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いちごを摘みに

この話にはへびが出てきます。

苦手な方はご注意ください。



 あきは冬いちごを摘みに、1人で森の奥へ奥へと入っていった。


 季節はすっかり冬らしくなり、ほんの2、3日前まで赤く美しかった家の近くの紅葉も、今ではきれいに葉を落としてしまっている。


 世界がいきなり冬支度を始めたような中、あきは思い立って冬いちごを集めに家を出た。


 誰かに話すと怒られそうな気がしたので、黙ってこっそりやってきた。




 冬に赤く熟するから、冬いちご。


 冷たい森の中で赤く色づく冬いちごのジャムは、(おお)姉ちゃんが大好きな冬のごちそうだ。


 あきは六人きょうだいの末っ子で、一番上の大姉ちゃんは春に結婚して家を出ていった。

 昨日は久しぶりに帰ってきてあきと遊んでくれたのだが、お腹に赤ちゃんがいて、来年にはあきがおばさんになると言っていた。


 あきはまだ6才だ。

 来年、尋常小学校の一年生になる。


 この年でおばさんになるのは早いんじゃないかと思ったが、赤ちゃんが産まれたらあきにも抱っこさせてくれるそうなので、まあいいかと思っている。


 それで、大姉ちゃんが大好きな冬いちごのジャムを作って持って行こうと、あきは1人で森へ冬いちごを摘みに来たのだ。





 足元のたくさんの落ち葉をさくさくと踏み鳴らし、人気のない静かな森の中をあきはずんずんと進んでいく。


 本当は1人で森へ来てはいけないのだが、お昼までに帰ればきっと大丈夫だろう。


 そんな事を考えていて、あきは分かれ道を見逃してしまった。

 おかしいな、おかしいな、と思いながらそれでも小さく歌を口ずさみながらまっすぐ進んでいく。

 いつか右に行く道が見えるだろうとそう信じて。


 しばらくずっとまっすぐ進むうちに、あきは道を間違えてしまったのではないかと気がついた。


 来た道を戻ろうか。

 でも知らない道を行くのは楽しい。

 もう少し行けば、見たことのない何か素敵なものがあるかもしれないのだ。


 すると、道の先が開けているのが見えた。


 近づくと、そこには小さな池があった。


『森の奥には行ってはだめよ』


 お母さんの声がする。


『森の奥には池があってね、むかしはそこで神様に生贄を捧げていたんだ』


 おばあちゃんが怖い顔をする。


『行ってはだめよ』

『怖い神様がいるからね』


 ここがその怖い神様の家なのだろうか。

 それにしてはそれは、とても小さな池だった。


 池のそばにあきが近づくと、足元から声がした。


「それ以上、先に進んではいかんぞ、子供」








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