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第二部10話目・護符ゲー


 昼過ぎ。

 ようやく酒の影響も抜けて頭もスッキリしてきた。


 俺とティナはシャワーを浴びる。


 そして俺が所持品枠に入れっぱなしにしていたチェストから取り出したシャツを着ていると、


「ぐぅ……、おい、まだ膝が笑っているぞ……」


 と、足がプルプルしているティナが俺に文句を言ってきた。


「なんだよ。ちゃんと良くしてやったんだから、とやかく言うなよ」


「あれだけ私のことを好き放題弄んでおいて、よく言う。しかも最後、またナカに……!」


 ……あー、うん。

 それはマジですまんかった。


「お前があんな顔してあんなこと言ってきたから、抑えが効かなかった。本当に申し訳ない」


 俺が素直に謝ると、ティナもその時のことを思い出したのか勢いが弱まった。


「……まぁ、一回も二回も変わらんかもしれんが。しかしなぁ……」


 いやまぁ、言いたいことは分かる。

 けど、これに関しては完全に俺が悪い。


 だから、


「これで、本当にお互い様ってことだ」


 どっちが先だったとか、どっちが悪かったとか、もう言いっこなしだ。

 分かったな?


 つーわけで、着替えたら行くぞ。


「行くって、どこにだ?」


 決まってんだろ。


「飯屋だ」




 近場の飯屋で遅めの昼飯を食いながら、俺はティナと話をする。


 今回の件を弟子たちにどう説明するか、という話なんだが。


「近いうちに、うまいこと言ってラナ以外の俺の弟子たちを呼び出すから、一緒に飯食うぞ」


「正気か??」


 たりめーだろ。


「こんなもん、後にするほど話がややこしくなんだろ。さっさと話してケリつけるぞ」


「いや、しかし。私はどういう顔して貴様の弟子たちと話をすればいいのだ?」


「好きにしろよ。基本的には俺が話をするから、お前は一言も喋らなくても問題はない」


 とはいえ。


「たぶん色々好き勝手に聞かれるだろうから、何を聞かれたらどう答えるか、ぐらいは考えとけよ」


 まぁ、コイツはバカじゃないからそのあたりは言われなくても大丈夫だろうけど。


 逆の立場だったらどういうことを聞きたくなるか。

 それを聞いた時にどういう回答だったら納得できるか。


 そういうところをちゃんとするためには、事前に回答を作っておかないと慌てるからな。


「さて、とりあえずはモルモさんと通信してみるか」


 予定通りに動いていれば、弟子たちは黒ダン内にいるだろうからな。


 モルモさんに伝言を頼んで、と。


 で、弟子たちが黒ダンから出てくるのを待ってる間に、もう少し銀ダンに慣れておきたい。


「食い終わったら研究室(ラボ)のパーティーハウスに行ってみるか」


 ティナが頷く。


研究室(ラボ)とは、昨日来ていたパーティーの一つだな?」


「ああ。護符のレシピを教えてもらうのと、実物があるならいくつか売ってもらおうと思ってな」


 護符の実物が手に入れば、もう少しまともに銀ダンを探索できるようになる。


 そうすれば、ティナと2人で潜っても大丈夫だろうからな。




 ◇◇◇


「うーん。なるほどな」


 俺は、銀ダンの第4階層で深く頷く。


 研究室(ラボ)ハウスで情報交換後、護符を何枚か売ってもらった(だいぶフッかけられた気もするが、仕方ない)わけだが、使ってみると確かにこれはすごい。


 まず、この護符は、使用すると使用者の幻想力を大きく消費してパーティーメンバー全員を「護身」状態にする。


 この護身状態というのは、保護印の壱と同等の効果があるらしく、使用中はずっと幻想力を消費する印よりもコスパが良い。


 また、護身状態はダンジョン外に出るまで永続的に作用し、途中で生身になっても効果が持続するどころか、生身で幻想力を回復させたあとで幻想体に再度切り替えても、効果が持続しているらしい。


