第二部15話目・計画を練り直す
◇◇◇
俺がバカ弟子たちとヤっちまった日から数日たったある日。
俺はパーティーハウス内の人間を全員集めて話をした。
「なんと!! 皆さんとうとうヤっちまったんですね!! ふぅー! めでてぇですわ〜!!」
まず、俺の話を聞いたクソボケポンコツ娘がバカでかい声で叫んだ。
3人娘どもが揃って照れたようにうつむき、姉貴が呆れたようにため息をつく。
「おいおいおい、セリー。君というやつは……」
しゃーねーだろ。
そうしないと収まりがつかなかったんだからよ。
「だからってなァ……」
それより姉貴、ちょっとお願いがあるんだが。
「そこのポンコツを白ダン黒ダン巡りで3か月ほど預かってくれないか。姉貴とモルモさんがいれば、白黒までなら問題ないと思うからさ」
姉貴は、露骨に嫌そうな顔をした。
「……セリー、それ、本気で言ってるのかい??」
まぁ、姉貴はうるさい奴が嫌いだし、毎朝爆裂的大声で「ステラさん!! おはようございますですわ!!!」とか言われて叩き起こされているので、なおのことラナのことが苦手なんだろうけど。
だが、そんなことはこっちだって百も承知だ。
それを踏まえたうえでなお、姉貴にお願いしている。
「あたりめーだろ。……なぁ、頼むよステラ姉ちゃん。俺とかコイツらを助かると思って、引き受けてくれよ」
別に、危険なところに連れて行けって言ってるわけじゃないんだ。
ただ、白ダンと黒ダンに出てくるエネミー全てを、ソロで問題なく倒せるようになるまで見守って、導いてやってくれって言ってるだけだ。
「ぐっ……。卑怯だぞセリー、そんな風に言われたら、お姉ちゃんは断れないじゃないか…….」
ガックリと項垂れるようにして、姉貴が渋々頷いた。
それを見たモルモさんも「私もラナさんを見守ることに異論はありませんが」と言ったうえで、
「ただ、私も探索に復帰するとなると、この家の管理や家事に支障が出るかもしれません。日中はシオンさんお一人になってしまいますし」
と、懸念点を指摘してきた。
なので俺は、その点の解決策について答える。
「その点に関しては、臨時で人を雇いました。ハウスの守衛役に関してはカマーンさんを。家事担当については、俺の知り合いの女性2人を」
合計3人を、明日から最短1か月間、最大3か月間の契約で雇っている。
またこの話し合いの後で連れて来るようにするが、契約期間中は3人に一室ずつ客間を使ってもらうようにする。
「それでもモルモさんには、毎日ダンジョンから帰宅後にパーティーの会計業務なんかをやっていただくことになるので、どうしても負担をかけることになってしまい、心苦しいのですが……」
「いえいえ。それぐらいであれば人形騎兵時代にもよくやっていましたので、問題ありませんよ」
と、いうことで、快くポンコツのお守りを引き受けてくれた。ありがたい。
「ラナ。お前はまだまだ練度が低い。姉貴とモルモさんに見てもらいながら、まずは自分自身の強さを高めろ」
心配しなくても、お前はやればできる子だ。
ひとつひとつのことに一生懸命取り組んで、一歩ずつ着実に成長していけ。
「わっかりましたー!! ステラさん、モルモさん、よろしくおねがいしアーっす!!!」
「うるさっ……」
「はい、こちらこそです」
そして俺はさらに、シオンさんに向き直る。
「そしてその間俺たちは、数日単位ごとで潜りながら、銀ダン攻略を進めます。護符一枚を作成するのに、何日ぐらいかかりそうですか」
「そうね……。今は1週間に1枚ぐらいだと思うけど、慣れればもう少し早くなると思うわ」
「分かりました。あと何枚かレシピと一緒に買い取った分がありますので、それほどは急ぎません。確実に1枚ずつ作っていただければ、大丈夫です」
「うん。分かった。……ああ、それと」
シオンさんは、少しだけ顔を赤らめた。
「その……、例のお薬は、少し味の調整をしてみたから、また飲んだら感想を聞かせてね?」
「……いや、あの」
「あと、綿羊の腸と練りスライム粉と、踊り蜂の蜜も買ってきてあるから、そっちも作っておくね」
……は?
それって確か……。
「うん。その、やっぱりほら、例のお薬飲むなら、そっちも必要かなって……。付けずにスるのは、良くないと思うし……」
「…………」
俺は、恥ずかしさのあまり思わず顔を覆う。
まさかシオンさんにまで、そんな節操なしに思われているとは……。
いやまぁ確かに、最近の俺の行動を顧みれば、何も反論はできないけども。
しかしそれでも、今まで積み上げてきたシオンさんの中での俺のイメージというものがガラガラと崩れたように感じ、俺は乾いた笑いが漏れてしまった。
「……ははは、まぁ、はい。ありがとうございます……」
俺は内心でガックリとするが、まぁもう、仕方ない。
しばらくは、弟子たちとともに銀ダンのエネミーどもをボコりまくってやろう。
ということで、その日の午後は色々と買い出しなどをした。
そして翌日。
ラナと姉貴たちが白ダンに潜ったのを見届けてから、俺と3弟子たちは銀ダンへ。
「……来たか」
「おう、来たぞ」
「今日から、よろしくおねがいしまーす!」
そこで待っていたティナと合流し、きちんとパーティー登録をしてから、俺たちは銀ダンに潜り始めた。