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第二部16話目・銀ダン攻略開始!


「うひっ……!?」


「うぐぅ……!?」


「オォー……。これが例のやつアルカ」


 と、初めて銀ダンに入った3人がそれぞれうめいた。


 上級ダンジョン特有の威圧感に、背筋がゾクゾクしているようだな。


「どうだ? モコウあたりは、これでも普通に戦えるんじゃないか?」


 俺が問うてみると、モコウは引きつった笑みを浮かべたまま首を振った。


「アイヤー。動けないことはないけど、エネミーも今まで以上に強いんヤロ? そんなの相手は無理ネ。たぶん逃げるので精一杯ヨ」


 なるほどな。

 それならやはり、少なくとも護符は必須だな。


 俺は、残り少なくなってきた護符のうちの一枚をユミィに手渡し、PPを込めさせる。


 そして使用可能状態になった護符を使用し、パーティー全員を護身状態にした。


「今ので分かったように、ここから先は威圧感対策は必須だ。少なくとも俺たちは、威圧感にさらされたままではまともに探索ができん」


 バケモノ連中のうちの何人かは対策なしで威圧感を克服してるようだが、俺たちには無理だ。


 だから毎回ダンジョンに入り直すたびに護符を使わなくてはならないし、頻繁に出入りを繰り返すとすぐに護符の在庫がなくなってしまう。


「駆け足で最短ルートを進めば今日中に10層のフロアボスを倒して外に出ることはできる。それは、俺とメイベルの2人組でも可能だった。……だが、今回の探索の目的は、踏破済み階層の更新じゃあない」


 それはもう少しこのダンジョンのエネミーどもの強さに慣れてからやればいい。


「今回の探索では、第5層までの浅い階層でひたすらエネミーとの戦闘を繰り返す」


 PP切れギリギリの限界いっぱいまで継続戦闘し、限界が来たら結界キャンプでPPを回復させてまた戦闘を繰り返す。


 これを、エネミーの強さに慣れるまでやって、お前たち自身の練度を高めていくのが今回の探索の目的だ。


 お前ら、何か質問はあるか?


「はい! ここのエネミーって、どれぐらい強いの?」


「一体一体の強さは、銅ダンの後半で出てきた上級獄卒獣たちと同じぐらいだな」


 タイマンで戦うなら、銅ダンラスボスの魔獣監獄長(牛頭で筋骨隆々のバケモノだ)のほうがはるかに強いだろう。


「じゃあ、そんなに強くないんじゃない?」


「問題は、数と密度だ。ここのエネミーは、銅ダン以前までとは比にならないぐらいの勢いで出てくるし、戦っている間に音を聞きつけた別グループが背後からやってきて襲ってきたりする」


 しかも、感知能力が高くなってるからコソコソ隠れて戦闘を回避するのも困難だ。


 初撃はなるべく奇襲して、少ない手数で素早く的確に大ダメージを与えて倒していかないと、戦闘参加エネミーが雪だるま式に増えていって最後は物量で圧殺される。


 それがこの銀ダンだ。


「うへー、やだなぁ……」


 ツバサがげんなりとした表情を浮かべた。

 ユミィがフフンと鼻を鳴らす。


「ま、そういうことならボクに任せときなよ。あの牛頭よりも弱いってんならボクの弾は通るんだろ? 遠くから削ってやるから、そのあと皆で殴りに行けばいいさ」


「ちなみにだが、このあたりまで来るとだいたいどのエネミーにも弱点属性と耐性属性があるし、どいつもこいつも移動速度が速いから属性ののってないユミィの弾だと削りが間に合わんかもしれんぞ」


 少なくとも俺やティナなら、属性矢でクリティカルポイントを狙うことでなんとか怯みを与えられるって感じだ。


 回避行動も多用してくるから遠くからの射撃だと当てきれないことがあるし、そんなのでムキになってバカスカ撃ってたらまた息切れの隙を狙われて落とされるぞ。


「なんだよ面倒臭いな!!」


「面倒臭いさ。だから慣らしていかないとだめだって言ってるんだ」


「アイヤー。ちなみに、連携のために聞くけド、メイベルの戦闘スタイルはどんな感じヨ?」


「それなら、先に私のステータスを見せようか」


 ほら、とメイベルが出したタグプレートを、弟子どもがのぞき込む。


・━・━・━・━・


【名前 メイベル】

【性別 女】

【年齢 22歳】

★★


Key1

【消耗度】

HP・100.00/100%

PP・100.00/100%


【ステータス値】

LV・65(stock=0)

知力・S-(15+120)

心力・S(21+129)

速力・A(28+82)

技力・C-(33+37)

筋力・S-(15+120)

体力・S(21+129)


