0001プロローグ A
よくあるWW1で中央同盟が勝つ仮想戦記ものです。
ドイツがハチャメチャに多くなっているけれど主役はハプスブルク帝国です。書いててドイツ無双が止まらなくなったので一度だけ某SLGの某神聖ローマ復興ルートにあったヒンデンブルク号事件を流用させてもらってます。といっても41年の話なんですけど、、、読まれる前に言っておきます。ご都合主義展開で申し訳ありません!!!!!まあ、これから不定期ですが更新していきますので何卒よろしくお願いします!
―――この世界では親土的であったドイツ、オーストリア政府が伊土戦争後、イタリアを中央同盟から除外、第二次バルカン戦争にて独墺軍が介入、史実よりもさらに半年早く集結した。他に目立った異常はなく、異様な大戦が始まった。そして・・・
標準暦1918年9月10日 フランス共和国
パリ郊外 簡易司令部
「伝令です!戦車によって前線での戦力バランスが崩れ、塹壕が崩壊寸前との・・・ことです・・・」
「あそこを抜かれればパリまで一直線だ。ここも長くはないだろう。私はこの事を総司令部に伝えておく。今のうちに撤退の準備をしておけ!」
「「「了解!」」」
セルビア殲滅戦から始まった一次大戦は常に中央同盟が一歩先を行った。協商国中東大撤退、ブレスト=リトフスク条約、米国の参戦と傍観に別れる世論の中での強硬参戦、ハプスブルク朝ポーランド第二共和国(現在のルーマニアに近い形)の親独独立。そして現在の夏期攻勢に至る。
パリ エリゼ宮殿(フランス大統領府)
「・・・報告はまだなのか」
静寂の中で声を上げたのは、フランス第三共和国首相だった。
「そろそろ来る頃だと思うが、」
続くのは同国大統領だ。そしてその質問への返答は、政治家でも軍人でもなかった。
チリリリ・・・
電信が鳴る。
「私が出よう、吉報で会って欲しいな・・・」
首相が元帥や大統領を抑えて言った。
「もしもし、こちら司令部」
「もしもし、こちら大統領府だ。戦況はどうだ?」
「首相か。どうやら戦線は限界らしい。今の塹壕線が抜かれるとなればパリまで一直線だ。抗戦するならうちの司令部よろしく撤退の準備をするんだな。ただ、諦めるなら早くしてくれよ。私情で悪いが、こっちとしては俺の部下を死なせたくないんでね」
「・・・そうか、わかった。協議していち早く伝えるよ」
「頼んだぞ"クレマンソー"」
「ああ」
「どうだった」
大統領が聞く。その声は期待と不安が入り交じっていた。
「大統領閣下、ドイツ軍が勝ったとのことです」
「そうか。ならばパリも落ちるだろう。政府機関をヴィシーへ移行し」
「まだ続けるんですか!この勝ち目のない戦いを!」
首相が怒号する。そこには諦めの感情が怒りに混じっていた。本来反独強硬的な彼が怒ってまで降伏を訴えるのは、元凶であるドイツにあった。仮にも陸軍大国であったフランス相手に、ロシア戦線を抱えながらも対等に戦い、ソ連となり大戦からロシアが抜けたあとは、ドイツが常に会戦で勝利している。普仏戦争以降に生まれた新興国にフランスが栄光を得た総力戦を持ってして叩きのめされたのだ。ここで対象の敵を持つような思想は返って好戦的になることが多いが、首相はここで折れてしまった。そこに残ったのはフランスへの愛国心のみ、故にフランス人を守るため、降伏を訴えたのである。
「しかし、ドイツ相手にになんぞに降伏など、考えられん」
「もう兵も装備も数える程しか残ってないのですよ!」
「しかし、もうじきイギリスとアメリカが支援を」
「英米は駄目です!イギリスはともかく、アメリカは世論ひとつ纏められていないではないですか!」
「しかし、、、」
「閣下は知らないのですか!国民の感情を!来る日も来る日もストライキやらデモやら、終戦を望んでいるのは国民です!国民あっての民主主義ですよ!」
