31話目・弟子二号誕生!
◇◇◇
ガーコンたちが衛兵に逮捕されてから数日がたった。
あのあとアイツら全員素直にダンジョンから出てきて、抵抗することもなく御用となったとか。
何パーセントかは、ダンジョン内に籠ってギリギリまで出てこない可能性もあったが、ユミィに脅されたのがだいぶ効いたらしく(あとやはり、生身で長時間ダンジョン内にいたらなるべく早く出たくなるのだろう)、予想された最短時間で出てきたようだ。
そこから衛兵たちの厳しい取調べにより、他にも何回か似たようなことをして盗みを働いていたことなどが判明したらしく、ガーコンたちは5人全員強制労働刑になる見込みだ。
俺やユミィも二度ほど衛兵に呼ばれて参考人として取調べを受けたからな。
あの時間が無駄にならなくて良かったよ。
ま、ガーコンたちも、縛り首とか試射や試し斬りの的にならなかっただけ温情だと思ってもらって、しっかり罪を償ってもらおう。
働くだけで罪滅ぼしができるなんて、楽なもんだろ。
で、ガーコンたちのゴタゴタを片付けている間に俺が何をしていたかというと。
「約束だからな。これからよろしく頼むぜ、タキ兄ぃ」
ということで、正式にユミィが弟子二号となれるよう(ユミィが弟子入りしたことをツバサが非常に喜んでいた)に、関係各所に対して俺が手続きをしていたわけだ。
宿も以前の部屋を正式に引き払ってツバサの隣の部屋を借りさせ、必要なものを買い揃えさせた。
俺とツバサとユミィの3人で正式にパーティー登録をして、探索者協会のパーティー共有口座を開設したりもした。
あと、きちんとパーティー入りするにあたり、俺の特殊スキルのことなどをユミィに話したりもした。
それからツバサこと弟子一号と、ユミィこと弟子二号を連れて、白ダンと黒ダンを再びフルマッピングクリアしたりもした。
これがまた、ユミィの奴が「長い! 面倒臭い!!」と歩きながら文句を言ってきたが、ツバサの「大丈夫だよ! あたしもなんとか歩けたもん!」という励ましもあり、なんとかフルマッピングクリアできた。
これによりユミィもスペアキー2とストックが使えるようになり、幻想体の効率的な育成準備が整ったわけだ。
ちなみに、ユミィは黒ダンを先にクリアしてストックから入手し、そのあと白ダンクリアでスペアキー2を手に入れた。
つまり、フルマッピングクリアは、各ダンジョンごとで取得できるスキルが決まっていると推測される。
もし俺に弟子三号ができた場合には、ある程度普通に育てた(ストックだけは先に取らせる。そのほうが手間が少ないからな)うえで赤青緑ダンのどれかを最初にフルマッピングクリアさせてみたい。
その場合に得られるスキルの種類によっては、俺の推測が確証に変わることだろう。
今から楽しみだ。
それともいっそのこと、カトスたちが緑ダンを安定してクリアできるようになった段階で緑ダンのフルマッピングクリアをさせてみてもいいかもしれない。
現在カトスたちは緑ダンを鋭意探索中だが、ガーコンたちのところにいた新入り銃士の男(名前はジミィ)がパーティー入りしてくれたおかげで、だいぶ陣形が安定してきたらしいからな。
あの二丁拳銃男もガーコンの件があったせいで他のパーティーからハブられかけてたからな。
ちょっとばかし悪いことをしたとも思ったので、カトスたちに紹介してやったんだ。
しかもカトスの奴が俺の真似をして弓も使うようになった(驚いたことに意外と筋が良い)ため、今のカトスたちのパーティーは、前衛が槍、斧、槌、棍がそれぞれ1人ずつに、後衛が銃1人と弓剣兼用1人で、非常にバランスも良くなった。
いつぞやの前衛6人で囲んで殴るみたいな、未開の地の蛮族じみた戦い方は卒業できたわけだ。
少しだけ感慨深い。
「タッキー! 今日は何をするの!」
「タキ兄ぃ、またなんか変なこと考えてるだろ」
さてさて。
感慨に浸ってばかりもいられないな。
俺は俺で、このバカ弟子たちをきちんと育成してやらなきゃならん。
俺は弟子2人に向き直る。
バカな子ほど可愛いということもないが、このバカたちが一人前の探索者になるのを想像するのは、意外と悪くない気分だ。
「タッキー?」
「タキ兄ぃ?」
ああ、そんなに呼ばなくても分かってるよ。
「さて、今日は2人ともレベル1のスペアキー2で白ダンに潜るぞ」
俺の弟子育成は、まだまだ始まったばかりだからな。
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