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デッド・エンド・カウント  作者: 美咲
第2章 学校生活から
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第22話 干渉できる能力

---------------

【歪曲(ワイキョク)】

熱量を消費して対象を捻じ曲げる。

---------------


それが大門(おおかど)さんに首を折られて得た能力だ。

発動すると半透明の大きな両手が現れる。

何故か大門さんの両手に見える気がしてならない。

そんな親近感のある半透明の手は俺達以外には見えず、物理的に触れない。


だが、両手が物と重なるとそれの硬さを無視して捻る事ができる。

それこそ、ペットボトルのキャップを開けるかのように簡単に。


有効範囲は俺の視界に写る場所。

当然と言うべきか、この能力もカナちゃんの意思で発動でき、俺に止めるすべは無い。


つまり…


「カナちゃん?

 もう満足した?」


(んん…

 もうちょっと、したい!)


半透明の両手が筋肉質な男性を模った石像の上半身と下半身にそれぞれ重なるとまるで雑巾でも絞るように腰の部分が捻れて壊れていく。

完全に上半身と下半身が別れると半透明な両手はすぐに消えた。

しかし、再び現れるとまだ壊れていない部分へと近付き重なって壊していく。


石が割れる音とカナちゃんの楽しそうな笑い声が頭に響く。


俺達は大門さんに頼んで、壊しても良い物がある場所を探してもらい、遠出までして山奥にあるゴミ処理場の埋立地へと来ている。


燃やす事も再利用する事もできないゴミを捨てるこの場所は確かに俺の要望もカナちゃんの破壊衝動の矛先としても都合の良い場所だった。

あとは財力にものを言わせて人払いをし、ゴミを壊している。


カナちゃんは難病を患っていた。

病気に侵されて動けなくなくなり、俺という異物が体を乗っ取った事により何もできなくなってしまった彼女にとって今回得た能力はとても魅力的だったのだろう。


【歪曲(ワイキョク)】を試しに使ってからカナちゃんは何かを壊す事にハマってしまった。

物が視界に入る度に壊して良いか聞くようになってしまったのだ。

更に何か要望がある時は【歪曲(ワイキョク)】を使うと脅してくる始末。

目を瞑ると能力を強制解除できる事はこの時に知った。


何度も聞いてくるカナちゃんにたまらずダメと強く言ってしまい、それを大門さんに聞かれてしまい理由を問いただされた。

俺が渋々カナちゃんの要望、なんでも良いから壊したいという破壊衝動について答えると大門さんは重々しく頷き至極当然のように答えた。

曰く、お嬢様の願いは叶えるべし、だそうだ。


とは言え、家にある物を手当たり次第に壊されてはたまらなかったのだろう。

俺の提案にすぐに乗ってくれた。


ゴミを嬉々として壊すカナちゃんにかれこれ数時間は付き合っている。

こっちはゴミが壊れるまで見つめ続けないといけなず、正直に言って退屈だ。

しかし、我慢をさせて爆発されてはたまらない。

石や金属さえも紙を破るかのように捻られる光景を見ては生物も容易く捻る事が可能だろう。


うん、人が紙粘土のように捻り殺されるなんてグロいのはごめんだ。


既に日は沈みかけ、周囲を見渡せばだいぶ暗くなってきた。

今日が土曜だからって夜遊びは感心しない。

帰るべき時間はとっくに過ぎているし、肌寒く感じているのは日が沈んでいくだけでは無いだろう。


明らかに熱量の消費が原因だろう。

限界が来る前に止めるか。


「カナちゃん、そろそろ辞めないと俺が死ぬぞ?」


(えぇ!?

 もうちょっとだけ!

 あと一回だけ!

 お願い!)


そう頭の中で叫ぶと半透明の両手が現れ、一際大きな熊をモチーフにした遊具に重なりゴキゴキと豪快に音を立てて壊されていった。

その様はここに捨てられた遊具の悲鳴にも聞こえ夜の山に響くその声はとても不気味で何か悪い事の前触れのように感じた。


その日、家に帰れたのは9時過ぎだった。

珍しく妙さんとドーンさんが家に帰ってきていた。二人揃って神妙な顔をして並んで座っていたので何かあったんだろうなとは最初から思っていた。


「まずはこれを見てちょうだい」


妙さんが俺達に対面に座るように指示した後にドーンさんがパソコンでとある動画を流した。


そこに映っていたのは…見覚えのあるモンスターだった。


赤い薔薇色の肌、人よりも横長な黄色の目、長く尖った鼻と耳、常に笑ったような口、頭頂部にひと束に結ばれた深緑の髪、所々骨が突き出た痩せた躰、血濡れた手斧を背負った人型の異形。


「レッドチョッパー?」


レッドチョッパー。

プレイヤーの間では色と斧を使う所からレップと呼び親しまれているDEC(デック)シリーズに必ず出てくるモンスターだ。

何処からともなく現れて背負った手斧を振り上げて集団で襲ってくる、厄介な敵。

お陰様でいくつもの耐性能力を得てしまった事か。


動画には5匹のレッドチョッパーが建物の中を彷徨いている様子が映っていた。

造った人はとびっきりのDEC(デック)ファンに違いない。

レッドチョッパーの特徴や仕草を良く理解して表現できていた。

俺は思わず感嘆の声を上げつつ初めて見る動画に魅入った。

多分、合成だろうけれど不自然さが無くまるで現実に現れたモンスターを撮っているようで…


そこでふと疑問に思った。

わざわざ二人がDEC(デック)の創作動画を見せるだろうか。


「もしかして…ホンモノ?」


「…えぇ、これは合成じゃない。

 博多で発生した大量殺人事件。

 その建物に設置されていた監視カメラの映像よ」


ゲームが現実に侵されている。

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