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デッド・エンド・カウント  作者: 美咲
第1章 病院生活から
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第6話 最悪な可能性、それから希望

身体を触れられた感触で目が覚めた。

部屋は既に明るく看護師さんは相変わらず顔どころか素肌も見えない重装備だった。

そして手にはオムツが!?


「止めて!」


咄嗟に叫んで看護師の人を止めてしまった。

昨日も経験したけれど慣れる気がしない。


「わぉ!?

 ビックリした。

 おはよう、カナちゃん」


俺の叫び声に驚いた様子で一度は動きが止まったが優しく声をかけて下半身に触れてくる。


(おはよう!)


カナちゃんが頭の中で元気に返事をするが俺はそれどころじゃなかった。

聞き覚えのある声からしてこの看護師は先生を呼んでいた若い女性の看護師だ。

それも可愛い系の美人さん。

あっあっ!?

今、股がスッとした!

見られてる、触られてるぅ!?


「めっちゃ眠い…違う!

 腹ペ…違うってば!

 オムツは大丈夫ですから!

 それよりトイレは自分で行きます!

 それとおはようございます!」


と口では言ってもトイレに行くだけでも難しいのは俺だってよく分かってる。

暴れたいのに身体はちっとも動いてくれない。

自分で立つのはおろか、支えてもらって身体を起こすだけでも体力を消耗する。

せいぜい、顔を看護師から少し背ける程度しか抵抗できない。


そんな俺を見て看護師は困ったように笑ったが口と手は止まらない。

俺に対して気分や体調を尋ねながらものの数秒で処置を終わらせた。

俺は恥ずかしさで色々と叫びまくって、看護師の問いかけにまともに応える事は出来なかった。

尋ねられた体調だけ熱と空腹と眠気だけは伝えたけど、それ以外は感情のまま叫んでたし。

これで手足も動けたら大暴れ間違いなしだっただろう。

服を整えてもらってようやく落ち着いてちゃんと会話ができるまでなった俺に看護師は今日は検査を休みだと言った。


「あの、それならスマホを棚から取って…下さい。

 ちょっと調べたい事があって」


実はカナちゃんはスマホを持っているらしい。

さらにこの病院、というかカナちゃんが寝ている部屋は個室でネットワークに繋げても問題ないという。

ならば使わない手はない。


「スマホね?

 …今までステーションで預かってたから充電が切れてるかも。

 昼前には持ってくるね。

 そ・れ・と!

 夜更かしは身体に良くないからね」


夜更かしを釘刺して看護時は部屋から出て行った。

昨日はカナちゃんの質問を寝落ちするまで答えていたが、夜中に何度か部屋の入り口が開いて俺の様子を看護師だろう人が覗きに来ていた。

最後に時計を見た時は深夜3時過ぎ、立派な夜更かしだ。

眠気はそれが原因だろう。


「それにしても夜更かしした割には頭痛とか無いんだよな」


子供には眠くなる時間だろうけれど…

俺が身体の主導権を握っている影響か?

いや、俺でも辛くなる時間帯だけどさ。


「カナちゃん。

 眠気とか空腹とか感じる?

 頭が痛いとか熱っぽくてきついとか?」


(ううん。

 大丈夫!)


俺が今感じている症状をカナちゃんに聞いてみたが返ってきたのは元気な返事だった。

少なくとも声から我慢している様子は感じない。

カナちゃんは身体の不調を何も感じていないようだ。


「そっか。

 やっぱり俺がそこを肩代わりしてるって訳か。

 それじゃ視界や聴覚は?」


(えっと…しかくって?)


「ん?

 分からない?

 えっと、カナちゃんがどんな風に見えてたり聞こえてたりするんだ?」


(それならね!

 おっきなテレビで見てるみたい!)


「テレビかぁ。

 ちなみに今は何が見える?」


俺は顔を少しうつむかせて壁にかかった時計に視線だけを向けてカナちゃんに尋ねてみた。


(とけい!)


「オッケー、時計だな。

 …これから何を見るかは気を付けないとなぁ」


(うぅん?)


