65話目・決闘、決っ着!!
本日2話目の更新となります。ご注意ください。
あまりにも大量(俺がビリーたちに投げた数の10倍)の爆弾が一斉に爆発したので、地形そのものが変わる規模の大爆発が起きた。
轟音。
爆煙。
破壊。
爆弾を投げた幽霊男の分身たちも全て消し飛び、少し離れた小高い丘の上に控えていたマインさんたちも、自在盾を出して地面に伏せて爆風をしのいだようだ。
爆裂音と衝撃が止んで数秒後。
地面に引き倒されていたフレスピークが、
「な、な、な、なにが起こったのだ……!?」
と、呆然とした様子で呟いた。
「見ての通りですわ、フレスピーク様。敵どもを一網打尽、全て爆風で吹き飛ばしてやりましたの」
着ているドレス風の服の裾を払いながら、マインさんが立ち上がった。
「マ、マイン! 今から奴らと戦うという話ではなかったのか!?」
「ですから、戦ったじゃありませんか。我々の作った包囲陣に奴らを引き込み、最大火力で爆殺。作戦通りの優雅な爆発でした」
暗い呼び声の弓士が扇子を拾ってきてマインさんに手渡し、どこからともなく幽霊男たちの本体4人が姿を現して、マインさんの後ろに控えた。
「まさかとは思いますが、フレスピーク様。我々が貴方様たちのように正々堂々正面から戦う、という作戦をとるとお思いでしたか?」
そんなはずありませんよ、とマインさんは嗤った。
「我々は野蛮な探索者。貴方様たちのような高潔な戦い方など、とてもとても……。優雅さは追求しても、効率を捨てたりはいたしません。それに、反撃の機会すら与えず一方的に狩る。これ以上に優雅な戦い方は、ないと思いますが?」
それに関しては、俺も同意する。
そして、その次に優雅な戦い方というのはな、
「勝った、と確信した瞬間の相手を狩る、ってやつだ」
「っ……!?」
俺の声に反応してマインさんは弾かれたように上を見たが、……遅い。
俺は上空からの落下速度そのままで、マインさんの胴体をミドルブレードで一刀両断した。
「なっ!?」
落下ダメージで俺の左足が破損したが、残った右足を軸にブレードを切り返し、隣の弓士も胴体を真っ二つにする、……が、
「……チッ」
とっさに弓士が放った雷矢が俺の首に当たった。
爆風のダメージで崩壊寸前だった俺の幻想体は、矢のダメージで限界を迎え……、
仕方なく俺は、強制退場処分の寸前でKey2からKey3に幻想体を切り替え(Key1は爆風を耐えるために使い潰してしまった)、退場処分を阻止した。
ふぅ、危ないあぶない。
「き、貴様……!?」
フレスピークがようやく俺に反応した。
幽霊男たちが装備品を具現化しながら俺を取り囲もうとしてくる。
その瞬間、足場の下からズズンと振動が起こり、俺たち全員バランスを崩した。
そして崖下から小さい影が飛び出してきて、
「ター師父、伏せるネ」
「!」
着地と同時に小さい影が、幽霊男たちに駆け寄って殴りかかった。
一息で8発。
正面の二人に4発ずつ雷拳を打ち込んでマヒさせ、両端の2人のうちの片方は自在盾を使って利き手を押さえる。
残りの1人からの斬り付けをかわしながら腹部に雷拳を打ち込み、自在盾で押さえていた1人を蹴り足から伸ばした自在刃で真っ二つにする。
麻痺して動けなくなった3人の幽霊男たちも順番に自在刃で首をハネ、フレスピークの首に自在刃を突き付けると、モコウはふぅっ、と息を吐いた。
「よく生きてたネ、ター師父」
「ギリギリな」
ツバサたちに塀盾を使った後、俺はホバーブーツで上に逃げながら足元に自在盾を出して防御、
Key1のHPが限界になったらKey2に幻想体を変えて同じように自在盾で防御したからな。
Key2が落ちかけるぐらいでなんとか耐えられた。
で、マインさんたちが勝利を確信したあたりでホバーブーツを解除して上空から急襲、マインさんと弓士の男を落としたところでKey2も限界になって、今は使うつもりのなかったKey3だ。
「来てくれて助かったよ。さっきの地響きは、ユミィかツバサか?」
「ユミィに、足場を崩すつもりで撃ってもらたヨ。でも崩れなかたからツバサに投げてもらて、ワタシここまで飛んできたネ」
なるほどな。
3人とも生き残っているようでなによりだ。
「ター師父の壁と、ユミィとワタシのフワフワ盾、あと、アネゴたちもフワフワ盾をこっちに使てくれてたみたいヨ。だからなんとか無事だたネ」
そうか。
あとで姉貴とモルモッティーアさんにも礼を言わないとな。
「さて、と」
俺は、モコウに自在刃を突きつけられたフレスピークを見る。
「おい、フレスピーク。あとはお前だけになったわけだが」
なんでさっさとお前を落とさないと思う?
