67話目・フルマッパーズ、結成
本日2話目の更新となります。ご注意ください。
◇◇◇
決闘から2か月ほどたった。
俺は相変わらず弟子たちに色々教えたり、色々やらせたりしながらダンジョンを攻略させている(青ダンと緑ダンのフルマッピングクリアもなんとか完了させた)し、
協会のお偉いさん方とあーでもないこーでもないと話し合いをして、俺の知識(フルマッピングボーナスに関すること)や経験を盛り込んだ新しい初心者講習の内容を詰めにかかっているところだ。
もちろんその合間合間に、カネをたくさん払ったバケモノ連中には先んじて俺の知識を披露してやっている(実はもうすでにだいぶ大儲けをさせてもらった)し、
カネ以外にも情報や物品を受け取ったり、色々と便宜を図ってもらったりもしている。
……正直なところを言うと。
すでに弟子たちに使った金額以上のカネは回収できてしまっているし、バカ弟子たちもバカ弟子たちなりに一流相当に近い段階までは成長してきたところなので、
ぼちぼちツバサたちは、俺の弟子を卒業させてもいいかもしれない、と思うようになってきた。
まぁ、アイツらのおかげで俺は俺の知識をカネ儲けに使うことができたし、
そのことにアイツらも微力ながら協力してくれたのは事実なので、何かしらのお礼をしてやってもいいとは思っているのだが、
そのあたりはまた追々、話をしてやるとするか。
とかなんとか考えるようになったある日。
俺たちは、エリーゼさんに協会へ呼び出された。
「ねぇ、セリウス君……。辺境伯家から君たちの口座あてに、ものすごい金額の入金が来たんだけど……」
とエリーゼさんに言われて確認したところ、マジで目の玉が飛び出すかと思うぐらいの金額が、俺たちのパーティー「ボンクラ兄さんと可憐な弟子たち」(面倒だったので決闘の時から変更してない)の共有口座に入金されていた。
おいユミィ、これはどういうことだ……?
「あー……、フレスピに持たせた手紙が、父上に届いたんじゃないかな」
それは分かるが、この金額はいくらなんでもとんでもないぞ。
お前、あの手紙になんて書いたんだ?
「んー……。……ナイショ♡」
てへっ、という顔で誤魔化してきやがった。
コイツ、相変わらず俺のことをナメてやがる……!
「まぁまぁ良いじゃん! 父上がボクらにくれたんだから遠慮なく使ってやろーぜ!」
「あと、入金に伴う言付けがセリウス君あてにあるんだけど。……いつまでも娘を訳の分からん安宿に泊めさせておくな、カネならやるからちゃんとした家を用意しろ。……だってさ」
「えっ。……いや、俺たちのパーティーって、あくまでもコイツらが一流になるまでの暫定的なものなんで、パーティーハウスを構えるほどのことは……」
エリーゼさんは、静かに首を振った。
「娘を預けるんだからこちらも義理は通す、そのかわり不義理を働いたら許さん。っていう非常に強い要望らしくて、断るとたぶん恐ろしいことになるかもしれないわ……」
……マジか。
えっ、というかそれって、だから今後も面倒見ろよ、っていう意味じゃないのか……?
「あと、昇竜会って組織からと、スミコ村っていうところからも手紙が来ているんだけど」
それぞれ手紙を読むと、昇竜会からは「ウチのお嬢を預かるんだから手抜かりするんじゃないぞ。もしぞんざいなマネをしたら殴り殺すからな(意訳)」という内容で、
スミコ村(ツバサの故郷らしい)からは「ツバサのことを、どうか末長くよろしくお願いします」という内容だった。
俺は頭が痛くなってきた。
エリーゼさんが、困惑したように言う。
「セリウス君、私が言うのもなんだけど……」
「……はい」
「これはもう、どうしようもないんじゃない……?」
「……そうですね」
俺は深々とため息をついた。
まぁ、良いように考えれば、コイツらにパーティー卒業の話をする前に腹を括れたわけだから、ヨシとするか。
「お前ら」
俺は弟子たちに呼びかける。
「今後も俺と一蓮托生らしいぞ。おら、喜べよ」
と、冗談めかして言うと、
「はーい! タッキーよろしくね!」
「これからもよろしくな、タキ兄ぃ」
「ター師父、今後ともよろしくヨー」
なんか、思ってたのと違う反応が返ってきた(もっと文句を言われるかと思った)が、まぁ、文句を言われないならいいか、と思い気にしないことにした。
それなら、まずは。
「エリーゼさん。とりあえず、パーティー名変更登録手続書をください」
俺のことをボンクラ呼ばわりしているマヌケなパーティー名を変えることにする。
「えー! 変えちゃうの!?」
変えるに決まってんだろーが!
誰がボンクラだ、誰が!
そういうわけで、俺たちのパーティー名は「完全踏破隊」に変えた。
書類を受け取るときのエリーゼさんにヌルい笑顔を向けられたりしたが、俺は鋼の意思で無視した。
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本日午後5時に、もう1話更新します。