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52話目・赤ダン探索開始!


「赤ダンいうと、D級のやつネ? ワタシ、初めて入るアルヨ!」


「私も初めてだ! えへへー、とうとうD級に挑むのかー」


 喜ぶ2人とは裏腹にユミィは苦りきった表情を崩さず、まるで死の宣告でも受けたみたいになっている。


「……ボクは何回かクリアしたことあるけど。タキ兄ぃ、白黒以外にも潜れるんだな」


 茶ダン潜れるんだから当たり前だろ。

 というか、赤青緑まではフルマッピングクリアしてあるよ。


「マジ? ……てことは、今回の赤ダンって……」


 ああ。最低でも三泊四日でひたすら()()()して、初回フルマッピングクリアを目指す。


「やっぱりか!? うわー……、タキ兄ぃそれ本気で言ってる……??」


 本気だよ。

 だから今日は準備に使うって言ってるんだ。

 泊まり込みになれば、それだけ持ち込み品も増えるからな。


 ユミィが死んだような表情をするので、ツバサとモコウが不思議そうにした。


「ユミィちゃん、赤ダンってどんなとこなの?」


「……赤ダンは、正式には『赤の山脈レッドクリフ』って名前のダンジョンで、……ひたすら山道を歩くんだ……」


「オォー、山道。けっこう道キツいカ?」


「うん……。急坂だから普通に歩くだけでも体力少ないやつは疲労状態になったりするし、道細いところとかあって崖下に落ちると大ダメージになったりするし……」


 まぁ、そのあたりはまた赤ダンに入ったあとで詳しく説明してやるよ。


「俺から今言えることは、今日は明日に備えてしっかり休んで、体調整えとけってことだ」


 ただでさえ決闘までの時間が少ないうえに、赤ダンのフルマッピングは通常じゃ絶対に通らないルートを通ったりと色々手間が多いからな。


「定期的に結界張って生身で休憩したりもするが、生身の体調が悪いと幻想力の回復効率も下がって無駄に探索が長引くことになる」


 そうなると、決闘に差し支える可能性もある。


「途中で落ちたり垂れたりしてフルマッピングをやり直すことになったら目も当てられないからな。絶対に一回で成功させるつもりで、気合いを入れて挑むぞ」


 というわけで、お前らは部屋で休んでろ。

 俺は、商店を回って必要物資を買い集めてくる。


 3人娘が「はーい」と頷いたのを見て、俺は買い物に出た。




 ちなみに買い物の途中で。


「おや、セリウス君じゃないですか!! 今日も私の爆弾を買いに来てくれたんですね!!!」


 と、相変わらず鼓膜が破れそうなぐらい声のデカいバクエリーナさんの店に行き、爆弾と煙幕を大量に買う。


 バクエリーナさんは一風変わった錬金術師で、何を作っても並以下のクオリティのものしか作れないそうなのだが、爆弾と煙幕だけは必ず最高クオリティのものを作れる。


 俺も、他の店やショップで購入したもの、ドロップ品やポップ品などを色々試してみたが、この店で買えるもの以上の威力と品質のものには出会えなかった。


 なので俺は、必ずこの店で爆弾を買っている。

 たとえ店主のバクちゃんさんの声がバカデカくて耳がバカになりそうだとしても、ここ以外で爆弾を買うという選択肢はない。


 そしてそのついでに。


「そういえば、シオンさんからのお手紙なんかは預かっていませんか?」


「いえ!! まだ届いていませんね!!」


「そうですか。分かりました、また来ます」


「はい!! またのお越しをお待ちしております!!!」


 どうやらシオンさんとのお食事デートの日取りは、まだ決まっていないようだ。


 さすがに、いつでも大丈夫ですと言った手前、明日からの赤ダン探索や決闘予定日と被っていたら困ってしまうからな。


 予定が決まり次第、そのあたりも調整しなくては。


「とりあえずは、赤ダンか」


 俺は、明日からの探索プランを再チェックしながら、残りの買い物も済ませていったのだった。




 ◇◇◇


「それじゃあ、入るぞ」


 翌日午前8時。

 いつもより少し早めに起きてしっかり朝飯を食べ、軽く準備体操を済ませた状態で赤ダン入口門前に来た。


 そして若干緊張した様子の弟子3人を引き連れて、俺は赤ダンに入った。


 なお、今回俺はKey2の幻想体だし、ツバサとユミィはKey1のほうの、きちんと育成してある幻想体を使用する。


 今回の探索目的は弟子たちの練度向上ではなく、この赤ダンのフルマッピングクリアボーナスだからな。

 育った幻想体のほうが体力や速力、筋力が高く山登りもしやすい。


 それに、途中のエネミーとの戦闘もなるべくスルーするつもりだが、狭い山道を登る以上どうしても戦闘を避けきれなかったりする。


 そういう時には、極力戦闘に時間をかけないようにする必要があるため、


「キシヤアアアアアッ、ガッ……!?」


 レベルの高い幻想体で鎧袖一触に倒していくのが望ましい。


 俺は、上空から急襲してきた中級怪鳥の眉間に細く伸ばした自在刃を突き立てて一撃クリティカルで仕留めながら、どんどん山道を進んでいく。


「いつもより少し早足で進むから、お前らは疲労が溜まりやすいはずだ」


 だから疲労状態になる前に言えよ。

 無理して疲労状態になったら、結局回復するまでの時間分でロスするからな。


 俺は、体力のギリギリを攻めて歩きたいだけであって、お前たちを体力切れにしたいわけじゃあないからな。


「あ、この先の三差路は本来は右が正解ルートだが、フルマッピングする以上は左、中央、右の順で進んでいって、行き止まりで折り返さなくちゃならん」


 分かれ道で、あえて間違いの道から順に選んで行き止まりまで進んでから分かれ道に戻る、という行程を延々と繰り返すわけだからな。


「途中で嫌になってくることもあるだろうが、気にするな。俺の後にしっかりついてくれば大丈夫だ。前に進み続ければいつかは終わる」


 ほら、ツバサ。

 キョロキョロしてばかりだと足を踏み外すぞ。

 きちんと前と足元を見て歩け。


 おい、ユミィ。

 まだ第1階層目だ、そんなに嫌そうな顔をするな。

 心配しなくても休憩は早め早めに取るし、野営の時に食べる飯も良いものを買ってきてあるぞ。


 ん、なんだ、モコウ。

 さっきの自在刃を伸ばして刺突するやつか?

 あれは技力のステータス値が最低でもD-はないと難しいぞ。


 とかなんとか。

 俺がペラペラ喋ったり、時折襲ってくる飛行エネミーを一撃クリティカルで倒したりしながら。


 俺は、ひたすら山道を歩き続けたのであった。


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