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男尊女卑の世界で最強の男は、虐げられる女性たちに寄り添いたい  作者: 夜白 -Yohaku-


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壊れかけのライザ

「…………なるほど、とは素直に受け入れがたい内容ですね」


淡い紫の髪をした一人の女性が、困惑した表情でクイッとメガネを押し上げた。

黒いスーツに身を包み、見るからに真面目そうな彼女は、何とか相手の言う事を理解しようと努めている。

そんな彼女の向かい側には、こちらも同じように困った顔をした黒銀の騎士団3番隊隊長のレイラが座っていた。


「……でしょ。でも本当なの」


溜め息とともにそう呟いたレイラは、気持ちを落ち着けるためテーブルに用意された紅茶に手を伸ばす。

意図したわけではないだろうが、フルーティーな香りと程よい渋みが鼻腔を抜けていき、出されていた紅茶がダージリンティーだということが分かった。

確かダージリンにはストレス軽減効果があったはずだ。


(もう一杯もらおうかしら……)


遠征終わりだが、肉体的な疲労より精神的な疲労の方が大きい様子のレイラは、もう一口紅茶を口に含むと小さく溜め息を吐いた。

そんな彼女は現在、黒銀の騎士団が拠点にしているロベルタのギルドにいる。

魔獣化したジャイアントベアをジンが倒した後、散り散りに逃げてしまっていた馬を探し出した彼女たちは、なんとかその日の内にロベルタに戻ることが出来た。

そして、Aランクの魔獣が出現したという緊急度の高い情報を報告するため、レイラと数名の隊員が休むことなくすぐにギルドへ伝えに来たということだ。

事が事なので受付カウンターではなく応接室を用意してもらい、ギルド長不在ということで変わりに副ギルド長のライザに事の次第を伝えたところ、冒頭の反応である。


「……ちなみにその男性様はどちらに?」

「今は下でロベルタに拠点を移すための戸籍登録をしていらっしゃるわ。ついでに冒険者登録もすると言っていたわね」

「ぼ、冒険者登録……?男性様が?」

「ええ」

「……」


わざわざ危険な職業である冒険者になりたがる男性などいない。

メリットがないからだ。

実際に、数多(あまた)の冒険者登録をしてきたであろうライザも、今の話を聞いて普段の無表情を面白いくらいに崩して呆然としている。

そしてこれが普通の反応なのだ。

しかし、先の遠征で多少ジンへの耐性ができたレイラは、もうそんなことでは驚かない人間へ成長していた。

人間の適応能力は思いの外高いらしい。

今レイラが抱いている心配は、『どうせギルドの女性職員に敬語を使って狼狽えさせてるんだろうな……』とかその程度のこと。

もちろんそうなることが予想できたので、ある程度耐性ができたであろうモネを付かせ、ジンの……というよりは、ジンの振る舞いによって混乱するであろう周りへのフォローを丸投げしている。

