はひらり、ひらりと踊る様に羽根を翻し攻撃を躱した。


破壊の力が解剖室に広がり、貴重な実験器具がただの残骸と化した。


「『ただ、一人。血に塗れて敗者と踊る』」


なおも詠唱は止まらず、人間を超越した速度で、少女は舞う。

秘術が、爪が、全てが避け続けられる。


(俺達じゃ止められない!!)


ハバードの悲鳴のような心の声。俺たちの脳力の起動もこの状況では無意味だ。

俺の脳力は単純な筋力の増加でハバードに至っては戦闘用ですらない、現状を打破するには至らない。

少女は明らかに此方を弄ぶように手を抜いて動いているにも関わらず、詠唱を止めることすら叶わない。


そして、遂に脳力の高まりは臨界を迎え――――


「『さぁ、立ち上がれ、≪死者の軍団、不死の群れ≫(ネクロ・クランプ)』」


そして、詠唱は成った。

脳力が起動し、空気が変質した。


不浄の空気が室内を満たした。


「あり、えない――――」


俺の気持ちを代弁するかのようにハバードから声が漏れた。


「すまない、詠唱中なもので返事が遅れたな。さぁ答えようか、ハーフリング、獣人と巨人の混ざり者(バレイシャル )よ。お前たちならもう分っているだろう? つまり、私も、そういうことだ」


少女が両手を広げ、自身の存在を断言した。




――――――――





獣、蟲、人、悪魔、天使、多くの知性ある生物が生きている地下の世界で、人間とそれの以外の知性ある生物とを区別する最も大きな要因は脳力の有無、サイオニックの有無だ。


この世界の人間には脳力が宿り、他の知性ある生物は彼らが元々住んでいた世界で行使していた力や生来獲得していた力を操ることができる。

脳力とは異なる技術体系を彼らの呼称に従い人類は超常的なちから(サイオニック )と呼んでいた。


脳力は非力な人間に与えられた理外の力だと唱える学者すらいる。

人間は脳力、他の知性ある生物はサイオニック、それは絶対の法則であるはずだった。


少女が詠唱を終えると同時に、心臓を抜かれたはずの研究者達が立ち上がった。

彼らの瞳に光はなく暗く濁っている。

それもそのはずだ。胸に大穴が空いて生きているわけがない。


(落ち、つけ――――)


ハバードに向けて唱えたはずの言葉はまるで自分に言い聞かせているように思えた。


少女は自分をまるで何かとの混ざり者であるかの言っているが、それは自称に過ぎない。


見た目も存在感も通常の人ではありえないものを肌で感じているが、少女は未だサイオニックを使ってはいない。

そして少女の種族は『本の居住者』だ。

見た目は自由に変化させることができる。そういう種族だ。


存在の圧力についての説明はつかないがそういう秘術もあるのだろう。

少女について不確定な要素はいくらでもあるが、その身体能力と脳力の脅威は間違いなく本物だ。


(よく聞けハバード、もう潮時だ。知識の積層云々言っている場合じゃない)

(………………)

(この手の脳力はろくでもないものに違いない。脳力を素に作られた死体に働きかける秘術がそんなものばかりなんだ。面倒じゃない脳力のわけがない)


言葉こそないが、思念からハバードが対応を決めかねていることは伝わってきた。


(知る限りじゃ、死者の肉体を一定時間強化して暴れさせる≪死の狂乱≫、死者を爆弾に見立てて特攻させる≪死者の断末魔≫(エクストラ・ボム)、死者を人形のように操る≪冒涜的人形≫(カースド・パペット)、簡単に思いつくだけでも効果は様々でえげつないものばかりだ。それに、あの身体能力に加えて、手数まで増えてしまうのならそれはもう面倒じゃ済まされない)


立ち上がった死者達が少女の前に跪いた。

少女は当然のようにその行為を受け入れる。


(逃げろ。今すぐに。逃げられるうちに)

(……そう、だな。意地を張っている場合じゃないな。研究資料にアレ、持てる全てを持って逃げることにする)


脳力の発現を済ませ、死者を従える少女は嗤い、手振り一つで死者を嗾けた。

研究者達は通常の彼らからするとありえない加速をもって、俺達へと跳びかかる。


肉の断裂音が部屋中から響いた。

限界を超えて酷使させられた筋肉の壊れる音だ。


(俺が足止めをする。お前は行ってくれ)

(…………あぁ、頼んだ。足止めが済んだらすぐに逃げてくれ…………ヴァイト、また、会おう)


