花に水を。恋に愛を。
花は水をやれば育つのに。
恋は愛では育たない。
書き綴った想いが枯れる前に
なんて焦って急いだところで
どうせ心は逃げられない
想いは呪いのように残り続ける。
でも、
いつか忘れるというのなら
――――――その時を待ってもいいのだろうか
☆☆☆☆☆
花に水を上げ続ければ枯れるのに。
愛を与え過ぎれば恋は壊れるのに。
水を与えなければ、花は枯れるのに。
愛をやらないはずの恋は枯れないらしい。
「……馬鹿らしいな」
己の心の中、巣食う感情に独白し、下らないとばかりに嘆息する。
己を己で嗤わなくては、気でも狂ってしまいそうだった。
そうやって自虐する己の視線の先には一人の少女の姿が踊る。
容姿中の上。成績中の下。性格は気まぐれで、周りからの評価は「猫みたいなやつ」
良く話す友人は多く、良く動いて良くしゃべる。昆虫は苦手だが、動物は好き。
所属はテニス部。最近の楽しみは、新しくできた女の後輩の成長を見守ること。
クルクルと忙しそうに動く姿を見て、ふと脳裏に浮かんできた情報。それがもっと具体的な形を取る前にパタパタと手を振って掻き消した。これでは全く犯罪者そのものだ。いくら何でも気持ち悪過ぎる。
「なあ、好きなんだ。付き合ってくれないか?」
一体何度盗み見たことだろう。一体何度心に焼き付けたことだろう。
それは例えるならアルバムのように。初めて合った時からの膨大な映像は、心の片隅に積みあがって。
やがて俺の部屋が一杯になるまでに、そう時間はかからなかった。
視界が埋め尽くされて、君以外見えなくなって。
それが俺の暴走を誘発するまで、時間はそんなにいらなかった。
「ごめんなさい」
それはある意味で必然で。
見続けた俺が知っている。誰より深く理解っている。
彼女は俺を見ていなかった。気付いてさえいなかった。
だから彼女は俺を選ばない。俺が彼女を選んでも、そもそも彼女の世界にすら俺は存在しないから。
天秤の両皿に思いを形にして載せることができたなら、きっと天秤は滑稽なまでに傾いただろう。
始める前から分かり切っていた結末。確信していた結果。
――――――計算外の動揺。
ありとあらゆる罵倒を受ける覚悟で、どんな無関心を受けても対応できるだけの準備をして、
対して知りもしない人にすら、同情してしまうような君だから。困らせない様に注意して。
それでも君の前でみっともなく泣いてしまったことだけは、今も少し後悔している。
あわあわと慌てていた君を見て、そういう顔を見れたのなら、この結果も悪くないと思ったのだけは一生の秘密だ。
☆☆☆☆☆
例えば誰かを好きになるっていうのは、花が育つことに例えられる
愛はあるだけでは伝わらない。
愛があるから許されるのではなく、愛があるのだったら行動で示すべき
だから愛ゆえに人は行動する。
それを俺は「花に水をやる」と例えてる。
花に水をやらなければ枯れるように、恋が時と共に風化することを祈って。
花が美しく咲くのなら、それは己に向かって咲いてくれるから。
でも自分に向かって咲かない花でも美しいと感じてしまうから、俺はまだ初恋の中にいる。
―――――――だが今はそれも悪くない。そんなことを思いながら、まだ君をこっそりと眺めてる。
そこはかとなくかおる犯罪臭……何となくこれやった! っていう人いたら教えてください。
あ、作者はしてないですからね!?