なぜなら今のレイラには、そんな些細なことを気にしている余裕などないからだ。

もっと重大で、下手したら世間の常識が覆されるほどの事実をライザに伝えなければいけない。

キリキリと痛む胃を(さす)りながら満を持して口を開こうとしたレイラ。

しかしそれより先に立ち直ったらしいライザが、気疲れを滲ませた顔で一旦話を終わらせようとした。


「取り敢えず、討伐済みという魔獣の死体を確認しないことには始まりませんね。すぐに職員を森へ派遣いたしますので、少しお時間頂けますか?」

「あ、いや……それなんだけど……」

「……?なんでしょう?」

「あー、その……魔獣の死体、ジン様がお持ちなの」

「……………………ジンサマガオモチナノ?」


レイラの言葉が理解できずに、謎の呪文を唱えてしまうライザ。

そんな彼女の気持ちが痛いほど分かるレイラは『そうよね、そうなるわよね』と何度も頷く。

ライザの反応を見て、自分がおかしいわけではないと確認でき安心でもしたのかもしれない。

しかし事実は覆せない。

レイラはライザを気遣う様子を見せながらも、再度ゆっくりと同じ言葉を伝えた。


「魔獣の死体を、今、ジン様が持っているの。……言っておくけど冗談ではないわ」

「……」

「しかも、細かく切り分けてはいたけど、素材だけじゃなくて、魔獣の肉も収納してたわ。……美味しいんですって」

「……マジュウ……シュウノウ……オイシイ……」

「…………ライザ戻ってきなさい」


話の内容が異次元すぎてキャパオーバーを起こしているライザ。

そんな彼女は何とか現実世界に戻ってきはしたが、ジャイアントベアが2倍以上に巨大化した魔獣の死体を、どうやって持って帰ってきたのかまでは理解できない。

亜空間収納持ちだとしても、食糧や医療道具など遠征に必要なものを入れるのが精一杯なはずだ。

そう考えたライザが怖いもの見たさでレイラに詳細を尋ねようとした、その時だった。

軽やかなノックの音が応接室に響いた。

続けて、ドアの向こうから戸惑いと不安を滲ませたギルド職員の声が聞こえてくる。


「ライザさん、ちょっと今いいでしょうか……」

「……?どうぞ」


何があったのかと不審がるライザは、これ以上問題を持ち込まないでくれと願いつつ女性職員を部屋に入れた。

が、そんなライザの願いは、部下の報告を前に早々に打ち砕かれることになる。


「あ、あの、今、ジン様と言う男性様が、ぼ、冒険者登録をしたいと……冒険者登録をしたいとおっしゃられまして……!!」

「……はい」


半ばパニック状態になっているギルド職員は、大事なことを2回繰り返しつつ少し上ずった声でライザに報告する。


「何か問題……はたくさんあると思いますが。どうしました?男性様が冒険者になるための条件を満たせなかったのですか?」

「い、いえ!魔力適正も水魔法以外の魔力に適応しているという才能に恵まれた方で、特に問題なく……も、問題……なく……いや、私に敬語を使われたのは問題……?い、いえ!と、とにかく登録自体は問題なくさせていただきました。ただ、その後……」

「……その、後……?」


恐る恐ると言うように聞き返すライザ。

レイラも緊張の面持ちで職員の言葉を待つ。

そんな2人に見守られながらその女性職員は、重々しく口を開いた。


「ジン様が手持ちの素材を換金をしたいと仰られましたので、換金するものをお出しいただいたところ……あの……亜空間収納からSランクの魔物の死体が次々と出てきまして……」