「ドイツ側も相当の死者が出ているのだ!負けた時の賠償を考えると負ける訳にはいかん!」
「ロシアの様になりたいのですか!このフランスが、アカく染まった未来を!」
「う、そ、それは、、、」
「反論できないなら決まりでいいですね!ここにいる軍人もフランスに勝ちなしと見ているものが殆どです!」
「わ、わかった降伏しよう。しかし、講和条約でこの国は守ってもらうぞ」
「当然です。それくらいは首相ですから、やってみせましょう。ただ、植民地はいくら残せるか分かりませんよ」
「ああ」
決着は着いたようだ。少し強引ではあったが、間違いではなかったのだろう。
「私だ」
「もう決まったのか。早いな」
再び通信をかける。
「ああ。フランスは降伏する。お前の部下達も家へ帰る準備をさせておけ」
「そうか、ありがとう。よかったのか?」
「私は折れてしまった。ドイツへの復讐はいずれ、ドイツが衰退した時、その時の若者に任せるよ」
「そうか」
「ああ」
ここでの首相の説得が、フランスを降伏へと導くが、それが共産化を止めることには至らなかったことを、ここに居る者は、誰も知らない。そして、8年後、後悔することとなる。
翌日 11日 イギリス 首相官邸
「フランスが降伏だと!」
外交官に急に呼び出されたかと思えば、とても信じたくない情報が伝えられた。
「は、はい」
こいつも滅入っているのはわかるが、呼び出した側なんだ、威勢は保って欲しい。まあ、流石に無理もないのだが。
「荒ぶってしまったな、降伏の理由はなんだ」
怒鳴り倒しても仕方がない。冷静に見極めなくては。今は人類初の大戦なのだ。
「まだ機密ですので、明確には分かりかねますが、大まかには装備の備蓄や徴兵人口が底をつき、国内労働者を纏めるのですら手一杯とのことです」
「そうか。こちらも労働者にはてを焼いている。しらぬ続けろとはいえんな」
こっちでも先日、バーミンガムで大規模なストライキがあった。実の所、こっちもなかなか厳しい状況なのだ。正直言って、ロシアの時(革命時)に講和しておくべきだった。だがいまさら「ドイツ思ってたより強いです。ボロボロはいやです。講和させてください」だなんて国民にも中央同盟にも言えない。
「とりあえず、押すも引くも会議からだ。大臣を招集しろ。最悪軍事系と外務を、集めれるだけ集めてくれると嬉しいが」
「わかりました。8割は集めてみせましょう。ところで、」
「なんだ?」
「先程の「押すも引くも会議から」というのは誰かの言葉でしょうか」
「ああ、それか。すごいぞ、世界帝国の首相が放った至言だ」
大きく見せてはいるが流石に外交官も分かっているだろう。要はなんとなしに思いつきで言っただけだ。
「なるほど。世界帝国ですか。それはすごい。これから嫌という程使わせていただきます」
完全に理解している口ぶりで放つ。半世紀前に生まれたばかりの国にここまで押され、独立した旧植民地におんぶにだっこだという状況でありながら世界帝国を名乗っているという皮肉を拾ってくれて有難い限りだ。
「はは、やめてくれよ」
共に戦う国の中でも主要国が陥落しようとしているのにしては随分呑気な会話は、ここに終わった。
翌日 12日 イタリア王国 クイリナーレ宮殿
「フランスが降伏を発表しました」
「そうか」
淡白に伊国首相が返す。わかり切っていたことだ。今どうこう言ったところで変わりない。
「かの国はもう未来永劫だめかも知れんな」
「そうですね。首相」
「さて、フランスが落ちたとならば、欧州大陸に残されたのは我々だけだ。流石にフランスを通ってピエモンテ方面から雪崩てくることは無いだろうが、それでも厳しいことに変わりない。どうする」
