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第二部29話目・3人寄れど、烏合の衆


 ◇◇◇


 翌朝。俺は、黄ダン潜りに向かった姉弟子3人衆を見送ってから、一気に3人に増えた仮弟子たちを自室に呼んだ。


「さて、お前たち。集まってもらったのは他でもない。これからのお前たちの探索者活動について、あらためて話がある」


 俺は、並んで立っている仮弟子たちを順番に見る。


 まず、仮弟子一号。

 ポンコツ怪力娘のラナ。


 コイツは俺の幼馴染のティナから任された、ティナの妹分だ。歳は17歳。ツバサやモコウと同い歳だな。


 ハチミツ色のサラサラストレート長髪(ヘアー)に青い眼。

 背が高くて肉付きが良く、全身ムチムチのボンキュッボン体型をしている。


 特に胸がすごくて、ツバサやアスカさんやティナよりもスゴい。コイツがぴょんぴょん飛び跳ねると、痛くねーのかってぐらいぶるんぶるん揺れる。


 そんで、その正体は、この辺り一帯を統治するお貴族様の家、ベルメントス家のお嬢様なんだが……、


「おおー! とうとうわたくしも、セリウス様のご指導を受けられる日が来たということですわね!! やりました! ひゃっほい!!」


 ……あまりにもバカで人の話を聞かず、しかも自分で勝手に納得して猪突猛進するタイプだから、通っていた学校(お貴族様としての人間関係作りのためにちゃんと通わないとダメなところだ)を自主退学してこの街にやって来たという、ヤバい奴だ。


 何がヤバいって、地雷ガマに吹き飛ばされて死にかけたってのに、何の対策も講じずにまた翌日にはダンジョンに潜ろうとするあたりが特にヤバい。


 つまり素のコイツには、自分の失敗を反省して今後に活かす、という成長システムが備わっていないということだ。


 まぁ、ここ2、3週間ほどは姉貴とモルモさんが付きっきりで指導をしていたから、ある程度は反復回路ができていると信じたいものだが。


 それを加味しても、指導をするのに一番難があるのがコイツだと思う。


「うるさっ……!?」


 はしゃぐラナの隣にいるチンチクリンが、ラナの声のあまりのうるささに顔をしかめた。


 このチンチクリンが仮弟子二号。

 ござるチビのムミョウだ。


 コイツは四闘神(てんじょうしらず)のムサシさんの孫娘で、四闘神(てんじょうしらず)のリーダーのヨイチさんから頼まれて面倒を見ることになった奴だ。歳は16歳。ツバサたちやラナの一つ下だな。


 ムサシさんやヨイチさんたちと同じ真っ黒の髪をおかっぱにしていて、額にはハチマキを巻いている。

 身長はかなり低く、隣のラナと比べるとまさしく大人と子どもぐらい違うし、体型も可哀想なぐらい貧弱体型だ。


 ……昔のユミィを思い出すな。

 女として何の魅力もないつるぺた具合である。


「……タキオン殿。まさかとは思うが、このおっきくてうるさいのとパーティーを組め、などと言わないでござるよな??」


 もっとも、子ども体型ではあっても剣士としての実力はある。

 少なくとも、生身同士なら俺はムミョウが素手でも手も足もでないだろうし、モコウとも良い勝負ができるくらいには、ムミョウは強い。


「もちろん組んでもらうぞ。当たり前だろ」


 そんなムミョウは、探索者として一定の実力を示すことをヨイチさんから求められているのだが、まだ一度もダンジョンに潜ったことがなく、探索者としてはド素人もいいところだ。


 つまり、コイツも育成にスピード感を求められているわけであり、チンタラしてられないという意味では、ラナとは違った意味で面倒臭い奴だ。


 だから昨日とりあえず、幻想体での斬った斬られたを体験させてやったわけだが、


「えーーっ!? 嘘でござろう!?」


「ほんとだっつってんだろ。うるせぇ声出すなションベン垂れが」


「しょ、ションベン垂れではござらんが……!?」


 ションベン垂れだろ。

 昨日あれだけボロ泣きして、水たまりができるぐらいお漏らししたんだからよ。


「わーっ!? わーーっ!!」


「わたくしとパーティーを組んでいただけるんですね! よろしくですわムミョウさん!!」


 ラナが、慌てるムミョウの手をガッシリ掴んでぶんぶんと上下に振る。


「ちょっ、待っ、ていうか力強っっ!?」


「よろしくですわーー!!」


 さて、デッカいのとチッコいのが仲良くなったところで、俺は3人目の仮弟子に目をやる。


 仮弟子三号。

 無表情ピース娘のリンスだ。


 いや、コイツに至ってはモルモさんからお願いされて仮弟子にしたわけだが、どうにも掴みどころがないというか、図太い性格をしているというか。


 今も仮弟子一号と二号がギャーギャー騒いでいるのに、平然とした様子でつっ立っている。


「セリー様。モルモ姉さんから、探索者として活動するなら貴方に弟子入りするように言われたわけなのですが。話の流れからすれば、私もこの2人と一緒にパーティーを組むという話でよろしいのですか?」


