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「...!!」
人が入って来た音がして、驚いてそちらを向く。
「あ...さっきの、」
「ごめん、驚かせちゃったんだな。」
そこに立っていたのは、私を一番最初に発見してくれた彼だった。
「その、さっきは本当に...」
「あー、いいからいいから。近くにいたってだけだし。それよりその敬語、やめてよ。その顔でその口調って、すごく違和感だから。」
「...ごめん、なさい」
自分でも何で謝っているのかはよく分からなかった。
でも、この人から大事な人を奪ってしまった、そんな罪悪感に覆われた。
「...別に、俺に謝るようなことでは無いと思うけど」
「......」
そう言われれば他に言うべきことも見つからず、完全に黙り込んでしまう私。
そんな私を見てか、ひとつ息をついて彼は話してくれた。
「...色々、教えてあげようか。」
「えっ...」
「あんた、ずっと怯えてるじゃん。俺とか、他の人にもさ。もしかしたら何も知らなくって、それで怖くなってるだけなんじゃないかって。そんな気がしたから。」
すこしでも私の気を和ませてくれるように、彼は優しくそう話してくれた。
「そ、それなら、...お願いします。」
彼は真顔でひとつ頷くと、丁寧に話し始めてくれた。
「さて、まずは俺のことから。」
私はそっと息を飲んで静かに彼の言葉にみみを傾けた。
静かな病室の空気を揺らす、少し低めの穏やかなその声に。
「俺の名前は、羽多野 結生。」
...鈴の音が、聴こえた気がした。