外伝・お嬢様は立ち向かう・1
お久しぶりです。
ゴールデンウィークですので、しばらく毎日更新します。
「わたくしの名前は、セントラーナ・ベルメントス!」
ここはアカシアの町の探索者協会の受付窓口。
私は大きな声で自己紹介をします。
「わたくし、このアカシアの町を正すために、探索者としてダンジョンに潜りに来ましたの!」
きちんとした挨拶は人間関係の基本だ、とティナ姉様も仰っていましたし。
私もベルメントス家の人間として、お父様お母様のお顔に泥パックを塗るわけにはいきませんので!
「皆さん、以後お見知りおきを!!」
建物内の全ての皆さんに聞こえるように、元気一杯にあいさつをします。
「よ、ようこそいらっしゃいました」
「早速ですが、探索者登録をしたいですわ! 受付の人、やり方を教えてくださいまし!」
「は、はい……。こちらに記入をお願いします」
私は、手渡された書類にさらさらと必要事項を記入してお返しします。
ふふふ。私、お勉強は少しだけ苦手でしたけど、自分の名前や出身地なんかは、きちんと書けるようになりましたの!
ですので、このぐらいならお茶の子さいさいですわ!
受付の女性は内容を確認して小さく驚いたような表情をした(おそらく私の字の綺麗さに感動したのでしょう)あと、
小さなカギの付いたカードのようなものを、ヘンテコな機械に差し込みました。
「それではこの機械上面のガラス部分に、利き手の平を当ててください」
私が右手の平を当てるとガラス面がピカーっと光り、しばらく待つと光が収まって差し込んでいたカードがガシャンと出てきました。
「こちらが、探索者の証である迷宮門鍵と識別票です。新たな探索者を、私たちは歓迎します」
ふむふむ。
つまりこれで私も、姉様と同じ探索者になれたということですわね!
ということは!
とうとうダンジョン探索ができる!
やっほい!!
私は、念願叶って探索者になれた喜びでテンションがブチ上がりました。
「それでは続きまして、新人の皆さんにご案内している新人探索者講習について、説明させていただき……」
「ありがとうございましたですわ! よーし! がんばりますわー!!」
「え、あの……」
そしてまだ何か仰っていた受付の女性にお礼を述べて、ダッシュで協会を出ました。
それからそれから、姉様から聞いていたお店で装備品を買うと、姉様から勧められていた宿に宿泊し、晩ご飯をいただきます。
そしてしっかり寝て、
翌朝。
「ここが、白ダン……!」
ダンジョン探索の記念すべき第一歩を踏み出すべく、私は一番難易度の低い「白ダン」の門の前にやってきました。
それじゃあ、行きますわよ!
私は、門の前に集まって何か話をしている10人ほどの集団の隣を通り、意気揚々と白ダンの中へ。
ダンジョン内に入ると、一瞬で肉体が別の何かに置き換わったような、不思議な感覚がありました。
たぶんこれが、幻想体になる、というやつですのね。
そして私の周囲の景色は、門を潜ると同時に大きく様変わりしています。
先ほどまで街中にいましたのに、今は広々とした大草原の中に立っています。
不思議空間ですわ。
これがダンジョンなのですね!
私は頭にヘルメット、胸にはチェストレザーアーマー、
右手にミドルクラブ(トゲ付きバットみたいな、ぶん殴り武器です)、
左手にバンドシールド(腕に固定できるタイプの盾です)とショートボウ、
腰には予備武器のナイフを装備した姿で平原を歩き始めます。
ふふふ。これぞティナ姉様直伝、スーパーソロマスター装備一式ですわ!
遠近防すべてに対応できる完璧な装備品セットだと姉様も仰っていましたし、なにより姉様と同じこのスタイルで、
私、必ず、
「虹ダンクリア、してみせますわ〜〜!!」
と、いずれ近いうちに訪れるであろうその時を夢見て、ダンジョン内で気合いの雌叫びをあげたのでした。