カナちゃんが見ているテレビには俺の視界が映し出されているようだ。

ならば音は俺の聞いているものだと考えるべき。

…あれ、ゲームとか制限されない?

小学生ってR18はダメだっけ?


(アクマさん)


「なに?」


ぶつぶつと考えている事が口からポロポロ出ているとカナちゃんの声が頭に響いた。


(アクマさんはスマホで何を調べるの?)


「まずは…俺の死だな。

 まさかとは思うけど…

 ここが平行世界って線も考えられるから」


死という言葉を口にした時、家族の顔が思い浮かんだ。

父さんと母さんは泣くだろうか。

放任主義の代表格みたいな人達だったし、子供よりも趣味を優先するような親だった。

俺の葬式なんかせずに趣味を優先してそうだな。

あのバカ共は…俺の宝物(ゲーム)を全部売り払って山分けでもしてそうだな。

そして売ったお金が少ないとか文句を言ってるんだろう。

呪うぞバカ共め!


(へいこうせかい?)


カナちゃんが棒読みで聞き返してきた。

小学生にはまだ早い概念だったか。


「そう。

 俺の知ってる世界と少し違う世界。

 例えばカナちゃんが男の子だったりとか」


(カナが男の子なの!?

 あはは!

 カナにちんちんがあるの!?

 うふ、あはは!)


頭の中でカナちゃんが楽しそうに笑いながら男性器を連呼しだした。

子供か!?

本物の7歳児だったわ!


「例えばの話!

 女の子がちんちんなんて言わない!

 ニュースを調べれば俺の事故について出るだろうし。

 …最悪DEC(デック)最新作が無い世界とかもあり得る。

 考えただけでめっちゃ嫌だな」


DEC(デック)最新作が売られていない世界という地獄を想像してしまい俺は感情のまま呻き声をあげるゾンビと化した。

もうダメだ、生きる気力が激減した。

もしそうならショックがデカ過ぎる。

これはもうDEC(デック)シリーズを通して遊ぶしか心のモヤは晴れないだろう。


(…もし、ここがへいこうせかい、だったら…

 アクマさんは帰りたい?)


今まで元気だったカナちゃんの声の勢いが急に落ちた。

今までの元気な声との落差からより一層、寂しそうに感じてしまう。


「なんだよ、急に寂しそうに言いやがって。

 こっちが申し訳なくなるだろ。

 ………そうだなぁ。

 ここが平行世界かはさておいて…

 元の身体に戻れるなら戻りたいなぁ。

 まだ遊びたいゲームが家にあるし」


(ゲームならカナの身体でやっても良いよ?)


「………ホント?

 マジで良いの!?

 それじゃアプリを入れよっかな!

 カナちゃんは好きなゲームとかある?」


(かけっこ!)


「おぉん、まさかの体育会系発言!

 …あれ?

 カナちゃんって走れたの?

 うぎゅ!」


皮と骨だけのような身体で?

そんな言葉を手で物理的に潰しながらカナちゃんに聞いた。


(うん!

 動くイスに乗って押してもらうの!)


「それってかけっこか?」


こうしてカナちゃんと話していたら思った以上に時間が過ぎていたようで重装備の看護師の人がカナちゃんのスマホを持ってきてくれた。

カナちゃんとの会話は俺自身が思っているよりも楽しんでいるようでまるでゲームをしている時のように時間が早く過ぎていく。


小さな女の子と話すのが楽しいって事案じゃないですか。

一人ツッコミをしながら俺は笑った。

カナちゃんの身体に入ってから初めて笑った気がする。

もし、元の身体に戻れなくてもカナちゃんと楽しく生きていけるかもしれない。

俺が思ったまま口にするとカナちゃんがずっと一緒に居ようって喜んでた。

頭の中で響くカナちゃんの言葉に俺はまた笑った。

まぁ、そんな生活も悪くないかもしれない。


それと今日はお風呂にも入れるらしい。

重装備の看護師の人がスマホを届けるついでに伝えてきた。

カナちゃんは喜んでたけど、俺は羞恥心から叫びまくった。

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