ホリミカの出会い
初めての投稿です。とてもドキドキしていますがいままで書き溜めていたものの一つを発表することができました。すこし荒削りですが自分では結構気に入ってます。
その日はとても暑かった。最高気温は35度を超え、ひからびてしまいそうだった。
ホリミカこと堀内美香子は塾の中にいた。 (ホリミカとは、みんなが呼ぶアダナだが美香子自身も結構気に入っている。)退屈な講義を終え、談話室でテレビを見ていた。どのニュース番組でも、指名手配中の連続強盗殺人犯のことをとりあげている。まあ、こんな田舎町に来るわけないかとミカはたいして気にしていなかった。
20分ほどタレビを見たところでとなりの家に回覧板を届けなければいけないことを思い出した。
「いっけない」ミカは全力で自転車を飛ばした。
ミカがこの世で一番欲しい物、それはとなりの家の志保おばさんがつけている指輪。ダイアモンドがバラの形にコーティングされていてとても綺麗だ。ミカは子供のときからそれが欲しくて欲しくてしょうがなかった。通いなれた道を通り過ぎると涼しい風が吹いてくる。
志保おばさんの家に着いたのは午後1時を過ぎたころだった。ミカはかばんから回覧板をとりだしインターホンを鳴らした。しかし誰もでない。留守かなっと思ったが志保おばさんの自転車は置いてある。あの人は出かけるとき必ず自転車に乗っていくのでたぶん家の中にいるのだろう。ドアが開いていたので中に入り呼んでみた。「志保おばさーん」「志保おばさーん」何回呼んでも返事がないので不審に思い狭い廊下をゆっくりと進み、リビングを覗き込んだ。予想外の光景。 そこにはナイフを胸に突き刺されて倒れている志保おばさんとその横に立っている指名手配中の連続強盗殺人犯がいた。
「そこで何やっているの」ミカは問いかけた。
「このおばさんを眺めてる」殺人犯は当然のように言った。
茶髪に40代とは思えない童顔。テレビで脳にこびりつくほど見た顔。
「あなたが殺したの? 」 「そうだ」ミカはそれを聞いた途端に全身が熱くなり、携帯を取り出した。
通報しようと1を2回押した。続けて0を押そうとしたがその瞬間殺人犯がしゃべりだした。「オレの名前は丸井龍斗、指名手配中の連続強盗殺人犯だ。知ってるだろ?」 「そんなことどうだっていい」
「まあ待てよ。オレはあんたに交渉を持ちかけたいんだよ」ミカはボタンを押す手を止めた。
「お前はこのことを通報したい。オレはこの場から逃げたい。だったらこうしたらどうだ、オレがこの家でとったものお前にすべて渡す代わりにお前は通報しない。どうだ?お前は金持ちになれるぞ」
ばかげた交渉だと思ったが考えてみた。丸井とかいう男のそばには高級そうな腕時計、サイフ、靴などが大量にあった。志保おばさんってこんなにお金持ちだったんだ。ほかにもイヤリングやネックレスなどのアクセサリーもすこしあった。そして丸井の手に握られているのは、志保おばさんがいつもしていた指輪だったのだ。その指輪を見た途端、ミカの考えはがらりと変わった。
「その指輪もくれるの? 」 「もちろんだ」
何回もやめようと思ったがやはり人間の欲望にはかてなかった。
「その交渉受けるわ。ただし受け取るのはその指輪だけにするわ」それは志保おばさんに対するせめてもの償いだった。
「指輪だけでいいのか?変わった奴だ。 よしっ交渉成立だな。今日からお前はおれの共犯者だ」
「上等よ」その時のミカは指輪のためなら共犯者でもなんでもなってやろうという気持ちだった。
そのあと丸井がどこに行くか聞き、丸井と別れた。丸井はしばらくこの町に滞在するらしい。すぐに警察に通報して「回覧板を届けに来たら志保おばさんが倒れていた」という状況をつくりだした。10分くらいして交番からお巡りさんが駆けつけてきた。そして警察もやってきたので志保おばさんの家の前にはたくさんの野次馬が集まった。数にしてこの小さな田舎町の4分の一くらいの人が集まった。ミカは第一発見者として平野という年配の刑事に話を聞かれたがこんな中学生が殺人を犯すわけがないと高をくくっているようで、すぐにどこかへ行ってしまった。まさかこの少女が殺人鬼の共犯者だなんて思いもせずに。
ミカはその日の夕方、丸井に聞いた居場所に向かった。そして大勢の人波を潜り抜けやっとのことで町はずれの大きな橋の下で丸井と落ち合った。「やあ、あのおばさんの家はどうなった?」 「どうなった?じゃないわよ。こっちは大変だったんだから」 「それはすまない」
