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「...すみません、ありがとうございました。」
保健室のベッドまで連れてきてもらったことに感謝を述べる。
...ええ、ここまでお姫様抱っこでしたとも。ええ、ええ。
今なら恥ずかしさで月まで飛んでいけそうです。
「...あのさ、」
「はい?」
「なんで、敬語なの?」
...お?
えっと、それは初対面の相手に対する最低限の礼儀と言うか、
ていうか、なんで彼はタメ口なんですかね?あれ、顔見知りとかじゃないよねぇ?
「いつもは、もっと馴れ馴れしく男子と話してんのに。」
いや、むしろいつもはみっちゃんいなければ男子となんか話しません、というか、コミュ障なので話せないんですけど。
自分でもよく分からないことに戸惑っていると、
「...ごめん、質問変えるわ。
______アンタの名前は?」
私、私の名前は、
餅田______
そう自分の名前を声に出して言うと、何故か側で聞いていた先生も凍りついてしまった。
そりゃあ、初対面だし知らないっていうのが当然だろうけど、
何だろう、この、違和感
心臓がバクバク言っててうるさいし、痛い。
嘘だよね、全部全部
「......すいません、トイレってどこですか。」
震える声で必死に聞くと、はっとした保険の先生が「ここを出て、廊下を右側へ...」と教えてくれた。礼もそこそこに保健室を飛び出し、言われた方向へと走る。
私は、もちだ、餅田紗由。
さっちゃんと同じ大学の二年生。
そうだ、そうだよね...?
しかし、鏡に映された真実は、それを見事に打ち砕いた。