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デッド・エンド・カウント  作者: 美咲
第1章 病院生活から
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13/30

第13話 嘘から出た真になれ

ついにこの時が来た。

怪我も病気もしてない奴が病院が居たらどうなる?

答えは退院さ!

これでようやく計画を進める事ができる。


俺は期待とも不安とも思える感情を秘めながら上里(うわさと)さんを始めとした関わった看護師やリハビリの先生、精神科医の山﨑(やまさき)さん達に見送られて病院を出た。


身動きどころか顔の方向さえ変えられない程の厳重なチャイルドシートに固定されて車で長距離を走り辿り着いたのは海上で造られ今も整備され続けている最新都市、その中央に立つマンションの一部屋に俺はカナちゃんの両親と対面している。


「………」


「………」


「………」


(アクマさん!

 話して!

 ママとパパと話して!)


俺は反論しようと開く口を無理矢理に塞いだ。

この重たい雰囲気で俺が先に口を開けと!?

何から言い出せば全然分からんのだが!?

なんせ、病院内で行ったリモート挨拶から一切の交流がなかったからな!

カナちゃんの母親が体調不良だった事もあるし、俺が言い出した二重人格の設定も重く捉えられた可能性もある。

二重人格なんて記憶喪失ぐらいありふれた設定だろ!?

あんな長い期間、会いに来ないなんて思わないだろ!?

これがギャルゲーだったら破綻してるぞ。


カナちゃんの母親は困惑しているように見える。

視線が何度も合うがその度に逸されている。

俺と同じように何を話せば、何を聞けばいいのか分からないのかもしれない。

カナちゃんの父親は…何を考えているのか分からない。

外国人だから表情が読めないうえ、未だに声すら聞いてないからな。

話してる所は見たけれど聞き取れないし。


だから俺は二人がどんな性格でどんな考えで行動してるのか分からないから何を言えば二人が俺達の計画に賛同してくれるか検討も付かない。

一応、カナちゃんから一通り聞いてはみたものの子供と他人じゃ対応も違うだろうし。


こんな計画の前段階、必須条件の獲得に失敗する訳にはいかない。

俺達が来年までに97回死ぬにはどうしても二人の協力が欲しい。

けれどそれをどう伝えるべきなのか。

娘さんにあと97回自殺してほしいから協力してほしいと聞いて頷く親が居るだろうか?

少なくとも俺の常識範囲内には存在しない。


けれども、やはり話さなければ始まらない。

俺は大きく深呼吸を数回して落ち着いたと感じたら口を塞いでいた手を少し緩めた。

いつでも口を塞げるように片手で覆い病院で書いていたノートを開いて俺は話し始めた。


「まずは初めまして。

 お母さんには名乗りましたがもう一度。

 俺は満月(みづき)です」


「え…えっと、妙(たえ)です。

 こっちはドーン」


妙さん、ドーンさん。

………よし、覚えた。


「まずはお二人にお尋ねしたい事があります。

 俺の気遣いで固めた嘘を聞きたいですか?

 俺達でもよく分かっていない真実を聞きたいですか?」


どちらも最後に伝えるべき事は同じだけれど。

できれば嘘の方を選んで欲しい。


ドーンさんは微動だにせず、妙さんはオロオロと狼狽えていたが一度、天井を見上げると決心したようにこっちを見つめ直した。


「………それじゃ真実を」


「………分かりました。

 真実を求めるならばお話ししましょう」


俺は真実のみを打ち明けた。


俺がカナちゃんの身体に入った時から今日この日までの出来事をノートを見ながら話していった。

淡々と、気持ちを込めずに事実だけが伝わるように。


カナちゃんの死。

俺の正体。

カナちゃんと俺の現状。

心の声が出る体質。

DEC(デック)というゲームに酷似した能力。

既に獲得した三つの能力。


能力に関しては変○(ヘンカン)を見せた。

水の入ったお皿を二つ用意してもらって片方に手を突っ込んで水が早送りのように干上がっていく様子を見せた。


再○(サイセイ)を見せるには傷を作らないといけないし低下(テイカ)を見せるには元の能力の効果を知ってないと分からない上、見た目じゃ分かりにくいからな。


妙さんはカナちゃんが死んだと聞いてからずっとなんでと呟きながら泣いていた。

ドーンさんは語らずに俺の方をじっと見ていた。


「以上が俺が知っている真実です」


妙さんの嗚咽を聞きながら考える。

二人はどれだけ理解ができただろうか?

これから先の事を話しても大丈夫だろうか。

………いや、今だからこそ。

絶望している相手だからこそ、一縷の希望に飛びつく。

希望は希望でも希望的観測だったとしても。

己の性格の悪さに自己嫌悪になりながら考えついた内容を口にした。


「それと現状は長く続かないかもしれません」


「うっうっ…ぐすっ…

 もたないって?」


妙さんが涙を流しながらこちらを見た。

今から騙る嘘を信じてほしい。

俺が、俺達が戻れる唯一の道を邪魔しないように。


「俺自身の延命治療が来年の7月までだからです。

 俺本体が死ねばカナちゃんの身体から消えるでしょう。

 そして、それはカナちゃんの死にも繋がります」


嘘。


「今の俺はカナちゃんと命が繋がってます」


そんなの知らない。


「一方が死ねばもう一方も死ぬ」


俺だけがただ言っているだけ。


「解決する方法は一つだけ」


これは本当。

どんな願いでも叶えられる可能性が、たった一つだけある事を俺は知っている。


「俺の身体が死ぬ前にこの身体に100の死を体験させる」


「ただ、それだけです」


あぁ、本当に自分が嫌になる。

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