「……知らん! おおかたまた卑怯な手でも使うつもりだろう!」
「ははは、まさか。俺はお前に正々堂々とした決闘をさせてやるつもりなんだぜ?」
「なんだと?」
まぁ、待ってろよ。
たぶんもう少しで上がってくるから。
ということで少し待っていると、反対側から回り込んでツバサとユミィが俺たちのところにやってきた。
「タッキー! モコたん!」
「フレスピのやつは……、お、いるいる。やるじゃん2人とも」
フレスピークがユミィを見てまた何か色々と言っているが、ユミィは目も合わせずに俺のほうに来て、俺の後ろに隠れた。
おいおい。
……まぁ、いいけど。
「お嬢様! 私です、フレスピークです!! なぜそちらに行くのですか!? 辺境伯様も奥方様も、ずっと貴女のことを心配していらっしゃいます!! さぁ、私と一緒に帰りましょう!!」
あー、うるさいうるさい。
「おい、フレスピーク。そこまで言うなら最後の勝負だ。お前に馴染みのある形で、一対一の決闘をさせてやるよ」
「本当か!」
「ああ。モコウ、自在刃を離してやれ」
モコウが自在刃をしまうと、フレスピークは喜び勇んで立ち上がった。
「ははは! それなら決闘だ! 今こそ貴様に目にもの見せてくれる! さぁ、貴様も剣を構えるがいい!」
と、何を勘違いしたのか俺を指差して言ってくるので、俺は鼻で笑う。
「違う違う。お前の相手は俺じゃない。ほれ、そこにいるだろ?」
と、俺が指差した先には、
「よーし、がんばるぞー!」
と、全身鎧姿でタイラントフレイル(全長5メートル近い大きさの、超巨大三節棍)をブンブン振り回して大風を起こしているツバサがいた。
「…………はっ??」
自分より遥かに小柄な女の子が、自分では持ち上げることすらできないであろう超巨大重量物を、子どもが騎士ごっこで振り回す木の枝のように扱っている姿を見て、フレスピークは呆気に取られたようだ。
「それじゃあオジサン、よろしくお願いしまーす!」
ツバサがフレスピークの前に立って元気にお辞儀すると、フレスピークのやつも思わずお辞儀を返した。
そして数秒後に我に返り、
「ちょ、ちょっと待……!?」
「カッキーーン!!」
「ぐわああああああああああっ!?」
ツバサのタイラントフレイル・ホームランで文字通りバラバラに吹き飛ばされて、フレスピークは強制退場になった。
「わーい、勝ったー!」
「ナイス、ツバサ」
「今日イチのスイングだたヨー」
弟子たち3人が仲良くハイタッチを交わし、それから俺のところに駆け寄ってくる。
「タッキー! やったね!」
俺が頷くと、エリーゼさんの声がアナウンスとしてフィールド内に響き渡った。
『決っ着!! 勝者、……え、この名前……? ……コホン。勝者、ボンクラ兄さんと可憐な弟子たち!!』
……は?
俺は、ギロリとユミィを見た。
「え……。まさかツバサ、ほんとにあの名前で書いたのか!? あれはジョークのつもりだったのに!!」
「えっ!? そうだったの!?」
「オォー、なんてこったネ……」
どうやらコイツら、俺が他のパーティーの奴らと顔合わせをしている間にパーティー名登録の用紙を勝手に書いて提出したみたいだな。
「お、ま、え、ら、なぁ……!!」
「うわーん! ごめんなさーい!?」
俺は怒りのあまり弟子たちに殴りかかったが、
……ステ差がありすぎて(こっちはレベル1のKey3だからな)、まったく歯が立たなかったのだった。
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