エピローグ 〜また、いつか〜
穏やかな、日々は。続いていく。
あの、戦いが——嘘みたいに。おだやかで。あたたかな——毎日。
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庭の、噴水で。
ピピが。ぴしゃ、ぴしゃ、と——水を、跳ねさせて。楽しそうに、遊んで、いた。
本来の、力を——取り戻した、ピピ。今では。大きな姿にも、小さな姿にも。気分の、ままに——自由自在に、なれる、らしい。
大きく、なって。豪快に、水を——操ったかと、思えば。次の瞬間には。ちんまり、小さくなって。水面を、ぴょこぴょこ——跳ね回る。
『みどりー! 見て見てー! こんなに、大きな——水の、玉!』
今は。大きな姿で。頭の上に。きらきらと——巨大な、水の玉を。浮かべて、いた。
「わ、すごい。……でも。ピピ。あんまり、はしゃぐと——」
『きゃっ』
ぱしゃん、と。自分で、作った、水の玉が——弾けて。頭から、水を——かぶる。
「……ふふっ。もう」
大きく、なっても。小さく、なっても。やっぱり——ピピは、ピピ、だった。
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その、傍らで。
フェンが。縁側で——のんびりと。寝そべって、いた。金色の髪を、揺らして。退屈そうに——あくびを、ひとつ。
「フェン。お疲れさま。……はい、これ」
私が。お皿を——差し出すと。
『……お』
その、目が。きらり、と——光った。
稲荷寿司。きつね色に、つやめく——フェンの、大好物。
『……ふん。まあ。もらって、やろう』
言いながら。尻尾を、ぴこぴこ——させているのは。ご愛嬌、だ。
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「……そういえば。フェン」
私は。にやり、と——してしまう。
「この間。イザベラ様が。稲荷寿司の、作り方を——習いに、来てたよ」
『……ほう?』
「『無礼な、風の精霊が。やたら、美味しそうに、食べるから』……だって」
ぴた、と。
稲荷寿司を、頬張る——フェンの、動きが。止まった。
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『……ふん。あの、お嬢ちゃんか』
フェンは。ぷいと——そっぽを、向く。
けれど。その、耳の先が。ほんの少し——赤い、ような。
「ふぅん? 満更でも、ない、感じ?」
『……たわけ。子猫の、考えることなど。知らん』
(……ふふ。どうだか)
飄々として、いるくせに。なんだ、かんだ——憎めない。そんな、フェンだった。
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「——緑。ここにいたのか」
声に、振り向くと。
ユリウスが。庭へと——歩いてくる、ところ、だった。深い、青の瞳が。私を見つけて——やわらかく、細められる。
「ユリウス様」
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彼は。私の、隣に——腰を、下ろした。
しばらく。二人で。ただ——噴水で遊ぶピピや。日向ぼっこする、フェンを。眺めて、いた。
何を、話すでも、なく。ただ——隣に、いる。それだけで。胸の奥が。じんわりと——あたたかい。
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「……なあ、緑」
「はい?」
「これから。……ずっと。こうして。君と、過ごして、いけたら、いいな」
さらり、と。
ユリウスが——そんなことを、言うものだから。
「——っ」
私は。また。顔が——熱く、なる。
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「……っ、もう。急に。そういうこと、言わないで、ください」
「ははっ。ごめん。……でも、本当に、思ったんだ」
ユリウスは。少し、はにかんで。それから——私の、手に。そっと——自分の、手を、重ねた。
あたたかい、手のひら。
(……うん。私も)
私も。ずっと——こうして、いたい。この、あたたかな、日々を。この人と。
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ふと。
空を、見上げると。
時計塔の、方角に。淡い、金色の——光が。きらり、と、瞬いた。
(……あ。精霊王さま)
光の、精霊王。そして——その、隣に、寄り添う。もう一つの、金色の——シルヴィア。
二人は。きっと、今も。あの、時計塔から。この世界を——優しく、見守って、くれている。
(……シルヴィアも。幸せ、そうだな)
私は。そっと——微笑んだ。
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その、夜。
一人に、なった、部屋で。
私は。指に、はめた——指輪を。そっと、見つめた。
銀色に、光る——小さな、指輪。この中に。今も——眠っている。あの、闇の——精霊王が。
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窓の外には。
満天の——星空。そして。二つの——月。
私は。指輪に向かって。そっと——語りかけた。
「……どう?」
くすり、と。笑って。
「人間って。……結構。面白い、でしょう?」
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その、瞬間。
指輪が。
ことり、と——鈍く。光った。
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(……ふふ)
まだ、眠りの——途中、だろうか。それとも。ちゃんと——見て、くれて、いるのだろうか。
どちらでも——いい。
私は。これからも。この、世界で。
たくさんの——物語を。紡いで、いく。
あなたが。いつか、目を覚まして。「いちばん、いい席」で——その続きを、見てくれる。その日まで。
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「……おやすみなさい」
窓辺に、頬杖を、ついて。
私は。星空に——そっと、呟いた。
長い、長い——物語の、その先で。
池崎緑の、あたらしい——日々は。今日も。あたたかく、更けて、いく。
二つの月が。やさしく——私を、照らして、いた。




