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俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。  作者: 龍々山 ロボとみ
弟子二号、厨二病弾バカ美少女、ユミィ
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29話目・クソ野郎にお仕置きをする


 ボス部屋の扉が開くと同時に、俺とユミィは砂柄の布を脱いでこそこそマント(砂模様タイプ)を羽織る。


 そしてあらかじめ買っておいた仮面(ヒョートコ(ひょっとこ)と言うらしい。ユミィはアカメ(おかめ)だ)を被り、ポケットからホイッスルを取り出す。


 ガーコンたちは、だいぶ満身創痍のようだ。


 6人のうち2人は片腕片足がそれぞれ吹き飛んでいて落ちかけ。

 ガーコンの幻想体にも細かいヒビ割れが発生している。


 ユミィが小さい声で言う。


「やっぱり、知らない奴が一人いるね」


 そうだな。茶ダン入りの時に一人多かったもんな。

 あれは多分、お前の代わりに新しくパーティー入りした後衛だろう。


 両腰に空のホルスターがあるから銃士(ガンナー)、それも二丁(ダブル)拳銃(ハンドガン)タイプか。


 若い奴だが、何回か見たことがあるな。

 たしか別の奴とパーティーを組んでいたはずだが、ガーコンたちが引き抜いたのか?


 まぁ、いい。

 いずれにせよ大した戦力じゃあない。


 手筈通りいくから、カンテラと杖を構えて待ってろ。


「分かった。……気をつけろよ、タキ()ぃ」


 俺はガクッとズッコケそうになった。


 ……なんだその呼び方。


「いや、タキオン兄さんだと長いからさ……」


 お前、ツバサたちみたいなことを言うんじゃねーよ。

 それに俺は、お前を弟子にするとは言ったが妹にするつもりはないぞ。


「大丈夫だよ。キミの妹なんてこっちから願い下げだ。だってキミ、絶対妹のオヤツとか平気で食べるタイプだろ」


 んなことしねーよ!

 むしろ俺は姉貴にオヤツ取られてたほうだよ!


「あ、キミってお姉さんもいるんだな。へー、知らなかった」


 ぐっ、しまった!?

 くそっ、コイツの軽口に乗せられて言わなくても良いことを言ってしまった……!


「お、ほら、ガーコンたちが結界カンテラの準備してるぞ!」


 言われて見ると、確かにガーコンたちへの襲撃タイミング間近だ。

 これ以上無駄話はしていられない。


 くそっ、この件が終わったら覚えてろよ!


 俺は「インビジブルバンダナ」という、使用中は透明になって姿が見えなくなる装備品を起動して、結界カンテラにPPを充填しているガーコンたち目掛けて駆け出した。


 ちなみにこのバンダナ、使っている間は他の装備品が使えない。


 つまり無防備な状態になるということなので、使用しながらの接近には注意が必要だ。


 向こうからすれば、砂に残る足跡と僅かな足音しか分からないだろうが、それでも気づかれれば先手を取られる可能性がある。


 先手を取られると、他の装備品を起動するまでの時間差でやられる可能性もあるので、俺は少しだけ緊張しながら素早く最短距離を駆けた。


 幸い、ここがエネミーやトラップも出ない場所であることや、全員疲労していることもあって警戒心が下がっているようだ。


 俺は、どうにか気づかれることなく目標の距離まで近づけたので、


 ピーーーーーーッ!!


 と、ホイッスルを吹いてユミィに合図をする。

 次の瞬間。


「な、なんだ……!?」


 ユミィの位置から大量の光弾が山なりの軌道で撃ち出され、ガーコンたちに頭上から迫る。


 エネミーの出ない空間で、突如襲撃されたガーコンたちは、


「カ、カンテラを点けろぉ!!」


 ダンジョン内でのあらゆら攻撃を無効化する結界カンテラの点火目盛を回した。


 カンテラを中心に、瞬間的に円柱状の結界が展開する。

 高さ3メートル、半径10メートルサイズか。

 どんなエネミーの攻撃もどんな探索者の攻撃も通さず、使用中は誰も出入りすることができなくなる無敵の防御結界だ。


 その結界の天井面にユミィの光弾が降り注いだ。


 ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!


