66話目・待ちに待ったお食事デート!
◇◇◇
決闘の数日後。
俺はとうとう念願の、シオンさんとのお食事デートに来ている!
……だというのに。
「おいしーい! シオンさん、この丸いのとっても美味しいね!」
「そうね、ツバサちゃん。あ、ほら、好き嫌いはダメよユミィちゃん。ピーマンもちゃんも食べないと」
「うぐっ。……はーい」
「モコウちゃんも、お口の端にソースがついているわ。拭いてあげるね」
「ありがとヨー、シオン」
なぜか俺のバカ弟子3人も一緒にご飯をご馳走になっている。
くそっ、どうしてこうなった……!?
『セリー君へ。三日後の夕方で予約取れました。ついでにお買い物とかも付き合ってほしいので、お昼過ぎにはバク叔母さんのお店に来てください。待ってます。シオンより』
という内容の手紙を、決闘の翌日に爆弾を買いに行った際に受け取った俺は、
協会とか他の探索者パーティーとかとのあれやこれやを必死で調整し、
今日という日を素晴らしいものにするためになんとか時間の都合をつけたというのに。
なぜバカ弟子たちまでこの場にいるのか!
……いや、分かってる。
今回の件は俺の落ち度だ。
出かけるときに弟子たちに「午後からは自由時間にしていいぞ!」とだけ言い残して慌てて出てきたから、シオンさんとのお買い物中にバッタリ弟子たちと遭遇してしまった。
万全を期すなら、弟子たちに何かの課題を出して、夜までダンジョン内に放り込んでおくべきだったのだ。
そして慈愛の女神の如く優しいシオンさんと、誰とでもすぐに仲良くなるツバサが少し会話をすればすぐに意気投合してしまい、そのまま弟子たちも買い物に同行。
予約していたレストランもテーブルの予約だけで料理は注文式だったため、弟子たちまで一緒に晩ご飯を食べることになったわけだ。
「タッキー! このスープも美味しいよ!」
分かった分かった。
みっともないからあんまりはしゃぐな。
……はぁ。
まぁ、仕方ない。
今回はシオンさんのお顔を見ながらご飯を食べられるだけでも良しとするか。
と、思っていると。
「ねぇ、バク叔母さんからも聞いたよ。セリー君って実はとっても強かったんだね!」
「え、あ、はい。これでも5年間毎日のように探索してますので」
「他のすごい人たちと決闘して勝ったんだもんね! あ、ツバサちゃんたちもたくさん活躍したんだってね! バク叔母さんが笑いながら話してくれたよー」
バカ弟子たちが揃って照れたようになる。
お前ら、俺のおかげで決闘に勝てたことをゆめゆめ忘れるんじゃないぞ。
……ちなみにあの決闘、あとでシュナ爺を問い詰めたところ、転送位置とか立ち入り禁止区域の指定とか以外にもフレスピークに対する忖度があったらしく、
どうやらあの決闘中、フレスピークを含む暗い呼び声のメンバーは、いくらPPを使用してもPP残量が減らない状態、通称ゲジマユモード(ゲージマックスモード)になっていたようだった。
どうりで、あれだけ大量の分身体を用意することができたわけだ。
汚いな、さすがシュナ爺きたない。
なお、シュナ爺は、
『うっかり、モード設定のボタンを肘で押してしまっていたようじゃな。いやぁ、失敬失敬。まぁ、それでもター坊たちが勝ったし、おヌシの提案はきちんと前向きに検討するようにワシが根回ししてあるからの』
と、ヌカすので、俺は思わず引っ叩きそうになるのをグッと堪えて帰ったのだ。
ちなみにフレスピークは、
『内容には全く納得いかないが……、決闘は決闘だ……。私は一度辺境伯領に戻り、辺境伯様と奥方様にご報告をする』
と言ってトボトボ帰っていった。
さすがに騎士なので、決闘の結果を反故にするのは騎士道に反するんだろうな。
まぁ、帰り際のフレスピークに、ユミィが直筆の手紙を渡したようだったし。
所在は明らかになって元気でやってることは伝わるだろうから、それで勘弁してほしい。
「けどそっかあ、セリー君がそんなにすごい探索者だったんなら、ひょっとして今回のぐらいじゃお礼が足りないんじゃない?」
「いえいえそんな! こうして美味しいご飯をご馳走になっただけで、俺は大満足です!」
「そうなの?」
「はい!」
そうすると、シオンさんがふふっと笑った。
「良かったぁ。じゃあこれからも、たまにセリー君に素材調達をお願いしてもいいのかな?」
「ぜひぜひ! 何でも調達してきますので! またいつでも言ってください!」
と、俺はウキウキ気分で頷く。
「……タッキーってさぁ」
「……これがタキ兄ぃの」
「……とっても強敵ネー」
ははは!
バカ弟子たちが何やらヘンテコな顔をしているが、俺には関係ねぇ!
シオンさんとの関係が少しでも進展するなら、今日のお食事会は大満足な結果と言っていい!
俺はそこから良い気分で、食事を楽しんだのだった。
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本日正午に、もう1話更新します。