「……アクウカン……エスランク……ツギツギ……」

「そ、それで!一応いくらになるか計算したところ……おそらく黒鋼貨5枚ほどになるかと……」

「…………コクコウカ……ゴマイ……」

「ら、ライザさん!お気を確かに……!!」


壊れかけのライザと化してしまった彼女は、光を失った瞳で宙の一点を見つめ、言われた言葉を復唱することしかできない。

ちなみに女性職員の口から発された『黒鋼貨』はこの世界で1番価値が高い通貨で、日本円にして1枚約1億円ほどの価値を持つ。

日本よりも物価が安いこの世界での黒鋼貨5枚は、小さめの城くらい買えるんじゃないかと言うほど相当な大金なのである。

そんな大きなお金をギルド長に代わって自分が動かさなければいけないと言うプレッシャーで、ライザは誤魔化せないほどの胃痛と若干の吐き気を感じた。

が、現実逃避をしていても何も変わらない。

むしろ、今下で待たせているであろうジンの怒りを買わないためにも、迅速に対応しなければいけない。

副ギルド長としての責任感だけを原動力に、ライザは速やかに職員へ言葉を返す。


「…………ジン様と直接話すことにします。あなたは経理担当に話して、黒鋼貨5枚を用意しておいて下さい」

「は、はい!かしこまりました」

「……レイラさんすいません。ちょっと席を外しますね」

「……ええ、頑張って」


同情を滲ませたレイラの言葉を受け、深く深く溜め息をついたライザは重い腰を上げる。

が、あることに気づきバッと顔を上げたライザは、部屋を去ろうとしていた女性職員を呼び止めた。

そんなライザのこめかみからツーっと冷や汗が垂れて行く。


「あの……さっきSランクの魔物の死体が出てきたと言いましたよね?」

「は、はい!5体分鑑定いたしました!」

「…………その中にAランクの魔獣の死体はありましたか?」


嫌な予感……どころではなく、たぶんそうなんだろうなと言う諦めを抱きつつ質問をするライザ。

それに対する職員の返答はもちろん……。


「魔獣?魔獣ですか?……Aランクの魔獣。それはございませんでしたが……」


それを聞いた瞬間ライザの瞳から光が消え、彼女は天を仰ぎ、思考を放棄したオブジェと化した。

ジンが査定に魔獣の死体を出していないということは、支払金額に黒鋼貨が2枚ほど追加されることになる。

Aランクの魔獣など滅多に現れない代物なので、下手したらもっと跳ね上がるかもしれない。


「ライザ……心中お察しするわ。でもそろそろジン様の元へ行きましょう」


黙って見守っていたレイラが、そっとライザの肩を抱き優しく言葉をかける。

そんなレイラの行動に、普段は副ギルド長として気を張っているライザも年相応の顔を見せてしまう。

立場もあり大人びた振る舞いをしているライザだが、まだ彼女は22歳と若い。

これだけのイレギュラーを前に、キャパオーバーを起こしてしまっても仕方ないだろう。

それをレイラも分かっているから、『レイラさんも一緒に来てくれませんか』と甘えてくるライザに苦笑しながらも『もちろんよ』と言葉を返した。

一人ではないと勇気づけられたライザは、何とか副ギルド長としての威厳を取り戻し、レイラと共に急いで1階の受付に向かう。

時間としてジンを待たせた時間は5分ほどだが、男性を待たせたことに変わりはない。

そんなライザは、まだジンという人間に会ったことがないため、どんな言葉をぶつけられるのかと少し緊張した表情を見せている。

が、隣に並んでいるレイラは『これくらいじゃあの方は怒らないと思うけど……』と思いながら複雑な表情。

この短期間でジンと言う規格外の人間を理解してしまっている自分に、不安を感じているのだろう。

もちろんレイラの予想通り、2人がジンの姿を捉えた時、彼はモネと楽しそうに談笑していた。

モネの方もだいぶジンの対応に慣れたようで、緊張はしているが、きちんとジンの目を見て会話ができている。


「ジン様、お待たせして大変申し訳ございません」


