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第89話 詩穗の想い

 side 詩穗


 初めは私も高校生になったし、男子とも仲良くなってみようかな、という思いで、面白い自己紹介をしていた琳佳君に声を掛けた。


 私は今までここまで仲良くなった男子はいない。会話はすれど、友達と呼べる男子はいなかった。


 だから、最初は少し怖かった。


 でも、話してみたら結構気さくな感じで、安心したのは、はっきりと覚えている。


 そしてすぐに琳佳君の友人であるにのまえ君と上北君とも仲良くなった。


 因みに琳佳君といきなり名前呼びにしたのは、私の頑張った証みたいのが欲しかったからだ。


 琳佳君は特に気にした様子もなかったので、少し安心した。


 でもその後の結衣菜ちゃんの行動には驚いたなぁ。


 噂は知っていたけど、琳佳君相手にはただただ恋する女の子になってるんだもん。


 話してみたら異性が苦手な普通の女の子ってわかったし、すぐに仲良くなった。


 それからも琳佳君とはいろいろとあった。


 弟のせいでいきなりパンツを見られたりね。しかもお子さまパンツを………。あれは本当に恥ずかしかった。


 でもそれからだったかな?私がお子さまパンツから少しずつ変えていったのって。でもひどいんだよ。私みたいなお子さま体型だと、大人っぽいパンツも限られてくるの。ブラジャーは小学生が付けるような奴しかサイズが殆どないし。


 確かその後部活を発足したりしたなぁ。


 そういえば部室でも琳佳君に…………。っていうか、本当に私って琳佳君にいろいろと辱しめられているような気がする。


 普通なら嫌いになってもいいと思うんだけど、何故か私は琳佳君を目で追ってしまうことが多くなった。


 そして少し経つと、琳佳君と結衣菜ちゃんは両親公認?の恋人となった。


 私は琳佳君の気持ちも結衣菜ちゃんの気持ちも知っていたから、心から祝福をした。


 結衣菜ちゃんは本当に可愛くて、つい意地悪したくなっちゃうこともあった。


 確かその後に莉愛ちゃんが押し掛けて来たんだよね。校舎に見慣れない外国人がいるなぁ、と思って声を掛けたら、琳佳君を探していたから案内をしたんだっけ。


 まさかあんな騒ぎになるとは思ってもみなかったけど。だって琳佳ちゃんと結衣菜ちゃんがいきなり修羅場になるんだよ。


 そして体育祭があり、またドタバタとした日々が始まり、終わったと思ったら今度はアメーバ事件があって。


「………………見られちゃったんだよね」


 ついポロリと声を出して、離れたところで結衣菜ちゃんと遊んでいる琳佳君を見てしまう。


「結衣菜ちゃんや年下の莉愛ちゃんと比べたら、私って本当にお子さま体型だよね…………」


 自分の手を胸にやると、ほんの少し柔らかさを感じるぐらいで、結衣菜ちゃん達みたいにぽよんっとした感じはない。


 くびれは一応はあるが、子供みたいな感じは否めない。


「こんなお子さまの身体で琳佳君が発情してくれるわけ……………」


 そう考えていたら、涙が出て来た。


 本当に私は琳佳君のことを好きになってしまったのかもしれない。じゃなきゃ、こんなに悲しい気持ちにはならない。


「でも琳佳君には結衣菜ちゃんという歴とした恋人が…………」


「何かお困りのようだな」


「きゃあ!?」


 いきなり声を掛けられて、悲鳴を上げてしまった。


「そんなに驚くことはないだろ」


「いきなり声を掛けてくる上北君が悪いの!!」


 私がボーッとしてたのが悪いのかもしれないが、ここは少し当たらせてもらう。


「それにしても鶴野宮も音無のことを好きになるなんてな。少し驚いたぞ」


「へ?なんで知って………じゃない。そんなことあるわけないじゃない」


「いや、普通に声に出てたからな?」


「嘘だよ!そんなわけ」


「『こんなお子さまの身体で琳佳君が発情してくれるわけ』なんて言葉を聞いたら、普通に考えて、音無を好いてるのはわかるだろ」


「なっ、なっ、なっ」


 私はかつてないぐらいに、自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。


 だってそんな言葉を聞かれたって考えたら、私が痴女みたいになっちゃう!


「まぁ、確かに不安なのはわかるが、あいつなら大丈夫だと思うぞ」


「な、なんでそう言えるのよ」


 ついきつい言葉で聞き返してしまった。


「あいつはお前の裸を見てしまった後、悶々としていたからな。あまり表情には出していなかったが」


「うぅ~………」


 まずい。自分でもわかるぐらいに顔が熱い。だって悶々していたってことは、少しは自分の身体に興味を持ってくれているということで………。


「だよな、音無」


「いきなり言われても何の話をしていたか分からねぇよ」


「はぅっ!?」


「詩穗っ!?」


 いつの間にか琳佳君が近くにいて、話を聞かれたと思った私は、恥ずかしさが限界を越えて、その場で気絶をしてしまった。


 その後、水着姿のまま琳佳君に部屋まで運ばれたと聞いて、眠れない夜を過ごすことになってしまった。



 ☆     ☆     ☆


 side 琳佳


「うーん」


「どうしたんだ、結衣菜」


 詩穗を一緒に部屋まで運んだ後、結衣菜が唸っているので聞いてみた。


 すると、結衣菜は俺のことをじっと見てきた。そしてため息を吐いた。


「はぁ、なんでもないよ。ただ、りん君は罪作りだなって思ってただけで」


「どういう意味だ?」


 結衣菜の言っている意味がわからない。俺は何の罪を作ってしまったんだろうか。


「とりあえずはこういうことだよ」


 そう言って、結衣菜はいきなり腕に抱き付いてきた。


「えっと、いろいろと嬉しいが、どういうことだ?」


 結衣菜も俺もまだ水着なので、いろいろと嬉しいことになってしまっている。


「りん君は私のものだってこと」


「?」


 結局、何のことかわからずじまいの今日この頃だった。

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