【装備品枠・16/20】

『マップ(1)』

『レーダーB(2)』

『緊急脱出装置B(3)』

『所持品枠追加20(3)』

『フレキシブルシールド(3)』

『ミドルクラブ(2)』

『ショートボウ(1)』

『煙幕(1)』


【所持品枠・25/40(+20)】

『通信装置(1)』×1

『フレキシブルブレード(3)』×1

『フレキシブルシールド(3)』×1

『フェンスシールド(3)』×1

『ミドルランス(2)』×1

『ファイヤアロー(1)』×1

『コールドアロー(1)』×1

『ポイズンアロー(1)』×1

『サンダーアロー(1)』×1

『こそこそマント(1)』×1

『デコイマフラー(2)』×1

『フックロープ(1)』×1

『ホバーブーツ(2)』×1

『バウンドボード(1)』×1

『暗視ゴーグル(1)』×1

『水中マスクC(1)』×1

『爆弾(1)』×1

『煙幕(1)』×3

『下級修復剤(1)』×4

『中級修復剤(1)』×1


・━・━・━・━・


「……なんか、いっぱい持ってるね?」


「ステータスもまんべんなく育ってるな」


「ター師父みたいなラインナプだネ」


 ああ。コイツの装備コンセプトはソロマスターセットだからな。


 あらゆる場面に単独で対応できるよう、装備品を色々持ち歩いている。


「俺とは違ってメイベルは装備品枠が多くないから、絶対に外せないもの以外は所持品枠と装備品枠を入れ替えて対応するわけだ」


 まぁ、所持品枠を擬似的な装備品枠として扱うのは上にいるやつならよくやることだが、コイツの場合はそれが極まってるってとこだな。


「装備を見てもらえば分かるように、私は近接寄りの中衛だ。短弓の矢が届くぐらいの少し下りめの立ち位置から援護射撃をしつつ、必要があれば突撃して棍棒で殴ることもする」


「試しに俺と2人で組んだ時は俺が前衛をしたが、ここだと背後からの強襲も多くてな。そういう時はメイベルが前衛をしつつ俺が矢を射掛けたりもしたし、どちらが前でも問題なく動けた」


 それに、索敵や警戒は俺と変わらんレベルでやれる。

 つまり、探索者としての総合的な練度はお前たちより高いってことだ。


 だから、急造パーティーにはなるが、俺はさほど連携は心配していない。


「そういうわけだ。あらためて、よろしく頼む」


 メイベル(ティナ)が頭を下げる。


「はーい! よろしくねメイベルさん!」


「ボクはまだちょっと思うところはあるけど……、まぁ、先日のアレでチャラにするって話だし……、うん、こちらこそよろしく」


「ワタシたちある意味()()みたいなものヨ。仲良くするネ」


 つーことで、入口すぐの空間でのおしゃべりもこのあたりにして、ぼちぼち進んでいくか。


「ツバサとモコウはいつも通り前衛で、ユミィは後衛。ただし、ユミィはいつもより少し前寄りにいろ」


 背後からの急襲が怖いからな。

 ここのレベル帯は、ユミィだとマジで一撃死しかねん。


「代わりにメイベルは後衛寄りの中衛としてユミィのカバーにいつでも入れるようにしてろ。素早さのある俺が中衛をして、前後どちらでも対応できるようにする」


 基本的には、どれだけたくさんエネミーが来ても、一体ずつ相手にしろ。

 ユミィの射撃はけん制でエネミー同士を引き離すために活用する。


 孤立した奴からダメージを集中させて、各個撃破するわけだ。


 逆にツバサやモコウは引き込まれ過ぎて各個撃破のマトにならないように気をつけろよ。

 ヤバそうなら俺が早めにカバーに入るが、間に合わんときもあるだろうからな。


 それと、ある程度まとめて倒せて戦闘の間が空いたときは、修復剤も早めに使っていく。


 細かいキズを残したまま連戦するのは避けたいから、ユミィは後ろで前の連中の被弾率をよく見とけよ。


 いざという時は、全開射撃で弾幕を張れ。それに合わせて俺も煙幕をたくから、素早く離脱してカンテラを使うぞ。


 他にも色々言いたいことはあるが、これ以上はツバサの貧弱な脳ミソに入りからんから、また追々説明する。


 さぁ、どんどん戦ってくぞ。


「はーい! がんばるぞー!」


 ツバサが元気よく手を上げた。

 俺たちは、周囲を警戒しながらゆっくりと銀ダン内を進み始めたのだった。




 なお。


「そういえば、ツバサはどこでアスカさんと知り合ったんだ?」


 アスカさんとは、パーティーハウスの家事担当として新たに雇った俺の知り合いの女性のことだ。ちなみにもう1人の名前はカリナさん。


 2人とも探索者ではなく、アカシアの街中で働く一般人女性なのだが、


 なんか、アスカさんのほうがツバサと面識があるっぽかったんだよな。なんでだ?


「それはねー。昔、タッキーに弟子入りしたばっかりの頃に、たくさんお買い物してたいへんそうだったアスカさんの荷物を持つのを手伝ったことがあるんだー」


 ふむ。まぁ、そういうこともあるか。


「それよりボクは、タキ兄ぃがどういうツテであの人たちと知り合ったのかが気になるけど」


「そうネー。アスカもカリナも、超美人だたヨ」


「ああ、まぁな」


 俺は、今回の件で新たに家政婦として雇った2人の女性、アスカさんとカリナさんの顔を思い浮かべながら話す。


 アスカさんもカリナさんも、美人でスタイル抜群の大人のお姉さん(年齢は知らないが、たぶん歳上)だ。

 アスカさんは陽気でふわふわした感じの人で、カリナさんは真面目でクールな感じの人だ。


「あの2人は、色々お世話になったことがある人たちなんだよ。お互いにな」


 俺の説明にユミィとモコウが疑念まみれの目を向けてくる。


 だが、そんな目を向けられても俺の説明は変わらん。


「おい、さっそく来たぞ。右前方に赤巨人(レッドタイラント)3体だ」


「めちゃくちゃおっきいじゃん! うわーっ、フレイルに持ち替えなきゃ!」


 そうしていると、ツバサとメイベル(ティナ)がエネミーを発見し、とりあえず戦闘開始となった。


 そしてそこからタイラントとの怒涛の15連戦が幕を開け、終わった頃には弟子どもは慌ただしさに目を回していたのだった。


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