とは言っているが、自らの心は決まっている。ドイツのやつら、瀕死の病人なんぞを相手に簡単にイタリアを切り捨てやがった。そう簡単に許しはしない。
「私は抗戦でいいと思いますよ。備蓄や国民感情も英仏に比べればかなりましですし、なにより、まだアメリカが動いていないのでね」
「ほう、そうか」
以外にも抗戦を望む輩もいるものなのだな。と、思う。
「俺もいいと思う。兵士たちはドイツへの苛立ちで士気MAXだ。全然行けるぜ」
陸軍元帥が言った。海軍元帥も頷いていることから、どうやら本当らしい。というか、この会議の中で反対するものがろくに居ない。よほどドイツが嫌いなのか、ならば、
「皆も意見は同じようだな。では抗戦ということで、問題ないだろう。近いうちに国民へも伝えようと思う。戦略は陸海協力してしっかり練るんだぞ。止めどきの今に続けるということは、そう簡単にまけられるものでは無いからな。では、解散!」
気付いている者も居るだろうが、この会議はたった1点。そして本来考えずにはいられないはずの致命的なものが考慮されていなかった。それは、露、仏を降した中央同盟の軍事的戦略、技術である。この判断により、イタリアは一級敗戦国の名をフランス、セルビア、ベルギー、ルクス、ルーマニアと共に連ねることになる。
同日12日 大日本帝国 首相官邸
「フランスが中央同盟への降伏を発表しました」
「ふむ。やはり大戦輸出政策は成功に終わりそうだな」
大戦輸出政策は、首相を元に始められた政策で、ほぼ全ての閣僚が理解を示している。要約すると、ブレスト=リトフスク条約によるロシアの大戦脱退で敗戦を悟った首相が、戦後に軍需物資の需要が減り、輸出に膨大な問題を抱えることを見越して少しづつ軍需物資の生産を他の産業分野へ移行していき、必要以上の生産を18年上半期で終わらせるというものだ。これは首相の思惑通り成功を収め、四大恐慌(戦後、震災、金融、昭和・世界)の内戦後恐慌の直接的要因を絶ち、以後の経済政策の見直しによって金融恐慌にも間接的に良い影響を与えることとなる。
「はい。そうなりそうですね」
「ああ、一応今後について会議をしておこう。まあ、軍とは揉めることとなるだろうが、世論は政党の時代だ」
「わかりました。各閣僚に伝えておきます。」
翌日13日、独仏間での休戦協定の交渉が始まった。そして一週間後「コンピエーニュ休戦協定」が締結された。内容は、
- 戦後条約に際し、中央同盟の勝敗に関係なく、ナンシー地方を割譲。終戦までダンケルク工業地帯の一部利権の委託。ドイツのルクセンブルク併合の承認。終戦までの間フランスのイギリス海峡沿岸地域での航空基地の租借。いかなる場合におてもこの協定を破棄しないこと。
- 中央同盟が勝利した場合、経済力に乏しいベルギーの賠償を、フランスが受け持つこと。中央同盟による賠償請求を一定値(双方合意済み)を限界とすること。いかなる場合に置いても戦後条約から30年間現在の第三共和政を唯一のフランス政府と認めること。
- 連合が勝利した場合、フランスはドイツに対し賠償請求を行わないこと。そしてドイツに対し領土要求をしないこと。
と、なった。フランスにとって一見厳しものに見えるが、講和条約でいきなり地獄のような要求をされることを考えると身構えておける分余裕があると思われる。まあ苦しいことに変わりはないのだが、
その後、大陸で孤立したイタリアはアルプス山脈で防衛を行うも、オーストリア決死の行軍により、アルプス防衛戦は崩壊。さらに、一月後、独墺連合軍によるマルケ上陸が敢行。イタリアは細い国土で二つの戦線を抱えることとなった。その後は塹壕の構築が間に合わず、ずるずると侵攻され、ローマが陥落した1919年5月3日、イタリア政府は降伏を発表した。そして・・・