ジンが怒っていないことに安堵したライザは、多少緊張を緩めてジンの前に立ち、深く頭を下げた。

そんな彼女を見て慌てたジンは、『全然待っていませんよ。頭を上げてください』なんて言いながら自分も軽く頭を下げる。

事前に話を聞いていたおかげで、ジンの異次元さを実際に体験しても、若干顔を引き攣らせるだけで済んだライザ。

そんな彼女は微笑みを浮かべジンとの会話に臨む。


「寛大なお心ありがとうございます。私、ロベルタ支部の副ギルド長を任されております。ライザと申します」

「ライザさんですね。私はジンと申します。先程試験を受けまして冒険者となりました」

「丁寧なご挨拶痛み入ります。冒険者試験合格、おめでとうございます。今後はギルドが総力を上げサポートさせていただきます」

「どうも、よろしくお願い致します」


先程は現実逃避を繰り返していたライザだが、覚悟を決めた彼女は頼もしい。

つつがなく挨拶を済ませ、その流れでジンを応接室に案内すると、スムーズに本題に向かって会話を進めていく。

流石22歳という若さで副ギルド長を任されているだけある。

メンタルはやや弱いが、やればできる子なのだ。

そんなライザは、ジンの体調や怪我の有無を確認し、出した紅茶の銘柄を簡単に説明しその場を和ませると、少し緊張した声で本題に入った。


「先程部下から換金のご依頼をいただいたと聞いております。査定の結果、黒鋼貨で5枚ほどになるとのことでした」

「……それは、結構な額になったんですね。あのモブたちが……」

「はい、どれも状態が良く高値で取引が可能なものだったと聞いております」


ジンの呟きを笑顔で聞き流したライザは、先程の女性職員に代金と支払完了証明書をテーブルに置くよう命じる。

すぐに1枚の紙と、重厚感のある革製のマットの上に鈍く光る5枚の黒い硬貨が並べられた。


「内容ご確認の上こちらのサインをお願いいたします」

「分かりました。……ではこれで」

「ありがとうございます。どうぞこちらお納めください」


ライザに促されジンが報酬を手に取る。

彼がそれを亜空間に収納するのを待ってからライザは再度口を開いた。

世間話をするような軽い口調だったが、重すぎる内容を少しでもマイルドにしたいというただのライザの悪足掻きだ。


「そう言えばレイラさんからお聞きしたのですが、Aランクの魔獣を倒されたとか……」

「ああ、そうなんです。騎士団の方々と一緒に。魔獣の死体はどうしましょうか?」


飄々とした表情でレイラに問いかけるジンだが、彼の言葉は少し事実とは異なる。

騎士団が倒したのは変異したジャイアントベアのみで、魔獣討伐はジン1人の手によって行われたものだからだ。


「恐れながら申し上げます。我々騎士団は魔獣討伐には一切関与しておりません。従って、魔獣の死体はジン様のご判断に委ねさせていただきたく存じます」

「あれ、でも……クエストを受けていらっしゃったのは騎士団の方たちなので……。あ、ジャイアントベアの討伐分として報酬が出るんでしょうか?」

「いえ、それに関しては残念ながら討伐完了部位の提出が出来ないため不可能なようです。ですが、予め掲示されていたクエスト内容と実際の内容が異なったということで、違約金を頂けるとのことです」

「そうですか……。私としては、騎士団の皆さんにお世話になったので、魔獣換金分をお渡ししたいのですが……」


自分が獲物を横取りしてしまったことを気にしている様子のジンは、恐る恐るというようにレイラに提案をする。

それを聞いたレイラは、『あれだけのことを成し遂げておいて、なんでこの人はこんなに謙虚なんだろう』と内心驚きながらも笑みを浮かべた。


「お心遣いありがとうございます。しかしながら、我々騎士団にも誇りがございます。倒すべき敵を前に太刀打ちできず、ジン様に守っていただき、さらにその上報酬まで頂くというのは……。我々黒銀の騎士団の矜持に反する行いです」