 つまり、一回の探索につき一つあれば大丈夫な、とてもお得なアイテムということだ。


 当然、こんな強力なアイテムだと錬金術で作成するにもそれなりの技量が必要だし、必要素材も高価なものばかりだ。


 だが俺は、それを差し引いてもこれはすごいと思った。


 一応、今日帰ったらシオンさんにレシピと一緒に素材を渡してみようと思っているが、


 どちらかというと護符は、黄ダンを主戦場にしているパーティーから、レアドロでゲットしたものを買い取るほうが安上がりなのだろう。


 研究室(ラボ)の連中がほぼ独占的に買い占めている現状から考えても、自分たちで作るよりカネで買ったほうが得なのだ。


 俺たちは、いまさらそこの利権に噛み付くことはできないので、自作する(もしくは、自分たちで黄ダンに潜るか)しかないけどな。


「グオオオオォォォォン!」


 俺は、近寄ってくる亀騎兵(タートルライダー)大鬼(オーガ)に毒矢を浴びせながら、青巨人(ブルータイラント)のフレイルの横薙ぎをしゃがんでかわす。


「はあっ!」


 俺への攻撃の隙に青巨人の背後に回り込んだティナが、トゲ付き棍棒で青巨人の膝裏を強打した。


 ガクンと体勢を崩す青巨人。


 ホバーブーツを使用して空中を踏み締め、俺は青巨人の顔の横をすり抜けながら首筋と右鎖骨のあたりを自在刃で切り刻む。


 太すぎて首を一刀両断することはできなかったが、首への深い斬撃はクリティカルとなる。


 大ダメージを与えて右腕の動きを封じたので、この青巨人はもう虫の息だ。


 空中で振り向き様に青巨人の両目に毒矢をブチ込み、光の泡になっていく青巨人を無視して自在盾で火矢を防ぐ。


 大鬼がお返しに矢を射掛けてきたようだ。

 さらに弓を引き絞る大鬼に、俺とティナが揃って矢を射返した。


「グアアアアァン!?」


 ティナの矢が、弓を持つ大鬼の左手親指に刺さり、俺の四連速射が大鬼の両目と騎乗している大亀の両目に刺さった。


 大鬼の矢は明後日の方向に飛んでいき、大亀は痛みで暴れて横転。


 騎乗していた大鬼も地面に叩き付けられて目を回している。


 俺とティナは素早く大鬼に駆け寄る。

 ティナが脳天に棍棒を振り下ろしてカチ割り、俺は自在刃を心臓に突き立ててぐりっと捻った。


 ダメージ過多となった大鬼は光の泡になって消えていく。


 うん。まぁ、こんなもんか。


「威圧感さえなけりゃあ、エネミーの強さはそれほどでもねぇな」


 するとティナが「バカを言うな」と言ってくる。


「普通はもっと苦戦するものだ。だというのに、なんだ貴様の動きは。どんなステータスをしているんだ」


 そんなことを言われてもな。


「お前だって、スペアキーとストックの隠し機能のコンボは知ってるだろ? レベルを上げるだけなら簡単なんだよ」


 もちろん、レベルに見合った本人の練度がないとダメだけどな。


 レベルだけ上がっても、それだけで強くなれるかと問われれば、首を傾げざるをえない。


「……貴様の今の幻想体の、レベルは?」


「もちろん100だ」


 ほれ、とステータスを見せてやると、ティナは難しい顔をして唸った。


「……やはり私も、きちんと100までレベルを上げなければならないか……?」


 もっとも、茶ダンピラミッド天井部屋でのミイラ蟲爆殺戦法を使わないと、ここまで伸ばすのはたいへんだけどな。


 それに、今の俺はKey2()だ。

 Key1はヤバすぎてまだ他人には見せられねぇ。


「レベル上げしたいなら手伝うぞ?」


 俺が申し出ると、ティナは少し悩んでから「……すまん、頼む」と言った。


 まぁ、コイツの練度ならレベルを一気に100まで上げても問題ないだろ。


「ちなみにお前、スペアキーは2までしか取ってないだろ?」


「……その言い方は、3以降があるように聞こえるな?」


 あるよ。

 俺は黄ダンのフルマッピングで()まで取得した。


 そのあたりの、カネ払った奴にしか教えてないことも、今度教えてやるよ。


 そして今日のところは俺たちだけで5層ボスを倒してから銀ダンを出た。


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