命のかかった、そしておそらくは生き残れないであろう足止め。

それでも、俺はそう易々とあの少女にやられてやるつもりはない。

勝ちを拾えなくとも戦闘時間を引き延ばす戦いくらいはできる。


俺は動き出した死者の全ての行動に対処できるよう、遠距離から爪が纏っている炎を同胞の死体目掛けて伸ばした。


炎がうねり、最初に跳びかかって来た死体、三体を包み込む。


ハバードは逃走するため、備えていた宝石に意識を傾けた。


瞬間、少女から超常の力が膨れ上がる。


脳力とも秘術とも違う馴染みの薄い力の感覚。

それは十数年前、各地で勃発していた、異界からの招かれざる来訪者『デーモン』達との戦いで感じた力と同種のモノ。


ハバードが慌てて力ある言葉を口にする。


「〈空間固定〉(ロケーション・ソゥ)」

「≪転移≫(テレポート)」


割り込まれるように唱えられた少女の言葉。

その力の起動はハバードの力の行使よりも素早く行われた。


同時にハバードの宝石が砕け、秘術の力が解放された。



――――だが、何も起こらない。



「なんだと……」


ハバードが手元の宝石を見つめ目を見開いた。

解放されたはずの転移の力は霧散し、残るのは砕けた宝石のみ。


(何が起きたんだ!? ≪転移≫はどうなったんだ!?)

(わからん、秘術が霧散した!! 宝石は砕けたが、効果が出てない!!)


念話しつつ、炎の中を突っ込んできた同胞の死体の足を蹴り飛ばす。

焦げた三体の死体は蹴りつけた部位が砕け散った。


炎に焼かれた死体の動きは鈍い。

筋肉が焼失し、運動性能が落ちたせいだろう。

無策な接近はただの的でしかない。


足の砕けた死体は上手く動けず、地に這いつくばった。

死体の動きを封じるのに動けないほどの損壊を与えるのは有効のようだ。


死体を攻撃後、すぐに飛び退き距離を取る。

ここで死体が爆発なんて事になったら洒落にならない。


残りの研究員の死体は動きを緩めず此方に向かってきていた。

依然として死体との近接戦闘は危険と判断、先ほどと同じように炎を構える。


「……全く、転移技術とは面倒な物を…………くそっ、サイオニックを使わざるを得なかったじゃぁないか」


少女は苛立ちを隠さず角の生えた頭を掻いた。

彼女の怒りに反応してか死体の動きから無駄な動作が減り、鋭さが増した。


俺自身は元来、敵の攻撃を力場や自身の耐久力で受けつつ強力な一撃をお見舞いする戦闘タイプ、回避に力を割かねばならない今の状況はやり難くてならない。

イラつきたいのはこちらのほうだ、と叫びたくなるがそうも言ってられない。


≪転移≫が防がれるとは全く予想もしていなかった。


無論、転移を防ぐ術があることは知っていた。

事実、この要塞の中は登録された人物しか転移ができないように仕掛けが施されている。

それでも、ただの言葉、シングルアクションで防がれるなど露ほども思わなかった。


(仕方がない。≪転移≫が無理なら後ろのドアから普通に逃げる)

(無理だ。いくら俺が足止めすると言っても移動速度は少女のほうが上、瞬間移動ができなきゃ逃げられない。逆に致命的な隙をさらすことになるぞ)

(くそっ、結局は増援を待つしかないのか)

(そうだ。なんとか時間を稼ぐような戦い方をするしかない)


少女が脳力とサイオニックと思しき力、この二つを行使したことは驚きだ。

けれど、目の前の脅威を対処していかなければ、その答えを考えることすら儘ならない。


(ヴァイト、できるかわからんが俺が言葉で時間を稼ぐ。お前は俺の言葉に反応せず、あの女の言葉にも耳を傾けずただ最適解で動き続けてくれ)

(反応すると思うか?)

(あぁ、あのくそ女はどうも効率よりも愉しみを優先させて戦ってる。研究員を弄んだり、まだ俺達が生きてるのが何よりの証拠だ。分の悪い話じゃない)

(……わかった。任せたぞ)


高速で念話が終わるとハバードが口を開いた。


「……なにを、なにをしやがった!!」


彼は死体からの攻撃を避けながら少女を睨みつける。

少女はそんなことも分からないのかと、馬鹿にしたように口角をあげた。


癇に障る笑みを意識的に脳の片隅に追いやり、目の前の死体の群れへの対処を試みる。


(≪転移≫ができないってことは≪危機からの逃避≫も発動しない可能性がある。間違っても被弾するなよハバード)

(あぁ、くそ!! その可能性もあったな畜生!!)


爪の炎を伸ばすが死体は炎を避け、側面へと回る。

炎を動かし、死体を損壊させようと試みるが行動不能に陥った死体を見て警戒しているのか死体達は簡単に近寄ってきてはくれない。


――――ならば回避不能な面で攻撃するのみだ。


(風を出す!!)