丸井の横には食パンと唐揚げが置いてあった。「あら、どうしたのそれ? 」 「この町に1件しかないコンビニで調達してきたんだ。」 「出歩いたりして大丈夫なの? 」 「ご心配どうも。サングラスをかければ結構大丈夫なんだ」 「せっかく私がちょっと食料持ってきたのに」ミカは手に乗せた焼きそばパンを見せた。「おっ気が利くね」 「これからは私が食料持ってきてあげるからもう出歩かないでね。
あんたが捕まったら私も危ないんだから!もう私の心臓がもたないわ」 「はいはい わかりました」
なぜかミカは丸井のことを嫌いになれなかった。捕まらないように守ってやりたいと思うようになったのだ。
「丸井は何でこんな田舎町に来たの? せまいからみつかりやすいのに」
「オレは自由人だからね。行きたいときに行きたいところに行くのさ」
その日ミカと丸井は夜遅くまで語り合った。
夏休み後半の8月20日、例の事件から4日立った日の朝 ミカは丸井の朝食を買いに行こうとしていた。その日は比較的涼しく、お出かけ日和だった。ミカが玄関を出ると志保おばさんの家の前で平野刑事とその部下らしき人物が会話をしていた。ミカはなにか進展があったのかなとその話を盗み聞きした。
「この事件は物をとって殺すという手口から指名手配中の丸井龍斗の線が濃いな」
「丸井を見たという目撃証言も多数ありますしね」 ずばり的中している。
「しかし不可解なのはとられたものが指輪一つだけというところだな。いつもなら金目のものをごっそりと持っていくのに。なにかあったのか」 「きになりますね」
「まあとにかくこの町にいるであろう丸井を全力で捜すぞ!」 「はっ」
まずいことになった。もう丸井が殺したとばれている。警察が総力をあげて捜したら橋の下なんてすぐに見つかってしまう。ミカはこのことを丸井に伝えるため全速力で自転車をこいだ。「急がなきゃ、急がなきゃ、急がなきゃ」朝から全速力で走ったので息が上がりながらも橋に着いた。その川はとても濁っていて魚は生息していない。なので丸井は人が来ない=隠れ場所に最適ということでここを隠れ場所として選んだらしい。そして人が寄り付かない橋の下に足を運んだ。
「丸井!」 そこにはのんきに寝ている丸井がいた。ミカはこんな時に寝ている丸井を見て少し腹が立った。 「なんだミカ」丸井はあくびをしながら起き上った。
「あんた自分の置かれている状況わかってるの?警察はもうあなたがやったって突き止めたのよ!」
「ああ、最近警察の見張りが増えてるから大体やかるさ。もうこの町にはいられない」丸井は遠くを見ながら言った。「いつまで逃げ続ける気?」 「さあ、オレにはやりたいことがあるからな。それができるまでさ。じゃあもう行くわ」ミカはなぜか胸が苦しくなった。
「待って!何でわたしを殺さないの?わたしはあんたのことを知りすぎているのよ。警察に言ってしまうかもしれないのに」 「オレは生活するためにヒトを殺すんだ。人に指図されて殺すんじゃねぇ!」
丸井は歩き出した。ミカはもう2度と会えないかと思うと涙が出てきた。
「・・・・・・」 「わ、私も連れてって」丸井はふりかえっった。
「どうしてだ?」
「もうこの生活に飽きたの。朝起きて、ごはん食べて、勉強して、また寝るっていうワンパターンな暮らしはもう嫌。あんたが現れてからの4日間はドキドキしたけどとっても楽しかった。あなたが強盗犯でも殺人犯でも指名手配犯でもいいの ついていきたいの」丸井はしばらく黙った。その数秒間が永遠に感じられた。そして「奇遇だな。オレもお前に来てほしいと思った。」 「それじゃあ!」ミカは今にも絶叫しそうだった。
「ああ、オレにはお前が必要だ」
そしてわたしは家に戻り少しの食料と服、指輪を持って橋に向かった。
丸井は橋の真ん中にいた。ミカがそばに駆け寄ると「本当にいいのか? 」と念押しをされた。
「いいわ。いつかこんな映画みたいなことしてみたかったもの」「お前は本当に変わってるな」
丸井は初めて笑った。 「じゃあ行くか」
ホリミカは生まれ育った田舎町に別れを告げた。
ホリミカと丸井の奇妙な関係 どうでしたか?僕は推理小説が好きなのですが、その中でも特に最初から犯人がわかっている話や主人公が犯人という作品が大好きです。なので自分の書く話もそういう方向に行ってしまいがちです。でもそれがこの作品の最大の売りというか魅力だと思っています。
自分の未熟な文章を読んでいただきありがとうございます。これからもっと小説を書いて能力を高めたいと思います。
この作品は続編を考えていますのでいずれ投稿したいと思います。
感想をお待ちしています。