表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

プロローグ

 俺の名前は尾奈 新人(おな にいと)。高校二年生の17歳だ。



「今日はどれで抜こうかな~」



 今、俺は自分の部屋にあるパソコンで大手動画販売サイト『ENN』のホームページをチェックしている。このサイトは主に18歳以上向けにアダルトな動画を販売しており、高画質、低料金、豊富な種類が日本の紳士諸兄に大ウケで、国内シェアの実に6割をしめている。

 俺は約一年前からこのサイトにお世話になっている。年齢規約を完全に無視しているが、あふれでるリビドーには勝てなかったよ……



 同級生のなかには『zvideos』などのサイトを利用している人も多い。理由は単純、無料で動画を視聴することができるからだ。俺はこいつらを批判するつもりはない。ただ、裸をさらしている男優や女優の方々には敬意を払うべきだと思う。



「やっぱりいつもの奴がいいな」

 


 迷うこと10分。最終的に選んだのはいわゆる『時間停止系AV』だった。

 これは名前の通り、『時間を止めて無抵抗な女の子にイタズラをする』というもので、俺が最も愛しているジャンルである。初めて見た時はギャグか何かと思ったが、今ではすっかり虜になってしまった。



 ティッシュを用意して、いざ再生開始。いつものようにマウスのボタンを押す。カチッと音がして、俺は突然意識を失った。





◇◆◇





「ここは……どこだ?」



 気がつくと、見覚えの無い場所に1人ぽつんと立っていた。1発抜こうとしていた自分の部屋ではない。周辺には霧のような、もやもやしたものが漂っており、ある種の神々しさを醸し出していた。



「君は選ばれたんだ」



「誰だっ!?」



 突然の声に振り返る。そこには先ほどまではいなかったはずの老人が立っていた。白い服を着ており、金髪で立派な口ひげを携えている。この人は神様か? と聞かれたら10人中10人が神様だと答えるような風貌だ。



「儂は『時間停止系AV』を司る神だ」



「……ぶはははは! どんなピンポイントな神様ですか! 他の神様から馬鹿にされてそうですね!」



 厳かな雰囲気から一転、一気に馬鹿馬鹿しくなる。このおじいちゃんはかなりユーモアのセンスがあるようだ。

 ゲラゲラと爆笑している俺とは裏腹に、目の前の老人はあくまでも真面目な顔で更に言葉を続ける。



「君は『時間停止系AV』の勇者として、他のAV勇者達と協力し、異世界に住まう邪神モザイクを討伐するのだ」


 

 まさか老人の口からAVやモザイクといった単語を聞くことになるとは思いもしなかった。

 しかし、表情をみるに、目の前の老人は本気で物事を言っているようだ。俺も真面目に話さなければな。



「はぁ……なんでわざわざそんな事しなきゃ……」



「邪神モザイクはこの世のAVを全て滅ぼし、世界を性犯罪で満たそうとしている。放っておくと、君の大好きな時間停止系AVも見られなくなるだろう」



 なんだよそのしょっぱい目的の邪神は! 邪神ってそんなに地味なことするの?



「俺はただの学生ですよ? どうしろって言うんですか」



「力を授けよう。『時間停止系AV』の勇者らしく、時を止める力を」



 なんだって!? じゃあ俺はあのAVを実現できるのか!? やらせではなく、100%本物を体験できるとは素晴らしい。本当ならば、邪神の10体や20体、なんてことはない。



「ただし、この能力には欠点がある。時を止めている間、使用者の性欲はまるで死に際の老人の如く静かなものになる。いわゆる賢者モードだ」



 致命的な欠点じゃねーか!



「ちょ、ちょっと待ってください! それじゃ時間を止めている間に女の子にエロい事ができないじゃないですか!」



「まぁ、そうだな。ふむ、そろそろ時間切れだ。では尾奈 新人よ、幸運を祈る」



「ちょ、まだ聞きたいことが……」



 老人の姿が徐々に薄くなってゆく。それを掴もうとして一歩足を踏み出した時、俺の意識はまたもや突然に途切れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