1話
頑張る
「はぁ・・・しんどい、疲れた、死なねぇかな、マジで」
俺の名前は深月 海凪だ。
年齢は35歳。職業はまぁ黒い場所で働いてますとでも言っておこう。
いい歳こいたオッサンがなんでこんなセリフぶちまけて、挙句心の中でこんなこと語ってんだ?と思ってることだろう。
理由は簡単。
なんかこういうプロローグを心の中で言っとけば異世界行けたりしないかなー?と思っていたからだ。
オタク文化に触れ始めて早25年。もうだいぶ前から消費者でいることに我慢が出来なくなっていた。
ぶっちゃけ飽きた。
生産者側に立てば少しはこのどうしようも無い感情をどうにか出来ないかと考えた事もあった。
自分には演技の才能も、絵の才能も文才もないことなんてわかり切っている。
案の定声優や漫画家や小説家にはなれなかった。
今は黒い職場でサラリーマンのようなことをやってる。
今の俺に生きがいなんて無いし惰性で流されるままに生きてる人生。
ぶっちゃけ死んでるのと大して変わらないと思っている。
だから今世にさっさと見切りを付けて来世にワンチャン異世界行けたりしないかなーと思っていたわけだ。
未だに童貞なのもそのうちの1つ。
童貞のまま30歳越えたら魔法使いになるとか言うしやってみようと思ったから。
別に女に好かれるようなルックスしてないし、好きな人とか出来た事ないし、性欲も大して多くない。
睡眠欲と食欲が3大欲求の大半を占めてる。
金を払って性欲を満たしたいとか馬鹿らしいと思っていたから出来た事だ。
死なねぇかなーなんて口に出すくらいなら自殺すればいいじゃんと皆さん思われることだろう。
だがしかし、自殺をすれば異世界に転生出来ないんじゃ?と思っている。
と、理由を付けている。実際はただ単に怖いから出来ないだけだ。
大きな事故に会うことも無く、死に繋がる病気にもなった事はない。
今までの人生で怪我は極軽傷のみ、病気も主には風邪くらいだ。
太ってるわけでも無く、酒もタバコも金の無駄だからやってない。
少し働き過ぎて疲労が蓄積してる以外では超健康優良児なのだ。
もはや事故を期待するしかないな、と思う今日この頃である。
理想は大型トラックに撥ねられて死亡。
異世界転生のテンプレここに有り。って死に方してみたい。
という事を考えていたらつい口に出してしまったのだ。
死にたいとか人混みの中でボソッっと言うとか周りからドン引きされて精神科に連れてかれる案件だ。
ま、深夜だから誰も聞いてないんですけどね。
ハハッ・・・虚しい。
ドンッ・・・
は?体が中に浮いてる。あとめっちゃ痛い。
どうやら当たられたっぽいな、即死じゃなかった様だか深夜で人通りが無いからなここは。
多分死んだなこれ。・・・意識が朦朧としてきた。
最後に確認せねば・・・はっバイクかよ・・・せめて車にしてくれよ・・・