閑話
親愛なるお父様、お兄様へ。
お二人がこの手紙を読んでいる頃、私は捕まっているか行方不明になっているでしょう。ご迷惑をお掛けしたことを謝罪させてください。謝罪だけでは済まないことは勿論理解しております。せめてものお詫びに封筒に宝石を同封いたしました。この宝石の出所は贈り物とでも思っておいてくださいませ。
本題に入りますが私が逃げ出した理由は『どうしてもギッターニ侯爵様と結婚するのが嫌だった。』の一点のみです。これはただの我儘でございます。一度夜会で侯爵様とお会いした時からどうしても好感情を持てないのです。我慢をしなければならない筈なのですがどうしても生理的に受け付けられませんでした。初めて王家の意思に背こうと思うほどに。侯爵様へは是非、宝石の一つの握りこぶし大の物を差し上げて下さい。あれだけでも最低10億セトの価値は有るはずです。最低限の賠償金にはなるかと思います。
それで話を戻しますが、私は貴族として許されないという事は理解しておりますが、もう、王家に従うことに疲れてしまいました。幼い頃からずっと自分の時間を犠牲にしてきて王妃教育に取り組んできました。それなのに王家の方は、いえ、ウィルフレッド殿下は私の時間を無意味と言うも同然の事をおっしゃいました。私は殿下をずっと臣下として支えていくため、殿下が負担を負わないように学園での生徒会のお仕事、公務を代行し続けていました。魔法が使えなくなったのなら、身体が成長しなくなったのなら、殿下へいつか出来るかもしれない、私にはなれない殿下の愛しい方と殿下のご関係を常に支えられて、お役に立つことが出来たら私は満足だったのです。殿下との信頼関係を築くことが出来たらそれで満足だったのです。
申し訳ありません。また脱線してしまいましたね。もう一度言いますがお父様、お兄様がこの手紙を読んでいる頃、私は捕まえられるか行方不明になっている確率が高いでしょう。ここからは私が行方不明になっていることを前提でお話しします。まず、私を勘当か鬼籍にしてくださいませ。私はもう、この国に帰ることは無いかと思います。私へ全責任を負わせて下さってかまいません。逆に負わさせなければ筋が通りません。そして今後、どの様な手でも偶然ではない限り私と接触しないで下さい。この2点はあくまでもお願いです。私はもう、自由に生きたいのです。私は私が覚えている限りでは一度も我儘を言った記憶は有りません。必要なもの以外、プレゼントも、何もかも、受け取った記憶は有りません。ですからどうか、娘として、妹として最後のお願いを聞いて頂けませんか?
リエルより。
----その手紙には涙が滲んだような跡があった。




