あの子の闇
ずっとくっついてて仲がいい二人だった。
いつもずっとベタベタくっついてて羨ましかった。
話してるときも楽しそうな二人。
きっと親友なんだろう。そう思ってた。
ある日、二人のうちの一人が私に話しかける頻度が多くなった。
まあまあ話すクラスメートだったので話しかけられたら返した。
たまに私から話しかけるときもあった。
そのうち、私達は友達になった。
LINEも交換して、好きなゲームを一緒にプレーして。
休み時間中にいつも一緒に行動して。
でも、もう一人、その子の友達もいて。
私達は三人でくっついてた。
私は本当に仲良くなりたいと思っていたし、嫌いなんていう感情はなかった。
だけどね、ある日、その子の友達が先に用事があって先に帰った時。
珍しく、私達二人だけで帰ることになった。
「二人だけって久しぶりだね」
「そうだね。いつもあの子がいたからね」
なんて他愛のない話。
それでも私達は友達だと思っていた。
「……二人だけっていいよね」
その子がいきなり、そっと呟いた。
「……え?」
「あのね……私あの子のことあんま好きじゃないんだよねえ……」
その子は小さな声で呟いていた。
だけど、風にもかき消されないはっきりとした声だった。
意味を理解した私は目を見開いた。
「あの子って……今日先帰った……」
「正直、嫌いかも」
その子は肯定と言える言葉を囁き声で吐いた。
一瞬、耳を疑った。え、は?って。
だけど、その子の顔を見ると嘘じゃないって分かった。
「えー?でもいっつも一緒なのに?」
慌てて聞き返す。
きっと嘘だって。そんなはずないって。
「だからそれはベタベタくっついてくるんだけで……私はあいつに推しをパクられて嫌いだから」
「……どういうこと」
「私とあいつの好きなゲームで話してて、推しのこと言ったら次の日、私も推すーってパクってきたんだよね」
「……それはまあ……」
なんて言っていいか分からなかった。
パクリ。悪い感じだけどたった些細なことでそんなことが起きるなんて。
それに、嫌いならあんなにベタベタくっつかないはずなのに。
「いっつも体育の時ジャージ着てさ。私可愛い子アピールして、きしょ」
「……──」
確かに、あの子はジャージを暑い日でも来てる。
でも、それはあの子の肌が弱いだけで。その理由だって分かっているはずなのに。
ずっと一緒にくっついてて密着してて、親友な感じだったのに。
どうしてそこまで言うの──。
ああ。
結局、私には友達ができない。
今までに仲良くなった人も陰口がすごかった。
その人とはあまり関わらないようにしていたから話すことも段々減っていった。
そして、ちょっと面倒だなと感じる人だっていた。
最初は普通に仲良くなろうと思っていたのに急に面倒に感じたこともある。
そういう人は段々話しづらくなって合わなくなって離れていく。
無理に付き合っていても私が疲れるから自然と距離が開いていった。
今は友達なんていない。
ただ、友達に見えるクラスメートだけ。
私は心の中にどす黒い闇を抱えている。
きっと、それは消えることのないのだろう。
そんな感情を愚痴として出したことはないが、何度も出しそうになった。
だから、その子の気持ちもほんの少しだけ。少しだけだけど分かった気がした。
その子が私とまだ友達だった頃、最後に言った言葉今でも覚えている。
「私も含むけどさ、女子って結構嫌いだけどくっついてる人って多いんだよ?離れられないから悪口になるんだよ?私もだけどさ……」
「……へー、……」
「女子って結構闇を抱えてるよねー」
「そ、うだね……」
苦しくて苦しくて。なんて言っていいか分からなくて。
苦し紛れに返答した。
私だって闇を抱えている。その子だって抱えている。
うわさではクラスメートの何人かもそんな人がいる。
悪口はいけないこと。分かってる。分かってるけど。
なぜか友達関係でそんなことが起きるのに少しだけ同情してしまう。
その闇を我慢できるかできないか。
きっと我慢できないと思う。私だって抑えるのが大変だから。
もしかしたら女子だけじゃないのかもしれない。
男子だって、大人だって誰だって闇を抱えてるのかもしれない。
ただそれを我慢して上手く隠し通してるだけ。
だから、きっとみんな闇があるんだよ……。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
こちらはジャンルを迷ったのですがエッセイにしました。
ここまではっきりと悪口を言っていなかったのですが、結構友達への不満をぶつけられずに陰口を多く言う子はたくさんいます。
少し、物語はぼかしましたが、ほぼ真実です。
陰口を言う人は何を言っても悪口しか言いません。
悪口はいけないことで、人を傷つけることです。
悪口を言うぐらいなら直接言いましょう。
ですが、人間それが難しくて。
こんなことになるんです。
皆様がこれを読んで少しでも考えが変わったのなら幸いです──。