表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

陽だまり

作者: コノミ

『もしさ、私が男だったとしても、悠は私のこと好きになってくれた?』

 愛しい恋人が唐突に聞いた、ある日の昼下がりの話。


「ねぇ。」

 木陰に寝転がる僕の頭上から、大好きな声が聞こえる。

「ねぇってば。」

目を瞑り、気付かないふり。そうすれば次にきっと、彼女は僕の名前を呼ぶから。

「悠!」

「なぁに、凛。」

目を開けば、彼女の不満げな顔。

「気づいてんなら返事してよ。」

頬を膨らませて、文句を垂れる。

「ごめんごめん。」

そう言って膨らませた頬に手を添えれば、くすぐったそうに目を細める。

この時の顔が一番好きだ。

顔にかかる漆黒の前髪、その間からちらりと覗く碧眼。それが堪らなく好きなのだ。

「悠のばか。」

僕の手に頬を擦り付けながら言う。

「だから、ごめんって。」

頬に添えた手を首に回し引き寄せれば、彼女はいとも容易くこちらに倒れこむ。

見つめ合い、どちらからともなく唇を近づけ、口づけを交わす。

「…悠はさ、」

唇を離し、彼女が言う。

「私のこと、好き?」

「もちろん、好きだよ。」

微笑みかければ、嬉しそうに目を細める。穏やかな表情。

「じゃあさ、もし…、」

俯き、言葉を濁す。

「もしさ、私が男だったとしても、悠は私のこと愛してくれた?」

 それは、本当に唐突な質問だった。

「…どうして?」

「今は女だから恋人同士になれるけどさ、もし男だったら、こうやって隣には居られないでしょう?」

二つの碧い目が、不安に揺れる。

「どうだろうね。」

ふ、と笑って返すと、少し傷ついた表情。

あぁ、本当に、この子は馬鹿で、どうしようもなく可愛いなぁ。

「凛は凛だよ。男だとしても、女だとしても、それは変わんないでしょ?」

「それは、そうだけど…」

「僕は凛が好きだよ。愛してる。」

そう言って抱き寄せれば、僕の首元に頭を埋め、唸るように言った。

「悠のばか。」

馬鹿なのはお互い様でしょ、そう言いかけてやめた。

その代わりに、背中に回した腕により一層力を込めて、木の葉の隙間から溢れる陽を見つめて呟いた。

「いい天気だねぇ。」


Fin.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