 モルモさんから聞くところによると、年齢は16歳。ござるチビのムミョウと同い歳だ。

 モルモさんからすれば10歳以上も歳の離れた妹ってことになる(モルモさんは28歳だ)から、そりゃあモルモさんも可愛がるはずだな。


「ああ、そうだ。お前たち3人で探索者パーティーを組んでもらう」


 髪型は、モルモさんと同じ薄灰色の髪を後頭部でくるくる纏めて結っている。


 体格は標準ぐらい。体型も少しやせているが、標準の範囲内ってとこか。

 女らしいメリハリはつき始めているし、このまま成長すればちょうどモルモさんぐらいの体型になりそうだな。


「……私は、モルモ姉さんと組みたいのですが?」


「それなら尚のこと、モルモさんと同じぐらいの実力を身につけないといけないな。そして都合のいいことに、当面のこのパーティーの到達目標はモルモさんたちと同じ一流相当だ」


 この3人で組む理由が分かったか?


「……分かりました。それならお二方、よろしくお願いします」


 ふむ。思ったとおり頭の回転は早いな。

 何が最善か、コイツは常にしっかり考えてるクチだな。


「さて。お前ら3人とも、各々理由があってこの街に来ている。自らの目的を達するためには、探索者として地力をつけ、成長しなくてはならない」


 そして俺は、そんなお前たちを育成するために仮弟子にした。


超一流(銅ダンクリア済み)探索者にして、探索者協会の育成支援準協会員であるこの俺が、お前たちを1か月で一流相当まで鍛え上げてやる」


 ヌルいことを言うつもりも、するつもりもない。

 ビシバシ鍛えてやるから、覚悟をしておけ。


「分っかりましたー!!」


「承知にござる」


「かしこまりました」


 つーわけで。

 まずは行くところがある。


「お! とうとう赤ダンですわね!!」


「違う。探索者協会だ。リンスの探索者登録と、それに合わせてお前たちをパーティー登録する」


「なるほどですわー!!」


 うるせぇうるせぇ。

 声がデケーんだよ、マジで。


 そんなこんなで俺は仮弟子3人を連れて探索者協会に赴き、リンスの探索者登録を行う。


「また、新しい女の子パーティーを作ろうとしてる……!!」


 エリーゼさんにヤバい奴を見る目で見られつつ(とても心外だ)、俺はリンスの登録をする。


 そして出来上がった識別票(タグプレート)に表示されたステータスは、こうだ。


・━・━・━・━・


【名前 リンスピオーネ・メッドバルテ】

【性別 女】

【年齢 16歳】


【消耗度】

HP・100.00/100%

PP・100.00/100%


【ステータス値】

レベル1


知力・E-

心力・F-

速力・F+

技力・F

筋力・F-

体力・F-


【装備品枠・0/20】


【所持品枠・0/20】


・━・━・━・━・


 知力が一番高くて、次に速力、その次は技力、か。


 ……これなら。


「ラナが耐久型前衛、ムミョウが回避型前衛だから……、リンスがやや中衛寄りの後衛をやればバランスもちょうど良いか」


 リンスお前、弓の経験は?


「いえ、まったく」


「それなら、魔法使いみたいに杖で弾を撃つのと、引き金を引いたら弾が出る銃を使うのと、どっちがいい?」


 俺が問うと、リンスは数秒考える。


「……ちなみにモルモ姉さんは、何をお使いなのですか?」


「モルモさんは片手でも撃てる軽量型の機関銃だ。あと、姉貴と組んでいる時は姉貴のガードで大盾を持っていた」


「では、それで」


 おーけー。

 じゃあ機関銃使いの銃士(ガンナー)でいこう。


 こうして、新米女子(レディース)パーティー、輝く旋風(シルフィード)(仮)が発足(パーティー名を空けといて、また訳の分からん名前を勝手に入れられても困るからな)したのだった。


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