俺は短く意図を伝え、宝石を砕いて起動のための言葉を素早く口にした。

ハバードが動く死体から大きく距離を取った。


「≪風の壁≫」


突風の始点と向きを調整し、秘術を起動させる。

俺の意思を反映させた膨大な風が床から吹きあがり、全ての死者は奥の壁へと打ち付けられた。


飛ばされる死体達とは裏腹に少女はまるで風などないかのように直立している。


「お前はいったい何なんだ!? 脳力を使って、サイオニックまで使いやがって!!」


少女の嗜虐的な笑みが崩れた。

初めて見る少女の驚き、そして何かを察したような表情。


「なるほど、そうかそうか。混乱を装った時間稼ぎか。全く、色々と考えるものだ。余程察しが悪いのか、ただの痴呆かと思ったぞ……まぁ、まだ時間もある。答えてやろう」

「……そいつは有難いな。だったらそのまま彼らの骸を動かさず同胞が集結するのを待ってくれるとより有難いんだが。或いはあんたがこのまま何もせず帰ってくれてもいい。止めはしないぞ」


無茶な注文を口にするハバードを気に入ったのか少女は再び嗤う。

壁へと吹き付ける風の中、死体達が抵抗を止めた。


「ふむ、追い返そうとするなんてつれないじゃぁないか。お前たちが私を連れ去ったのだろう? それに、たまの会話だ。愉しませておくれよ。さて、では質問の答えだ。私は察しの通りお前達の言うデーモンだ。私はロベルティーネ、愚かな者共に道を示すトリックスター…………そして、『本の居住者』でもある」


ロベルティーネは名前か? ならばトリックスターは種族に類する言葉か? デーモンにしても聞いたこともない名前だ。


「ありえない。異界からの来訪者と人の混ざり者だと? ただの混ざり者とは訳が違う」

「あぁ、そうだ。私自身そう思っているさ。だが、今、私は此処にいる」


自身の存在を強調させるためか、少女は羽を大きく広げた。


俺の作りだした秘術の持続時間が切れ、風が収まり同胞の骸が解放される。

自由を得た死体は直立し俺達へと身体を向けているが動いてはこない。


このハバードの会話で、どれほどの時間が稼げただろうか。

思考巡らせ、ハバードと二人だけでこの状況を打破する方法を模索するが未だにその方策は見つけられない。


戦闘開始から数分、頼みの増援はまだこない。

このフロアは研究員ばかりだ。戦闘員が多くいるフロアではない。

その上、≪転移≫まで封じられている。

この広大な要塞では如何に素早く駆けつけようとも脚力のみでは時間がかかる。


まして緊急事態と戦闘員に告げたのだ。

戦闘の準備に他の戦闘員との合流、この室内の状況把握、彼らのやるべき事は時間がいくらあって足りはしない。


助けを求められたからといって無意味に無策にこの部屋に突っ走ってくる愚か者はこの要塞には居ない。


「……遅いな。全く、お前たちの増援はいつ来るんだ。私にサイオニックを使わせたのだからもっと私を愉しませる義務があるだろうに」


少女は詰まらなそうに死体に冒涜的な踊りを始めさせた。

関節があらぬ方向に動かされ、渇いた音がなっている。

無茶な動作の代償に四肢が千切れている者すらいる。


ふざけた状況だが此方からは打って出るわけにもいかない。

この余興をいかに長引かせるかが重要だ。


(ハバード、何かもっとあの女の興味を引くようなことをしてくれ。分の悪い賭けに出るよりこのまま対話を維持した方が勝算がありそうだ)

(簡単にいってくれるな。生憎と人外の興味を引くような事なぞ知らないぞ)


念話をしていると突然、少女の意識が俺達から外れ、何かに気が付いたように何もない壁を見据えた。


(あっちの方向なにかあったか?)


少女の気を引くような物が思い当たらずハバードに問いかけた。


(いや、何もなかったはずだ……方角は……泡立つ湖側の入口のほうか? …………まさか侵入者か?)


「やっと来たか」


デーモンとの混じり者がまるで普通の少女のように小さく微笑み呟いた。

頭部の角と腰の羽根がなければただの少女を間違えてしまいそうな程に表情は柔らかい。


脳内でけたたましい特大のアラームが響いた。

砦に設置されている襲撃者用の警報だ。

同時に、脳内に≪一斉送信≫のメッセージが飛び込んでくる。


【泡立つ湖にて銀色の未確認物体が強襲!! 繰り返す、泡立つ湖にて銀色の未確認物体が強襲!!】


この状況での襲撃。

それは目の前の恐るべき少女と無関係ではないだろう。


(全く!! 次から次へと!! ハーフリングなのに怒りで獣化してしまいそうだ!!)

