第96話 部活動後は………
何回かに分けて、フリーマーケットを開催する公共施設に宝石発掘の会の荷物を運び終えることが出来た。
これで休憩ができると思ったのも束の間。
「本当に助かります」
次は生け花部の用意した生花の搬送を手伝っていた。
なんでも生け花部は、自分達が作った作品の販売と共に、生け花体験教室を開催するそうなのだ。
作品は持ち運びが終わっていたのだが、外部に注文していた生け花体験教室に必要な道具と生花が、何かの手違いで、公共施設ではなく学校に送られて来てしまったらしいのだ。
生け花部の部員はフリーマーケットの販売と生け花体験教室の準備で、ほとんどの人が出払っているため、荷物を運ぶ人がいなかったというのだ。
そこで俺と上北、結衣菜の3人で荷物運びを手伝うことになった。
因みに詩穗と一は漫画研究女子の会の手伝いに行っている。
結衣菜も本当は詩穗と行かせようとしたのだが、詩穗は結衣菜に毒を近付けない方がいいとか、よく分からないことを言っていた。
どうやら詩穗は漫画研究女子の会の活動を知っているようだ。まぁ、なんとなく予想はできるが。
一は詩穗1人だけにしないためのおまけのようなものだ。
「ユリの花粉は衣服に付着すると落ちないので、注意してください」
「了解」
運ぶ際の注意点を聞きながら、俺達は生花を運んでいく。
フリーマーケットは午前10時からなのだが、後5分もすれぱ10時になってしまう。
まだ数回往復しなければならないことを考えると、どう考えても間に合いそうにない。
「大丈夫です。1度に全部の生花を出すわけではないので。幾つかは施設の一室で保管させてもらう予定になってます」
この暑い季節だと、生花はすぐに花を咲かせてしまうため、涼しい部屋で明日の分を保管するらしい。
まぁ、普通に考えればそうだよな。
そして、昼前にはなんとか全ての荷物を運び終えて、俺達の仕事も終わったのだった。
☆ ☆ ☆
「疲れた………暑い………」
荷運びが終わった後、俺達はエアコンが効いているファーストフード店に入り、昼食を取りながら休んでいた。
「皆の者、今日の仕事はこれで終わりだ。ご苦労だった」
「今日のってことは明日もあるのか?」
「ああ。明日は午後3時からフリーマーケットの片付けの手伝いだな」
それを聞いて皆はげんなりする。
正直言って、この暑さの中の力仕事を舐めていた。
この暑さの中、大工仕事をしている人達を心から尊敬する。
俺だったら数日も持たずに挫折しそうだ。
「それじゃあさ、この後皆でプールにでも行かない?ほら、最近近くに大きなプール出来たよね」
「あそこか。確か祝芽峰遊園プールだったか?」
「なんか遊園地みたいな名前だな」
遊園地ならぬ遊園プールとは。
「俺の調べでは、実際に遊園地を作ろうとしたらしいぞ。ただ、あるお偉いさんが遊園地よりプールが好きだとかで、アトラクション系が多い遊園プールになったそうだ」
「へぇ、それは知らなかったなぁ」
俺はその話を聞きながら、祝芽峰遊園プールについて調べてみる。
駅からは離れているから交通の便はあまり良くないようだが、敷地はかなり広く、波のプールや流れるプール、ウォータースライダーを初めに、遊園地にあるようなカートに乗るようなアトラクションもあり、結構面白そうだ。
だが、祝芽峰遊園プールの公式サイトにはあるコメントが書かれていた。
「皆、でもここの開園日時が来週なんだけど」
そう。公式サイトには来週開園と書かれているのだ。
「そうだな」
「いや、そうだなって。それじゃあまだ営業してないだろ」
上北は知っていたようだが、何故か行く気満々だ。
「俺達なら大丈夫だ。皆の者、この後水着を用意して学校校門前に集合だ」
☆ ☆ ☆
一応莉愛にも声を掛けようとしたのだが、今日は補習があるとかで、家にいなかった。
