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【第2話】 確率変動システム


 放課後。図書室に入ると、窓際の学習机の前に不破(ふわ)が立っていた。不破の眼鏡のレンズは、夕焼けを眩く反射している。


崎風(さきかぜ)、鍵を閉めろ」


 眩く光る眼鏡のツルを押し上げつつ、不破は言った。俺は指示通りドアの鍵を閉めて、学生鞄を右肩に担ぎながら図書室を見渡した。他には誰も居ない。図書室は静まり返っている。


「不破、どうしたんだよ今日は?」


「崎風の能力について、ちょっと訊きたいことがあってな」


 不破の話を聞き入れながら、俺は窓際の机まで歩み寄った。そこに『次の授業は五分縮まる』と『次の授業は五分長びく』のアミダくじが書かれた紙をパッと放った。


「しかし、ここまでハッキリとした超能力がこの世にあるとはな……」


 不破は神妙な表情で、学習机の上に放られたアミダくじを見つめる。


「まあ、俺も毎日驚いてるよ。アミダくじの結果が現実になるんだからな」


 そう、俺にはアミダくじの結果を現実のものとする能力があるのだ。


 俺がアミダの能力に目覚めたのは、今から三週間くらい前。高校に入学した日のことだった。その時から俺はアミダの能力の解析に没頭していた。


『応用』や『発展』を要する勉学の日々を小さな頃から送ってきたお陰もあって、僅かな期間で能力の詳細を見出すことに成功。そして今の『予言』に至っている。


 無論、アミダの能力のことを知っているのは不破だけで、他のみんなには『予言』のことはタネがあるとごまかしている。


「アミダの能力……。この世界にも、まだまだ不思議なことがあるんだな……」


 呟くと、不破は学習机の椅子に腰を掛けた。そして不破は難しい表情で眼鏡を中指で押し上げた。


「崎風。アミダの能力を発揮するためのルールとかあったりするか?」


「ズルをしないこと。あと、明確なアタリとハズレを一つずつ設定した二本線のアミダくじでないとダメなことぐらいだな。その二つさえ守れば、引いた方の効果を必ず得られるようだ」


 不破は何度も頷くことで、納得した様子を見せた。


「アタリとハズレを一つずつ設定した二本線のアミダくじでも、俺の場合はアタリを五割の確率で引けるわけではないんだ」


「……崎風、それは一体どういうことだ?」


 ここで、俺は不破の向かい側の席に座った。


「俺のアミダくじには、設定したアタリとハズレのレベルの低い方がより高く当選されるという確率変動システムが作動するようなんだ」


「確率変動システム……。ちょっと解りにくいな……。具体的に例を挙げてくれないか?」


 そうだなー、と俺は頭を整理して、


「例えば今日のような、『授業が五分縮まる』のアタリと、『授業が五分長引く』のハズレを設定したアミダくじのケース。このアミダくじでは、アタリとハズレのレベルが一緒だというのは解るだろ?」


「ああ」


「つまりこの場合、確率変動システムが作動しても、アタリとハズレのレベルは同じだから、どちらも五割の確率で当選するということ」


 でも、と俺は繋げる。


「『授業が十分縮まる』のアタリと、『授業が五分長引く』のハズレを設定した場合だと、アタリの『授業が十分縮まる』の方が、レベルが高いだろ?」


「……まあ、そうだな」


「その場合だと、レベルの低い方の『授業が五分長引く』のハズレを引く確率の方が高くなるというわけだ」


「なるほど……」


「そしてこの確率変動システムには、設定したアタリとハズレのレベルの差が広ければ広いほど、その差に応じて低いレベルの方を高確率で当選するという特徴があるんだ。極端な例を挙げると……『授業が三十分長引く』のハズレと、『授業が五分縮まる』のアタリを設定した場合、不破はどうなると思う?」


「レベルが低い方が高確率で当選されるから、『授業が五分縮まる』のアタリを高確率で引く……ということで合ってるか?」


「ああ、正解だ。その場合だと、おそらく九割以上の確率でアタリを引けるだろう」


 ハズレのレベルを上げるだけでなく、アタリのレベルを下げることによって、ハズレとのレベル差を広げ、アタリを引く可能性を高めることもできる。


 先ほど挙げた例で説明すると、『授業が三十分長引く』という高レベルのハズレを設定するだけでなく、『授業が二分縮まる』という低レベルのアタリを設定すれば、より高い確率でアタリを引くことができるのだ。


 アタリに限定条件を付け加えることで、アタリのレベルを下げることも可能である。


 例えば『授業が二分縮まる』というアタリの最後に、『尚、このようなアタリの効果は一ヶ月に一度しか得ることができない』と加えれば、限定的になったことによってアタリのレベルは下がるのだ。

 無論そのアタリを引いてから一ヶ月の間は『授業が二分縮まる』というアタリを引いても効果は得られない。


 最後に一つ。ハズレに『何も起きない』を設定することも可能である。その場合だと、ハズレのレベルがゼロに限りなく近いため、どのようなアタリを設定しても、アタリを引く確率は極めて低くなる。


 しかし、先ほどまでに挙げた、アタリのレベルを下げる方法を使って、ハズレとのレベル差を縮めることで、アタリを引く確率を高めることができる。


 それらの説明を、俺は付け足しておいた。


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