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第93話 夏休みデート

 合宿という名の皆での旅行は、何事もなく無事に帰って来ることができた。


 ただ、結衣菜と関係が進んだことにより、結衣菜の一言一言に意識してしまうようになってしまった。


 例えば、旅行から帰った時。


「りん君、洗濯物は早めに出しておいてね」


 と言われた。


 いや、今までも一緒に暮らしていたから、何度も似たような言葉は聞いたことはある。


 しかし、今となってはなんていうか………。


「琳佳ってば結衣菜のこと、かなり意識しちゃってるね」


「っ!?」


 自宅に無事到着し、結衣菜に言われた通りに洗濯物を出し、ソファーで夕飯を作る結衣菜の後ろ姿を目で追っていたら、莉愛からそんなことが言われた。


「そそそそんなわけないだろ」


「動揺しすぎだからね。よいしょっと」


 莉愛はそう言うと、俺に密着するように隣に腰を下ろした。そして、当たり前のように腕に抱き付いてくる。


「あまりくっつくな」


「いいじゃん。まだ結衣菜と結婚してるわけでもないんだし」


 振り払おうとすると、より一層強く抱き付いてくる。抱き付かれた俺の右腕は、タンクトップ姿の莉愛の胸の谷間に沈み込んでしまっている。っていうか、ブラ付けてないのかよ!!


「それに莉愛はまだ諦めてないんだから」


 莉愛は至近距離から見上げて言ってくる。


「例え愛人になろうとも」


「愛人なんか作る気なんてないからな!!」


 こいつは相変わらずなんていうことを言ってくるんだ。


「ほら2人とも、ふざけてないで。もうすぐ夕飯できるから手伝って」


 そして、もう1つ変わったのが結衣菜だ。


 以前なら、今みたいに莉愛が俺にくっついていると、嫉妬してきたり、無理矢理引き離そうとしたりしていた。


 しかし、今は心に余裕ができたのか、今みたいに軽く注意するだけに至っていた。


 これは旅行帰りの昼食の時も確認している。


「はーい。ほら琳佳も」


「あ、あぁ」


 莉愛はすぐに俺から離れ、夕飯の手伝いに入ろうとする。


 なんか莉愛も変わったような気がするのは、気のせいなのだろうか………。



 ☆     ☆     ☆



 旅行から数日経った。


 旅行後はそれぞれ休養ということで、部活動は入れてないそうだ。


 なので、今は結衣菜と2人で、最寄り駅から数駅離れた場所にある大型のショッピングモールに来ていた。


 莉愛は莉愛で何かやることがあるらしく、今日ここにはいない。


 今回のデートは上北達にも誰にも言っていないので、久々に完全な2人だけのデートだ。


 ここのモールは、店と店を行き来するのに外を通るため、今日みたいに真夏日の日だと、少し移動しただけで汗が出てくる。


 モールでは最近流行りのミストで多少涼しくはしているようだが、暑いものは暑い。


 結衣菜と恋人繋ぎしている手のひらが、汗ばんでいるのがわかる。


「ふふ、暑いねぇ」


「だな」


 そう言いつつも俺達の距離が離れることはない。


 服が飾ってあるショーウィンドウの前で立ち止まり、お互いに似合いそうだと誉めては移動するを繰り返していた。


 気に入ったのがありそうなら、その店に入り、涼を取りながら財布と相談して、購入するかどうかを悩んでいる。


 ただ、買わなくても、結衣菜とこうやって一緒に過ごしているだけで、満足なので特に問題はない。


 結衣菜も同じなのか、今日はずっと上機嫌でいる。


 昼食はモール内にある喫茶店に入った。


 なんでも雑誌で掲載された喫茶店らしく、結衣菜が来たがっていたのだ。


 雑誌で掲載された影響なのか少し並んだが、結衣菜とお喋りしているだけで、時間はあっという間に過ぎ、席に案内される。


 メニューを見てみると、サンドイッチ類から少し重めなハンバーグやパスタ等の意外と豊富なメニューとなっていた。


 そして、大きく紹介されているのがデザートの巨大なパフェだ。


 フルーツをふんだんに使い、大きさの割には値段は安く、カロリーも抑えているとかで、女性に人気があるそうだ。


 もちろん結衣菜もそれが食べたいらしいので、俺達は軽めにサンドイッチを2人で頼み、デザートにその巨大なパフェを頼むことにした。


 そして、恋人としては当然の行動となってきている「あーん」も結衣菜は照れながらやってきた。


 周りにもカップルはいて、同じ様な行動をしているのにも関わらず、照れながらやる結衣菜の可愛さからなのか、俺達はかなり注目を集めていた。


 中にはデート中であろうカップルの男の方が、結衣菜に見惚れて、女に飽きられるということも起こっていた。


 中でも恥ずかしかったのが、俺が結衣菜に『あーん』をされている姿を、店員さんがスマホで写真に撮ってくれてしまったことだ。


 なんでも恋人限定のサービスとかで、結衣菜が凄く良い笑顔で頼んだのだ。


 更に恥ずかしいことに、ここの喫茶店でしばらくの間、この写真を飾りたいと頼まれたのだ。


 理由は、俺達が幸せそうなカップルだということと、今まで来店した中でも、結衣菜が可愛いということであった。


 喫茶店の入り口辺りを見てみると、何枚かカップルの似たような写真が飾られていた。


 そして、俺達の写真は一番目立つところに貼られるそうだ。


 喫茶店を後にした後、結衣菜は。


「あのお店で写真を飾られたカップルは絶対に幸せになるって言われてるんだよ」


 と、嬉しそうに話してきた。


 俺としてはただの羞恥プレイなのだが、結衣菜がこんなにも嬉しそうなので、否定することはできない。


 後日、その喫茶店に飾られた俺達の写真………もとい、結衣菜の可愛い姿を一目見ようと、男性客が増えたということがあったとかなかったとか。

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