エピローグ 〜あたらしい家族〜
あれから。少しだけ——時間が、経った。
正直——ここまで、来るのには。色々と、大変なことが、あった。
城の、後始末。国の、立て直し。闇に、蝕まれていた、人々の——心の、ケア。一つひとつ、片づけていくのは。決して——楽じゃ、なかった。
でも。
季節は、巡って。気づけば——窓の外には。やわらかな、陽射しが、満ちて、いる。
穏やかな、日々が。少しずつ——戻って、きていた。
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「みなさーん! 家族会議、ですわよ〜!」
ある日。
フレデリカお姉様の、よく通る声が。屋敷じゅうに——響き渡った。
(……家族、会議?)
なんだろう、と。私が、首をかしげている、うちに。お姉様は、てきぱきと——家族を、招集して、しまった。
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居間に。
集められたのは——お父様、コンラート。継母の、ローザさん。そして——私。
部屋の、隅には。エマも。控えめに——控えて、いた。
(……これは)
なんとなく。お姉様が——何を、しようとしているのか。察しが、ついた。
そう。お父様と、ローザさん——それに、エマも。まだ。知らない。私が。本当は——シルヴィアじゃ、ないことを。
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「お父様。ローザ様。実は——大切な、お話が、ありますの」
お姉様が。すっと——背筋を、伸ばす。
それから。私の、背中を——ぽん、と、押した。
「さあ、緑。あなたの口から」
(……お、お姉様!?)
いきなり、振られて。私は——あわあわ、する。
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でも——逃げる、わけには。いかない。
私は。意を決して——口を、開いた。
「……お父様。ローザさん。驚かせて、しまうかも、しれませんが……聞いて、ください」
そして。私は——打ち明けた。
私が、本当は。シルヴィアじゃ、ないこと。遠い、別の世界から——この身体に、来たこと。本当のシルヴィアは。もう——精霊に、なって。旅立った、こと。
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居間に。
しん、と——静寂が、落ちた。
お父様は。じっと——黙ったまま。何かを、噛みしめる、ように。目を、閉じて、いた。
(……やっぱり。受け入れられない、よね)
それは——そうだ。愛する、実の娘が。もう——いない。代わりに、いるのは。見ず知らずの——別人。そんなこと。すぐに、飲み込めるはずが——。
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「……シルヴィア」
お父様が。ぽつり、と——口を、開いた。
「すまない」
「……え?」
「私は——父親、でありながら。お前の——いや。シルヴィアの。あの子の、異変に。何一つ——気づいて、やれなかった」
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お父様の、声が。深く——沈む。
「あの子が。たった一人で。あんなにも、重いものを、抱えて。逝った、ことも。お前が——別の世界から、来て。たった一人で、必死に、戦って、いたことも。私は——何も。何も、知らずに」
その、大きな手が。膝の上で——固く、握られて、いた。
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でも。
お父様は。ゆっくりと——顔を、上げて。
まっすぐに——私を、見た。その瞳に。もう——迷いは、なかった。
「だが——これだけは。言わせて、ほしい」
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「あの子が——最後に。選んで、託した、相手が。お前で——よかった」
「……っ」
「シルヴィアは。もう——いない。それは。とても、哀しいことだ。……だが」
お父様の、口元が。ぎこちなく——けれど、確かに。ゆるんだ。
「新しい、娘が。もう一人——増えた。そう、思うことに、するよ。……それで、いいか? 緑」
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(……お父様)
胸が——いっぱいに、なった。
ぎこちない。不器用な——歩み寄り。でも。それは。私を——「緑」として。一人の人間として。受け入れて、くれた、証だった。
「……はい。はいっ……!」
涙が。こぼれない、ように。私は——必死に、頷いた。
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「あらあら」
その、横で。
ローザさんが。のんびりと——口を、開いた。
「じゃあ。シルヴィアちゃんは——金色に、なったんですって?」
「……え? あ、はい。精霊に、なって……今は、金色の、光を」
「まあ、まあ。それは——綺麗、でしょうねえ」
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ローザさんは。ほわほわと——微笑んで。それから。私を、見て——首を、かしげた。
「でも。あなたは——銀色、だけれど。緑ちゃん、よね?」
「……はい。緑、です」
「ふふ。そう。……ややこしいけれど。まあ、いいわ。緑ちゃんも、シルヴィアちゃんも。どっちも——可愛い、娘だもの」
(……ローザさん)
この人は。本当に——おおらかで。あったかい。難しいことは——抜きにして。ただ、まるごと。受け入れて、くれる。
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「ふふん。というわけで!」
お姉様が。得意げに——胸を、張る。
「これで——お父様も、ローザ様も。納得、ですわね! 緑は、我が家の——立派な、一員! いえ——わたくしの、可愛い妹、ですもの!」
(……強引だなぁ)
でも。その、力技のおかげで。重くなりすぎず——あたたかい、空気のまま。話が、まとまって、いった。
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ちなみに。
「あ、でも——お父様。ご心配なく」
お姉様が。にっこりと——付け加える。
「シルヴィアにも。いつでも——会えますわよ。なんなら——今度。婚約者を、連れて、くるかも、しれませんし!」
「……こ、婚約者!?」
お父様の。目が——点に、なる。
『お、お姉様!? だから、まだ——そういうのじゃ……っ!』
金色の光の中で。シルヴィアが——真っ赤に、なって、いるのが。私には——見えた。
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そんな、賑やかな、中。
部屋の隅に、控えていた——エマが。きらきらした、目で。一歩、前に——進み出た。
「あの……! わたしからも、よろしいでしょうか!」
「エマ?」
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「お話は——伺いました。緑お嬢様が、本当は——別の方だ、ということも」
エマは。胸の前で、手を——ぎゅっと、握って。
「でも——わたし。これからも。お仕えします! 銀色の、緑お嬢様と——金色の、シルヴィアお嬢様。お二人の——お嬢様に!」
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「……エマ」
なんて——いい子、なんだろう。
正体を、知っても。何も——変わらない。むしろ。お仕えする相手が、二人に増えて——嬉しそう、ですらある。
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「……あら? エマ。それじゃあ——」
お姉様が。むっ、と——頬を、ふくらませた。
「わたくしの——担当は!?」
「えっ。あ……その。フレデリカお嬢様も、もちろん……」
「『も』!? ついで、みたいに!?」
「ち、違います! そういう、意味では——!」
あたふたする、エマと。ぷりぷりする、お姉様。
(……ふふ。にぎやかだなぁ)
こうして、我が家の——あたらしい、かたちが。少しずつ。あたたかく——固まって、いった。




