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憂鬱少女は今日も独り  作者:
彼女の場合の拗れた恋は:【谷屋紗綾】編
2/6

1ー2

 このダメ男を好きになったのは小学生の頃。

単純な話で、転んで泣くのを耐えていた私に「大丈夫?」と言ってハンカチをくれたのだ。

たったそれだけで惚れた。

誰かに心配なんてされた事はなかったから、透馬が普段見せない優しさが幼かった私には染みて染みて仕方なかった。

それからずっと、馬鹿みたいに恋をし続けた。

透馬にバレないように普段通りを装って、時折真剣な表情をするアイツに見惚れた。

 だけど私は、透馬の幼馴染って肩書きの他は何も要らなかった。

彼女になれるなんて思えないし、自分の気持ちを伝えたらいまの距離間は無くなってしまうから。

今では簡単に近づく事もできないアイツに、少しでも近かったって証拠が欲しかったのだろう。

それなのにずっと、ずっとずっとアイツだけを見続けた。

さっさとあのハーレム状態に軽蔑して、諦めてしまえばよかったのに。


 きっと、その罰が当たってしまったんだ。



「…谷屋(タニヤ)紗綾(サヤ)ちゃん?」


「、と、うらさん…ですね。何故ここに。学校には来ないでくださいと言ったはずです」



 校門に凭れかかっているスーツ姿の長身の男と、近くに停めてある高そうなスポーツカーがこの男が誰なのかを教えた。

都浦(トウラ)(ジュン)、数日前透馬の妹である(ミサキ)ちゃんに接触しようとしていた怪しい男だ。

聞くところによると、昔透馬父のお世話になった人で、私が知ってるくらいの大企業を経営している金持ちらしい。

岬ちゃんに接触しようとしていたのは、生前の透馬父に岬ちゃんを何らかの形で貰い受ける話をしたからだとか。

透馬父は岬ちゃんを物みたいな扱いは絶対しない、そんな事を言うほど酷い人じゃない。

それに岬ちゃんは来年中学生になるとは言え、まだ小学生だ。

私の妹でもある岬ちゃんに淫行罪なんて許さない。

何歳歳が違うと思ってんだこの男は。

岬ちゃんの待遇がどういう物かも知らないし、都浦さんが岬ちゃんを好きで好きで堪らないからその話をした、なんて思えない。

第一に、この男と岬ちゃんは今日が初めての顔合わせなのだ。

頭の中でその思考に辿り着いた時、繋がった導火線に火がついたように頭がカッとなって気づいた時には都浦さんのネクタイごと胸倉を掴んでいた。

ニヤニヤした表情を隠しもせず、まるで私を嘲笑っているかのような都浦さんを怒鳴りつけた。

「何を考えてるか分かりませんがお引き取りください!彼女は玩具じゃないの、まだ小学生よ?!!」と。

正直な話、やってしまったと思った。

それでも私はこの子を金持ちの道楽に使わせたく無かった。

すると彼はニヤけた表情を戻しもせず、私なんて何も出来ないただの小娘だと言った風に口を開いた。



『なら君がどうにかしてよ、谷屋紗綾ちゃん。拓馬さんに君の事も視野に入れさせて貰ってたからね。言っとくけど俺は自分から言った契約は引く気ないから。君とあの子、どっちにしようか?』



その物言いに自分が身代わりになると宣言したのは、きっと彼女の為だけじゃない、私自身の為だ。

透馬から離れる為に自分が、なんて分かり切った台詞を吐いた。

都浦さんもきっと気づいてる。

だから彼はこうやって私で遊ぶのだ。

自分が情けない。

何で私は、妹と幼馴染がこんな状態にある事に気づけない男なんかを好きになったんだろう。



「強気だね。君の話は聞いたけど、条件を守る気はさらさらないよ。此処に来ないと逃げるでしょ、君。立場分かってんの?」


「理解はしています。今更貴方から逃げません。失礼だと分かりながら啖呵を切ったのは私です」


「ふぅん、口が巧いよね。いつまで自分の本音から逃げられるかな」



都浦さんの言葉に驚くほど身体を跳ねさせた。

数秒間を置いて、何の事ですかと口に出す。

私にもあの情けなさが伝染したのかもしれないというくらい、か細い声だった。

都浦さんはワザと核心をつくような台詞ばかりを言う。

それが彼への私の苦手を誘う。

視線を逸らしてため息を吐いた。


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