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第二部12話目・純粋な疑問


 ◇◇◇


『セリーさんへ業務連絡。希望の星(ドリームスター)の4人が黒ダンから帰還しました』


 と、銀ダンの10層から地上に戻った俺に、モルモさんからの通信が入った。


『こちらタキオン。予定より1日早いですが、……全員無事ですか?』


『はい。皆さんご無事で、フルマッピングも完了しているようですよ』


 ふむ……。


 本来なら、今日はボス部屋前でもう一泊して、明日の午前中に沼蛇を倒して出てくる予定にしていたんだが。


『分かりました。この後ユミィと直接通信して報告を受けるようにします』


『了解しました。セリーさんもお疲れ様でした』


 モルモさんとの通信を切る。

 そして今度はユミィに通信を飛ばす。


『こちらタキオン。ユミィ、聞こえるか?』


『こちらユミィ。聞こえてるよ。それと言いたいことは分かってる。ボス部屋前で休憩に入ろうとしたら、ラナがどうしても今日中に勝ちたいって言うから、仕方なく終わらせてきた』


『あぁ、やっぱあのポンコツが原因か。なんでそんなに急いだのか、分かるか?』


『たぶんだけど、昨晩ダンジョン内で一泊したときに色々不便を感じてたみたいだったから、二泊目に突入するのが嫌だったんじゃないかな?』


 なるほどな。

 まぁ、いい。フルマッピングできたのなら問題はない。


『それなら一つ指示がある。今日はラナをハウスから出すな』


『はぁ? ……なんで?』


『勝手に予定を変えた(ペナルティー)だ、とでも伝えろ。で、お前ら3人は、あのポンコツの面倒を見てもらったことの労いで、飯に連れてってやる』


『……ふーん。まぁ、分かったよ』


 それから俺は、飯屋の名前と集合時間をユミィに告げて、通信を終えた。

 俺はティナに向き直る。


「俺の弟子たちが帰還したらしい」


「! ……そうか」


 少し前倒しになったが、予定通りアイツらと話をするぞ。


「なぁ、ほんとにやるのか?」


 あたりめーだろ。

 パーティー内での人間関係の調整は、リーダーとしての最優先事項の一つだ。


 ずっとソロだったお前には、分からないことがしれないけどな。


「いや、貴様もソロのほうが長いだろ……。本当に、自分のことを棚上げしてよく言うな」


 うるせーよ。

 とにかく、今日中にケリつけるからな。


 ということで俺とティナは、先に店に行って3弟子たちを待ち構えた。




 そして、来店した3人は。


「お待たせタッキー! 久しぶりに一緒にご飯だね! ……って、その人は、だれ??」


「……タキ兄ぃ。その表情ってことは、色々話がありそうだな?」


「……ハハーン? さてはその人が、ター師父の言ってたオッサナ馴染みネ?」


 と、三者三様の反応を見せながら、3人揃ってティナをじっと見つめた。


「お疲れさん。まぁ、座れよ。お前らの疑問には順番に答えてやるからよ」


 3弟子たちはそれぞれ顔を見合わせると、空いている席に腰を下ろす。


 そして飲み物と料理を注文し、テーブルに揃うのを待ってから、俺は口を開いた。


「本来なら、このまま乾杯といきたいところだが。どうせお前らはそれどころじゃないだろうから、少し話をしようか」


 3人が無言で頷く。


「コイツは()()()()。俺の幼馴染で、銀ダン挑戦中のソロ探索者だ」


 ラナの姉貴分でもある、と俺はあらためて伝える。


「お前たちからすれば先輩になるし、……あえてハッキリ言うが、()()()()にもなる相手だろうよ」


 俺の言葉を聞いた瞬間、3弟子たちの目が一気に険しくなった。

 俺のことをじっと見つめてきて、言葉の続きを待っている。


「なにせ、俺の初恋の相手は、コイツだからな。そしてコイツは、俺のことを少なからず好意的に思っている。……そして、」


 俺は、なんでもないことのように告げる。


「先日ちょっと酒の勢いもあって、俺はコイツと一緒に寝た。それに関しての話はコイツとは済ませたが、お前らも気になるだろうから伝えておく」


 ツバサが、パチクリと瞬きをした。


「……いっしょに寝たって、どういうこと?」


「そのままの意味だよ。男と女が一緒に寝て、お手々繋ぐだけで済むか? お手々じゃないところで繋がって、お互い気持ちよくなったってことだよ」


「っ…………!?」


 ツバサの顔が、どんどん赤くなっていく。

 俺とティナがそういうことをしているところでも想像したか?


「ちょ、ちょっと待てよタキ兄ぃ。 ……え、嘘だろ? タキ兄ぃ、その女とほんとにヤったのか!?」


 ああ、ヤった。

 しかも一回だけじゃなくて、合わせて4回ぐらいヤった。


「な、なんてこった……!?」


 ユミィは逆に顔を真っ青にしていく。

 コイツら、赤くなったり青くなったり忙しい奴らだな。


「ター師父。ちなみにそれは、どっちからハジメたことネ?」


 決まってんだろ。


()()()ちょっかいかけたら、コイツが突っぱねずに受け入れたんだよ。だからヤった」


「……!?」


「ふーん……? ……そうアルカ」


 おい、ティナ。

 そんな露骨に動揺するなよ。


 ツバサはともかく、ユミィとモコウは今のでなんとなく理解したっぽいぞ。


「……タキ兄ぃ。なんでその話を、ボクたちにしたんだ?」


「隠しててほしかったのか? いや、んなことないだろ。俺が隠してたら、お前ら絶対どっかで勘づいて俺を追及してきてただろうよ」


 だから、お前らに勘づかれる前に教えた。

 隠すようなことでもないしな。


「なんだって?」


「だってそうだろう。俺とお前らはどんな関係だ? 恋人か? 夫婦か? ……そのどちらでもないだろ。だったら、俺が誰と寝ようが、本来的にはお前らに関係ない話だろ」


 浮気したわけでも、嘘をついたわけでもないんだからな。


「だが、お前らからすればそうじゃないんだろ? だからちゃんと話してるんだよ。俺もお前らとギスギスすんのは本意じゃないし、やましくもないことを誤魔化すのも、馬鹿バカしいからな」


「だからってそんな、開き直るみたいな……」


 だから、やましくないから普通に言ってるんだよ。


 ……そもそも、だ。


「お前ら最近、俺のことを誘惑してくるけどよぉ。あれは、()()()だ?」


 ああ、いや。

 そうじゃないな。



「お前らは、()()()()()()()()()()()()()んだ?」


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