なので、俺達は上北に言われた通り、水着を用意して校門に集合すると、校門横に大型ワゴン車が停まっていた。
「やっほー。みんな来たね」
そして運転席から久遠先生が顔を出して、声を掛けてきた。
「上北君から話は聞いてるよ。私が設計した祝芽峰遊園プールに行きたいって」
『え、えぇぇぇぇぇ!?!?』
その言葉に上北以外の皆で驚愕し、声をあげてしまう。
「ってことは、プールの方が好きって言ったお偉いさんって」
「そう!この私よ!」
ドドンっと効果音がなりそうな感じで、久遠先生は運転席で胸を張る。
「さぁ乗って乗って。出発するわよ」
上北が助手席に乗り、後は適当に後ろの座席に乗る。
そしてシートベルトの確認をした後、久遠先生は車を走り出させた。
「本当は夏休みに入る前に開園したかったんだけど
、アトラクションを増やし過ぎて点検やらなんやらで、間に合いそうになかったのよ。今は関係者で動作確認が終わって、最終確認で人数制限を設けて開園している状態ね」
久遠先生は今の祝芽峰遊園プールのことについて教えてくれる。
「本当はこんなことしたらいけないんだけど、上北君達には色々とお世話になってるしね。そのお礼ってことで」
「俺達何かしましたっけ?」
頼まれて体育祭とかの新聞を作ったりはしたが、それ以外はしていないような気がする。
「あれ?本人達には言ってないの?」
「ええ。言うと意識して普段の様子を撮せませんから」
上北が久遠先生の質問に答えているが、俺には何のことを言っているのか解らない。
隣の結衣菜も首を傾げているので、解っていないようだ。
俺達の後ろに座っている一と詩穗を見てみると、苦笑いをしていた。
「一と詩穗はわかるのか?」
「ま、まあね」
「知ってるよ」
ということは、俺と結衣菜だけ知らないってことか。すると、久遠先生が説明を始めた。
「私って普通の高校生活というのを経験したことないの。で、青春時代ってのもなかったから、恋愛とかに興味があってね。そこで、一波乱ありそうなカップルのことを私用にまとめてもらって情報提供してくれてるのよ」
「………………そのカップルって」
「もちろんあなた達のことよ。お陰様で楽しませて貰ってるわ。ありがとね」
久遠先生は良い笑顔でお礼を言ってきた。
「因みに言っておくとな、その情報を外部用にまとめているのが、『あの噂のカップルは今!!』の特集号として、学校内に発行している新聞だ」
聞いてたら頭が痛くなってきた。
「うぅ~」
結衣菜なんて顔を赤くして俯いてしまってるし。
「そうそう。お前達には言ってなかったが、音無と一ノ瀬それぞれにファンクラブがあるという噂があるぞ」
「はぁっ!?」「えぇっ!?」
俺達は同時に驚きの声をあげてしまう。
結衣菜は可愛いからファンクラブがあるのは、百歩譲ってもまだわかる。だが、俺なんかにファンクラブなんて意味がわからん!!
「りん君はわかるけど、なんで私なんかにファンクラブが」
「いやいや、結衣菜の方がわかるから」
「だってりん君優しいしカッコいいもん」
「それを言うなら結衣菜は可愛いだろ」
「落ち着けお前達」
言い合いになってきた頃に、上北が割って入ってきた。
「恐らくそれが結成された要因だろう」
「「え?」」
俺と結衣菜はキョトンととしてしまう。
「確かに男連中は、琳佳にだけ見せる一ノ瀬さんの笑顔は萌えるってよく言ってるね」
「女子達も結衣菜ちゃんに対する琳佳君の気遣いは憧れるって言ってたよ」
と、詩穗と一の解説が入る。
「ということだ。まぁ、周りからすれば、付き合っているお前達が理想のカップルってことなんだろう」
俺と結衣菜はそれ以降何も言えなくなってしまう。
「ほら、もう到着するよ」
そんなこんな話をしている内に、俺達を乗せた車は祝芽峰遊園プールに到着するのだった。