「……そうですか。分かりました。そう言う事でしたらこちらで受け取らせていただきますね」

「はい。この度は危険な目に遭わせてしまい申し訳ございませんでした。また、命を助けていただき心から感謝申し上げます」


ソファから立ち上がり、部下のモネとともに頭を下げるレイラ。

それを受けるジンは、少し困った表情をしつつも笑顔で。

一時はどうなることかと思ったが、全て丸く収まったようだ。


「それではこの度は魔物並びに魔獣討伐にご協力頂きありがとうございました」


やることを全てやり切り、気持ち艷やかな肌をしたライザがその場にいる者に頭を下げる。

ジンが持っている魔獣の死体は亜空間に収納している限り劣化しないので、少し換金時期をずらすということで話がついた。

金額が金額なので考えなく一気に動かしてしまうと、国の経済に影響が出るのだろう。

そうして皆が帰り支度をしている最中、レイラがジンに話しかけた。


「そう言えばジン様はどちらにお泊まりですか?もしまだ決まっていないということでしたら私の方で手配いたしますが」

「あ、本当ですか?それは助かります。値段は気にしなくて大丈夫なので少し広めの部屋がある所がいいのですが」

「かしこまりました。ジン様は我々の恩人となる方ですので、ささやかで申し訳ございませんが、3日程度のお支払いを済ませておきます。……モネ」


ジンの要望を把握したレイラは、街で一番広い高級宿屋の部屋を確保してくるようモネに頼もうとした。

が、慌てた様子のジンがそれを遮る。


「お金はこちらで持ちます。宿さえ案内していただければ大丈夫ですので……」

「お気になさらないでください。我々の感謝の気持として受け取っていただけますと幸いです」


朗らかな笑顔を浮かべそう言ったレイラ。

だが、ジンが放った次の言葉でその笑顔が凍った。


「……ですが。モネさんから伺いましたが、騎士団は運営費を自分たちで賄っているため資金不足だとか……」

「……。………………モネ?」


笑顔でモネを見つめるレイラの背後に般若が見える。

一方のモネも、まさかこんな流れになるなんて思ってもおらず、冷や汗を垂れ流しながら体を固くすることしかできない。

ジンと2人でいる時に何とか会話のネタを探さないとと、思いついたことを片っ端から話していたのが仇になったようだ。

すると、不穏な雰囲気で顔を合わせている2人の横で何やら考え事をしていたジンが、突然ポンと手を打った。


「……そうか。私が騎士団の宿舎にお邪魔することは出来ませんか?」

「「………………え?」」


ジンからのまさかの提案に、レイラとモネが仲良く声を揃える。

それもそのはず。

黒銀の騎士団は団員全員が女性。

体目的でもない限り、見下しているはずの女という生き物に囲まれて暮らしたいなどという男がいるはずがない。

だからこそ、常人であれば絶対に有り得ない選択肢を提示したというのに、ジンは良い案を思いついたと機嫌良さげ。


「宿舎の一室を貸していただければ、宿泊代として騎士団の皆さんにお金を払えますよね。そうすれば私は寝床が見つかるし、騎士団の皆さんは新たな資金源ができる……どうですか?」


にこやかに伝えられた提案にレイラは顔を引き攣らせた。

彼女としては男という危険因子を騎士団本部に持ち込むのはできれば避けたかった。

が、この世界は男尊女卑の世界。

男性からの提案を女性が重大な理由もなく断ることなど出来ない。

しかしレイラは、自分に分の悪い状況であることは把握しつつも、最後の足掻きとして笑顔でジンに言葉を放つ。


「と、とても有り難い提案でございますが、大きい部屋をお望みとのことでしたので、残念ながら我が宿舎にジン様が快適に過ごせそうな部屋の空きがなく……」

「あ!!レイラさんのお部屋はどうですか?隊長なので部屋は大きいですし、レイラさん今、2人部屋をおひとりで使われてっぐむ……!!」


敵が身近に潜んでいたようだ。

一切悪意のない満面の笑顔でレイラを追撃したのはまさかのモネ。

嬉々として話していたモネの顔面を咄嗟にぐわしと掴んだレイラは、綺麗な笑顔を浮かべたまま『ジン様少々お待ちいただけます?』と軽やかに言い放つ。

そのままモネを引きずって部屋の隅まで持って行った。

そして至近距離で顔を突き合わせると、美しい笑顔を浮かべたままジンに聞こえないよう押し殺した声で圧をかける。


「ねえモネ。あなたは天真爛漫でとても可愛らしいと思うけど……もう少し空気を読めるようになった方がいいわ」

「……っっっ!!」


ようやく自分の過ちに気づいたモネは、脳震盪でも起こしそうなくらい必死で首を縦に振る。

それを見て、モネが十分反省したと分かったレイラは、深く溜め息を吐く。

ジンと話の続きをしようと後ろを振り向いた。そこには……。



——期待に満ちた表情でレイラを見つめる男性様がいた。



その男性様は、キラキラとした満面の笑みでレイラに言った。


「もしご迷惑でなければ、お部屋ご一緒させて頂いてもいいですか?」


悪気など一切ない、純粋な喜びで溢れたその言葉を受けたレイラは、一拍の間を空け、笑顔を浮かべた顔をコテッと可愛らしく傾けた。


「もちろんでございます!」


そうしてレイラのストレスフルな生活が幕を開けたのだった。

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