 豪雨が屋根を叩くような音が響き渡る。

 ガーコンたちは天井面で弾ける光弾を見て、誰が撃ってきたのか察したようだ。


「この数と威力、まさかユミィか!? アイツ、生きてやがったのか!!」


 その言葉に、仮面をつけたままのユミィが物陰から姿を現す。

 そしてまた、大量の光弾を降らせながらガーコンたちにゆっくりと近づく。


「やっぱりユミィだ! ヘンテコな仮面を付けているが、あの背の低さと白い髪は間違いねぇ!!」


 ガーコンの言葉に、他のメンバーも鋭い視線をユミィに向けた。


 ユミィは、光弾を絶えず撃ち続けながら仮面を外してみせた。


「よく覚えてたな。ボクのこと、殺そうとしたくせに」


「はっ、やっぱテメェか! 生きていたのは驚いたが、無駄なことだな! お前も知ってるだろ、この結界はどんな攻撃でも破れねぇんだよ!!」


 まぁ、確かに結界カンテラの結界壁は無敵だ。

 どんな攻撃も絶対に通さないし、どんな攻撃でも壊すことはできない。


 探索者が、ダンジョン内で唯一生身になっても大丈夫な安全空間(セーフゾーン)を作り出すのが、結界カンテラだからな。


「ふんっ、そいつはどうかな」


 さらに連射を続けるユミィ。

 カンテラの結界に光弾を浴びせ続ける。


 しかし、あれだけ撃っても連射が途切れないのは、さすがの心力・Sだな。


 普通ならそろそろ数秒の息継ぎ(クールタイム)が必要になるころだ。


「ぎゃはははは! 無駄だ無駄だ無駄だぁ! どうやってここまで生き延びたかは知らないが、お前の弾でも絶対に壊せねぇよ!!」


 ガーコンは結界内にいることの安心感からか、ユミィを煽る。


「残念だったなユミィちゃん! お前の唯一の取り柄の射撃でも、この結界は壊せませ〜ん! ぎゃはは! 飛んで火に入る夏の虫とはお前のことだ! 射撃が途切れた瞬間に結界を解除して、今度こそお前を八つ裂きにしてやるぜ!」


 コイツ、ユミィが一回外に出てるの知らないからな。

 緊張脱出装置を持ってないと思ってるんだろうな。


 というかガーコンたち、さすがに鈍すぎるな。


 ()()()()()()()()んだが、全然気づいてないな。


 レーダーをよく見れば、自分たちを示す光点が一つ多いのにな。

 そんなヌルさで、よくここまで来れたもんだ。


 まぁ、皆ユミィのほうを向いてるし、俺もガーコンたちの背後に回っているからなんだろうが。


 それにしても、だな。


 そしてユミィは、煽ってくるガーコンに対しても平静を保ったまま、ニヤリと笑った。


「ふふん、楽しみだね。ボクを煽ったその口で、このあとどんなブザマな命乞いを聞かせてくれるのか、ね」


「ぎゃははー! テメェみたいなチンチクリンに命乞いなんて、するわきゃねーだろー! テメェのほうこそ八つ裂きにして生身にしたら、今度こそ裸にひん剥いてやるぜ!」


「お、おい、ガーコンさん、さっきから何を言ってるんだ……!」


 お、新入りの銃士がさすがにおかしいと思い始めたぞ。


 だが、ガーコンはその言葉を無視した。

 さらに調子に乗った発言をする。


「ぐへへ、テメェみたいなチンチクリンだってちゃんと女だからなァ! 今日一晩かけて穴という穴をほじくってアヘアヘ言わせてやるよ!! 良かったなユミィ! 俺がお前を一人前の女にしてやるぜ!!」


 ……コイツ、マジでクソだな。

 情状酌量の余地なし、だ。


 ユミィもさすがに今の発言にはキレたのか、射撃を続けながら自分の結界カンテラを取り出した。


「……それならボクは、お前の体に穴という穴を空けて、苦痛でアヘアヘ言わせてやるよ」


 そして、射撃を続けたまま、自分の結界カンテラの目盛を回した。


 次の瞬間。

 ガーコンたちの結界よりさらに大きい、高さ5メートル半径20メートルの結界壁が出現し、


「あひゃ……?」


 結界が二重になった瞬間にインビジブルバンダナを破棄して両手に自在刃(フレキシブルブレード)を装備した俺が、背後からガーコンの首を切り飛ばした。


 そのまま、ガーコンの左右にいた仲間たちの首も順番に切り飛ばしていく。


「だ、誰……!?」


 唯一、新入りの銃士だけは俺の姿を見て反撃しようとしてきたが、銃を具現化して構える直前に俺の刃が届いた。


 銃ごと両手を切り飛ばしてから首を刎ねる。


 ドドドドドドンッ!


 とガーコンたちの幻想体が一斉に破損して粉煙が舞った。

 緊急脱出装置が作動し全員分の光条が生まれる。


 そして俺は、足元に置かれたガーコンたちのカンテラの点火目盛を回して結界を解除した。


「はっ……、はえっ? 今、いったいなにが……?」


 地面に尻もちをついた()()()ガーコンが、マヌケな声を出す。


 そこに、次の光弾を準備したユミィが、ニッコリとした笑顔を浮かべて、告げた。


「お前らの幻想体を壊した。今のお前らは、全員生身だぜ?」


「……はっ? な、何を言って……!」


 ユミィが、手にした長杖でガーコンの頬を殴った。


 幻想体のステータス補正のないガーコンは、ユミィの一撃で頭を大きく弾かれた。


「痛でぇ!? な、なんだ、痛いぞ! ち、血も出てやがるっ!?」


 狼狽えるガーコン。

 他の仲間たちも呆然としている。


 そりゃあ、突然幻想体を壊されたことも驚きなら、緊急脱出装置が作動したのにダンジョン内にいるのも驚きだろう。


「しっかし、本当に外まで行かないんだね」


「ああ。これが二重結界効果だ」


 ユミィの言葉に、俺は仮面を外しながら頷いた。


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