(侵入者とこの女、どちらを優先させる!?)

(襲撃者の脅威度があのデーモン女を超えるとは思えない、入口には少数の人を送って時間稼をさせるしかない!! この女をどうにかしなきゃ生き残りの目は夢のまた夢だ!!)


再び砦全体へ指示を与えるためにハバードが宝石を取り出すが、少女は軽く一瞥するにとどめ、邪魔することなく此方を見ている。

少女のような柔らかな笑みは消え、軽薄な嗤いへと変わっていた。


【ブロックC、Dにいる者は要塞入口へと向かい迎撃、残りは全員第二研究室だ!!】


「さて、準備は良いかな? そろそろ連れがこっちに向かっているようだ。彼らが来るまでに終わらせておかないと何を言われるか分かったものじゃぁない。さぁ、残念だが楽しい楽しいお喋りも終わりにしようか」


死体が踊りながらゆったりと近づいてくる。


(やはりこのくそ女の仲間か!!)


ハバードの言葉で先の一拠点での戦いを思い出す。


素体となるハーフリングを受け取りにハバードと共に出向いた先に居た、銀色の不可思議な鎧を操る銀髪の少女と狼の獣人。

戦っても消耗ばかりが進み、倒しきれるかも不透明な戦況。


≪転移≫で安易に戦場から離脱できるが故に、簡単に選択してしまった逃走を今更ながら後悔する。


(なぜこの場所が…………いや、追跡を躱す秘術も、探し物を欺く秘術も絶対ではない。ましてデーモンの混ざり者を抱えてる連中だ。どんな隠し玉があるかわかったもんじゃない……くそっ!! どんどん行動の選択肢が削がれてやがる。こうなりゃあの女をぶちのめすしかなさそうだぞ)

(……畜生、勝てるか分らんがやるしかなさそうだな……あぁ、もう、俺は獣人混じりのお前と違って戦いは嫌いなんだぞ!!)


ハバードが覚悟を決め、二振りの曲刀を抜き放った。

俺自身も回避と防衛的反撃にのみ割いていた意識を構築し直し、攻撃に意識を傾ける。


俺は少女の速度、死体の速度、手持ちの宝石を頭に入れ戦いの流れを想定した。


「いつまでそっちを見ているんだ?」


唐突に、背後から肩を叩かれた。

背筋が凍りついた。


瞬きもなく、俺は努めて冷静にあの女を見据えていたはずだった。

なのにどうしてか背後からあの女の声がする。


俺は咄嗟に爪を振るい背後を薙ぎ払った。

ハバードを見れば俺と同様に後方へ≪氷の槍雨≫を放っていた。


しかし、すでにそこにあの女の姿はない。

部屋を見回すが、踊り狂い、身体が殆ど千切れかけている同胞の骸しか視界には入らない。


俺の想定もハバードの覚悟も何もかもが無意味だった。


「意地が悪すぎるぞあんた」


周囲を懸命に見回し冷や汗をかきながらハバードが姿を捉えることのできない女へと声を飛ばした。


目に捉えることのできないあの女の移動速度。

そもそも、あのデーモンは俺達を殺すのに脳力を使う必要などなかったのだ。


ただ、愉しむためにぎりぎり勝てるかもしれないという希望を持たせるためだけに脳力を起動したのだ。


「あぁ、その表情いいなぁ」


視界から消えた時と同じように突然、視界に現れた女。

少女の顔には醜悪な満面の笑みが張り付いている。


その笑顔を見せるためだけにあの女はまた俺達の前に姿を現した。

完全に弄ばれている。


「くそがっ!! ≪連鎖する雷撃≫」


室内に走る雷撃を女は操っている死体をぶつけることで無力化した。

女はさらに嗤う。


「ははは、まぁ、まだ余裕はある。そんな顔をしないで欲しいなぁ。安心してくれ、時間がなくともそんなに簡単には殺しはしないさ。すぐ終わってしまうんじゃぁお互い詰まらないだろう?」


何処で選択を間違えた。

この場所からミルトリオンへと仕掛ける計画も終盤に差し掛かっていた。


適当に冒険者を攫い、実験に使い、研究の成果の質を高める。

それだけのことのはずだった。

だけど、今はどうだ。


俺たちが弄ばれ、おもちゃにされ、命を散らされようとしている。


両腕を引き抜かれてしまったハバードを見ながら、俺は、触れてはいけない敵に手を出してしまったことを悟った。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 始めの詠唱で某アーチャーに似たものを感じてニヤリとしてしまいました笑 こういう世界観大好きなのでいつもわくわくしながら読んでます [気になる点] なぜもっと注目されないのか [一言] 作者…
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